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面接の心構えー言葉にあらざる、“ことば”について…もとNHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから:

2011-11-26 23:06:14 | 就職
先週の「人はなぜ対話する」で、「言語ではない“ことば”」のほうが、より多くの思いを伝えることがある・・・と書いた・・・数通のメールが来て、「少し説明してくれ」という。
 
 「時として、音のない言葉は、大声よりも雄弁になる」という詞があるのをご存じだろうか。
 
 人間の“ことば”には、文字にならない“ことば”もあれば、音のない“ことば”もある。
 こうした、“ことば”を総称して、英語ではノンバーバル・メッセージとかパラランゲージというのだが、日本語には、残念ながら、ふさわしい訳語がみあたらない。
 訳語がないばかりではなく、日本の学者は、これを「非言語言語」などという生煮えの名詞を与えて、あまり重きを置いていないようだ。
 なにしろ、「漢字を読めるか、書けるか」が、国語力の中心なのだから、致し方ない。
 
 この分野では、アメリカの言語学者が抜きんでて、研究を進め、多くの論文が出されている。
 その先駆者、バードウイステル博士は言った。
 「人間の交わすコミュニケーションで、言語そのものが果たす役割は、凡そ35%に過ぎない。あとの65%は、ノンバーバル・コミュニケーションで占められている」
 日本にだって、古くから言われている詞が沢山ある。
 「目は口ほどにモノを言い」
 「目は心の窓」
 「諸国大名は弓矢で殺す。糸屋の娘は目で殺す」
 ・・・
 でも、学問としては、ほとんど取り上げらたことはない。
 
 また、アルバート・メラビアン博士は、全米の企業の責任者が、採用の適否を決めるポイントを調査し、結果を発表した。
 「発言者の内容が優れているかどうかで、採用を決めているのは7%に過ぎない。あとの38%は語りかける「肉声の表情」の確かさを重要視し、残りの55%は、態度や表情、仕草などの音のない言葉・サイレント・ワードを観察して判断している」
 
 すこし砕いて言えば、その人物を評価するとき、「いかに立派な意見を持っているか」が問題なのではなく、「どれだけ確かな話し方で、それを伝えたか・・・自信を持って話したか、しっかりした音調で話したか・・・」と、言葉表現の確かさでを読み取っている。そして、もっと大切なのは、“ことば”表現よりも、話す表情(中でも目の表現)、態度、立ち居振る舞い・・・を見て、人物評価をしているという統計だ。
 
 就職試験などでは、目の前の人物を評価するとき、話す内容はあまり信用してはいない。話の内容などというものは、書物の“受け売り”かも知れないし、“一夜付け”の知識かも分からぬ。だから、その人物を見定めるには、話しぶりをしっかり観察するほうが、より適切だと、採用担当者は考えている。折角、面と向かって「肉声の対話」をしているのだからね。
 
 かってNHKアナウンサーの採用担当者の体験からいっても、私もこれを裏書き出来る。
 就職面接では、「採用されたい」というような、志望者の願望などは問題ではない。
 採用する側としては「この人間は、我が社に入って、何が出来るのだろうか」という一点に絞って、人物を観察するのだ・・・。言葉をかえれば、「知識の多さではなく、人間の確かさを見抜く」ことが、大切なのだよね。
 もし、受験者が、このことに気が付けば、“面接に対する構え”は一変するんじゃあないかな。

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