重い病気 全世代に負担増
倉林明子 参院議員・党副委員長に聞く
医療費の過度な自己負担を減らすため窓口負担に上限を設けられている高額療養費制度。自公政権は今年8月から段階的な大幅引き上げを狙っています。日本共産党の倉林明子参院議員・党副委員長に聞きました。(聞き手・吉岡淳一、島田勇登)
政府は「現役世代の社会保険料の負担軽減のため」を口実に高額療養費の負担上限額引き上げが必要だとしています。いま賃金も年金も実質下がっているにもかかわらず、病気で弱っている人たちへの負担増を全世代に押し付けるもので、それを法改正もせず予算で通すやり方は極めて許しがたいことです。
いま2人に1人ががんにかかる時代です。がんや医療費助成の対象にならない難病等にかかれば高額な治療を続けざるを得ません。
政府案では、住民税非課税世帯を含む全所得階層で負担増になり、現役世代にも治療をあきらめることを迫るものとなっています。例えば年収370万~770万円の高額療養費の上限は、現在8万100円程度ですが、3年後には毎月8100円~5万8500円程度の負担増になります。
現役世代の社会保険料の負担軽減といっても、全国保険医団体連合会の試算によると軽減額は月46~208円で、まったく実感できない金額です。
2023年12月、政府は全世代型社会保障改革の工程表を出しました。医療・介護の利用料3割負担の対象拡大や、貯金資産を評価して医療費負担を引き上げるなど、自己負担増メニューがてんこ盛りです。
全世代型社会保障の考えは、世代間の対立をあおり、高齢者に負担増を求めるものとなっています。高額療養費の見直しは、現役世代を含む全世代のセーフティーネットを壊すものに他なりません。
最大の圧力は
30年も前、国保料を滞納したため病院にかかれず亡くなってしまう事件が京都市でもありました。ところが今は、窓口負担が重すぎるため社会保険料を払っていても病院にかかれない。助かる命も絶たれる事態を広げることになりかねない。憲法25条で生存権が保障されている国かと問いたいです。
“社会保障は削減しても仕方がない”とか、“世代間の対立”という議論は、自公政権がつくったものです。それを要求したのは財界です。
社会保障費削減の最大の圧力となっているのは軍事費の拡大です。軍事予算をどう確保するかが前提のためです。この構図を浮き彫りにすることが大切だと思います。
トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟国に国防費をGDP比「2%でなく5%」にするよう求めています。自公政権では、アメリカに対して「軍事費はこれ以上増やせません」と言えないでしょう。
大企業の利益最優先、アメリカ言いなりの政治の大本と強くリンクしているのが、社会保障費削減、高額療養費の問題です。この根っこの問題を正面から問えるのは共産党だけです。
声を上げれば
与党が過半数割れしたもとで、患者当事者から生の声を聞き、政治に反映させようとの動きが野党内に生まれています。現役世代の人たちが実際に声を上げれば予算修正につなげていく可能性が広がっています。
お金がなくて医療にアクセスできない国にしていいのか。医療を受ける人、年金生活者、生活保護を受給する人に、申し訳ないような気にさせる国にしていいのか。生きることは権利なんだ、生存権をみんなで守ろうと団結する時です。
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