「非人道性」が核兵器廃絶の鍵
「核戦争の瀬戸際」とも言われる危機的状況のもとで、第79回国連総会は、それを乗り越える希望を示すものとなりました。2日には、核兵器禁止条約への参加を訴える決議を国連加盟国の約3分の2、昨年を上回る127カ国の賛成で採択しました。ロシアの核威嚇やアメリカなどの「核抑止力」強化に対し、禁止条約を力にした流れは揺るぎなく発展しています。
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授与の発表をうけて、議論では核兵器の非人道性と破滅的な影響が焦点の一つとなりました。
■被爆者証言が貢献
メキシコ代表は演説で「被爆者の証言は、最後の核弾頭が廃絶されるまで国連に響き渡らなければならない」と述べました。サンマリノ代表も「被爆者のたゆまぬ努力は、核軍縮と平和への粘り強い取り組みの模範だ」とたたえるなど、人道的な立場から、核兵器廃絶の必要性を強調する発言が相次ぎました。
総会の第1委員会(軍縮・安全保障)では新たに、核戦争が引き起こす影響を科学的に研究する専門家委員会を設立する決議案が多数の賛成(144カ国)で採択されました。核兵器禁止条約を推進してきたアイルランドとニュージーランドが提案したもので、研究結果は2027年の総会に報告されます。
米ソの核軍拡競争が激化していた1980年代、核戦争で地球を覆う「核の冬」が出現し人類が絶滅の危機にひんするとの研究が発表され、反核世論を広げる契機にもなりました。気候研究など40年を経て発展した科学的知見も生かした成果がでれば、核兵器廃絶をめざす流れを後押しするものとなるでしょう。
核兵器の非人道性を直視すれば、その使用を前提にした「核抑止力」が許されないのは明白です。それだけに核大国の多くは、この決議案に対し、「結果は分かっているので研究は不要」「新しい証拠はない」などと言って、反対(英仏ロ)や棄権(米)をしました。
総会では、被爆者と核実験被害者への支援をすすめる決議案も174カ国の圧倒的多数で採択され、2026年に核兵器の人道的影響についての国際会議を開くことが提起されました。
■問われる日本政府
被爆者や核実験被害者の証言が、核兵器禁止条約を生み出す原動力となりました。日本被団協のノーベル賞の授賞理由も、戦後79年間、核の使用を抑えてきた「核のタブー」への貢献でした。非人道性の議論の発展は、核兵器に固執する勢力を追いつめ、「核兵器のない世界」へ前進するカギとなっています。
日本政府が国連総会に提案した決議案も日本被団協のノーベル賞受賞に言及しました。そうであるなら、被爆者の願いに真摯(しんし)に応えるべきです。
石破茂政権は、来年3月の核兵器禁止条約の締約国会議に、少なくともオブザーバーで参加すべきです。これは、いまや党派を超えた要求となっています。
来年は被爆・戦後80年です。唯一の戦争被爆国の政府としての責務をはたすべきときです。アメリカの「核の傘」から脱却し、核兵器禁止条約に参加することを強く求めます。
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