先月は、討論の特集で、この項目は休みました。ごめんなさい。今月からは第二週にアップします。では・・・
(前回の文末でも書いたように、「ニッポンかニホンか」論争、「・・・・は」と書いて「・・・・ワ」、「・・・・へ」と書いて「・・・・エ」と読むのはどうしてかなど・・・50音図が混乱した原因の多くは、唇の音“ハ行・(PH)”が、何故か口腔の奥で出だす“ハ行・(H)”へと集団移転したことにあるらしい)
少し前のこと。朝日新聞09年7月1日朝刊に、こんな小さな記事が載っていた。
・・・6月30日 閣議で「国名についての読み方」の答弁書を決定した。
民主党の岩国哲人衆議院議員の質問への答弁。(文部省は、今の文科省)
岩国氏「日本の読み方を統一する意向はあるか」
文部省「にほん にっぽん いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない」
岩国氏「70年7月に、佐藤内閣で日本に統一する旨の閣議決定をしたのではないか」
文部省「そのような閣議決定はしていない」・・・
さて、あなたは“ニッポン”派ですか、それとも“ニホン”派かな。
実は、この論争、明治開国以来100年以上も連綿と続いてきた。そして、いまだに結論がでない。結論が出ないのではなく「どちらでも良い」というのが、政府の見解なんですな。あるいは、「どちらとも決めかねている」と言うところが、文科省の本音なのかも知れんが・・・
そこで質問。
あなたも、政府と同様、漢字で「日本」と書いてありさえすれば、どう読もうと構わぬとでも思っておられるのかどうか・・・如何。
ことは一国の名前です。国名には、その国のアイデンティティがあってしかるべきではないでそうかな。
改めて、つくづくと思うね。全く持って、音を大事にしない国なんだよ、この国は。
昔、NHKに入ったとき、固有名詞としてのニホンとニッポンの使い分けについて、複雑な慣用基準を学んだことを覚えている。
曰く、日本海、東日本、西日本・・・など「地名」については原則「ニホン」、国名は「ニッポン」と一応は教わった。
そして、日本放送協会や日本銀行・日本航空などの会社名は「ニッポン」、だが日本社会党や日本共産党はいずれも「ニホン」、その他の団体については、固有名詞として、当事者の呼び習わしに従うという。しかし、これでは、例外が多すぎて、とてもルールと言えた代物ではないね。(一説には、保守系はポンで、革新系はホンが傾向としてある)
事実私たちは、日本という文字が出てくる度に、会社や団体に問い合わせたもんですよ。ところが、電話してみると、てんでばらばら、ひどいところは上司と担当との意見が違うらしく、問い合わせる度に、ニホンになったりニッポンになったりするところさえある始末。
ことは固有名詞だから、当人次第ということだけどねえ。
でもね、固有名詞だって日本語のうちだからね。勝手に発音していいわけがない。
山田という人がいる。ヤマダと発音しようが、サンデンと名乗ろうが、どちらでもお好きなようにと言うだろうか。
三田(地名)と書いても日本語には幾つかの読み方がある。でも固有名詞であるならば、それは一つの原則があるものだ。例えば、関東人ならミタだろうし、関西の人ならサンダでしょう。
日本橋は、東京ならニホンバシで、大阪ならニッポンバシです。当然のこととして、自分の名前を「勝手にお読み下さい」と仰る人がいる筈がない。
それを、国会で100年議論をして、まだ「どちらとも決めかねる」というのは、理解しかねるね。
文字王国日本というか、音を軽視する傾向は甚だしいと思うね。坂本龍馬なら「こんなことをしちょったら『若者ことば』を嘆く資格もないぜよ!」。
“ことば”の本質である「音を置き忘れた言語」が、これからどうなるのか、ワシの心配は尽きないね。
ところで、なぜ、こんな事になったのか。
問題は、「ポン」と「ホン」二つの音の、音の出し方・出し処が、まるで異なっているところにあると思う。カナで書けば、似ているけれど、音としては全く違うもんだから「どちらとも決めかねる」ということになる。あいまいにしたまま100年一歩も進まない。
「先月も書いたように、昔の“ハ行”は“pha phi phu phe pho”だった。その頃ならば問題はなかった。穏やかに話すときは、両唇を軽く摩擦して出す“ニホン・niphon”だし、元気よく言えば、前に“促音のンがついて”“nippon”と破裂音になる。いずれも両唇音ですから、無理のない自然な成り行きだ。だから、昔は「ホンでもポン」でも、日本語のルール通りで良かった。
ところが、「ホン」の方が、何故か外来語の“h音”に、その席を奪われて、口の一番奥に移転してしまった。だから、似ても似つかない音になったのだ。
さて、あなたなら、どっちをとりますかな・・・歴史的に言えば結論は明らかなんですね。
さらに、この“h”の音というのは、喉チンコの上の軟口蓋と、舌の奥の間に隙間を空けたままで出すという、難しい音だから、ことは更に複雑になる。フランス語では「アッシュ ムエ」といって、“h”は発音しないで済ます位のもんなんだな。なぜ、そんな難しい音に集団移転したのだろうか。
この“ハ行音”の大移転については、江戸時代の中頃に起こっているらしいのだが、この現象の原因究明となると、小生の“推論”を交えなければなるまいね。
ま、私としては、当時の漢学者達が犯人だと睨んでいるのだが・・・それは来月・・・
(前回の文末でも書いたように、「ニッポンかニホンか」論争、「・・・・は」と書いて「・・・・ワ」、「・・・・へ」と書いて「・・・・エ」と読むのはどうしてかなど・・・50音図が混乱した原因の多くは、唇の音“ハ行・(PH)”が、何故か口腔の奥で出だす“ハ行・(H)”へと集団移転したことにあるらしい)
少し前のこと。朝日新聞09年7月1日朝刊に、こんな小さな記事が載っていた。
・・・6月30日 閣議で「国名についての読み方」の答弁書を決定した。
民主党の岩国哲人衆議院議員の質問への答弁。(文部省は、今の文科省)
岩国氏「日本の読み方を統一する意向はあるか」
文部省「にほん にっぽん いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない」
岩国氏「70年7月に、佐藤内閣で日本に統一する旨の閣議決定をしたのではないか」
文部省「そのような閣議決定はしていない」・・・
さて、あなたは“ニッポン”派ですか、それとも“ニホン”派かな。
実は、この論争、明治開国以来100年以上も連綿と続いてきた。そして、いまだに結論がでない。結論が出ないのではなく「どちらでも良い」というのが、政府の見解なんですな。あるいは、「どちらとも決めかねている」と言うところが、文科省の本音なのかも知れんが・・・
そこで質問。
あなたも、政府と同様、漢字で「日本」と書いてありさえすれば、どう読もうと構わぬとでも思っておられるのかどうか・・・如何。
ことは一国の名前です。国名には、その国のアイデンティティがあってしかるべきではないでそうかな。
改めて、つくづくと思うね。全く持って、音を大事にしない国なんだよ、この国は。
昔、NHKに入ったとき、固有名詞としてのニホンとニッポンの使い分けについて、複雑な慣用基準を学んだことを覚えている。
曰く、日本海、東日本、西日本・・・など「地名」については原則「ニホン」、国名は「ニッポン」と一応は教わった。
そして、日本放送協会や日本銀行・日本航空などの会社名は「ニッポン」、だが日本社会党や日本共産党はいずれも「ニホン」、その他の団体については、固有名詞として、当事者の呼び習わしに従うという。しかし、これでは、例外が多すぎて、とてもルールと言えた代物ではないね。(一説には、保守系はポンで、革新系はホンが傾向としてある)
事実私たちは、日本という文字が出てくる度に、会社や団体に問い合わせたもんですよ。ところが、電話してみると、てんでばらばら、ひどいところは上司と担当との意見が違うらしく、問い合わせる度に、ニホンになったりニッポンになったりするところさえある始末。
ことは固有名詞だから、当人次第ということだけどねえ。
でもね、固有名詞だって日本語のうちだからね。勝手に発音していいわけがない。
山田という人がいる。ヤマダと発音しようが、サンデンと名乗ろうが、どちらでもお好きなようにと言うだろうか。
三田(地名)と書いても日本語には幾つかの読み方がある。でも固有名詞であるならば、それは一つの原則があるものだ。例えば、関東人ならミタだろうし、関西の人ならサンダでしょう。
日本橋は、東京ならニホンバシで、大阪ならニッポンバシです。当然のこととして、自分の名前を「勝手にお読み下さい」と仰る人がいる筈がない。
それを、国会で100年議論をして、まだ「どちらとも決めかねる」というのは、理解しかねるね。
文字王国日本というか、音を軽視する傾向は甚だしいと思うね。坂本龍馬なら「こんなことをしちょったら『若者ことば』を嘆く資格もないぜよ!」。
“ことば”の本質である「音を置き忘れた言語」が、これからどうなるのか、ワシの心配は尽きないね。
ところで、なぜ、こんな事になったのか。
問題は、「ポン」と「ホン」二つの音の、音の出し方・出し処が、まるで異なっているところにあると思う。カナで書けば、似ているけれど、音としては全く違うもんだから「どちらとも決めかねる」ということになる。あいまいにしたまま100年一歩も進まない。
「先月も書いたように、昔の“ハ行”は“pha phi phu phe pho”だった。その頃ならば問題はなかった。穏やかに話すときは、両唇を軽く摩擦して出す“ニホン・niphon”だし、元気よく言えば、前に“促音のンがついて”“nippon”と破裂音になる。いずれも両唇音ですから、無理のない自然な成り行きだ。だから、昔は「ホンでもポン」でも、日本語のルール通りで良かった。
ところが、「ホン」の方が、何故か外来語の“h音”に、その席を奪われて、口の一番奥に移転してしまった。だから、似ても似つかない音になったのだ。
さて、あなたなら、どっちをとりますかな・・・歴史的に言えば結論は明らかなんですね。
さらに、この“h”の音というのは、喉チンコの上の軟口蓋と、舌の奥の間に隙間を空けたままで出すという、難しい音だから、ことは更に複雑になる。フランス語では「アッシュ ムエ」といって、“h”は発音しないで済ます位のもんなんだな。なぜ、そんな難しい音に集団移転したのだろうか。
この“ハ行音”の大移転については、江戸時代の中頃に起こっているらしいのだが、この現象の原因究明となると、小生の“推論”を交えなければなるまいね。
ま、私としては、当時の漢学者達が犯人だと睨んでいるのだが・・・それは来月・・・