ツワブキが咲くのを横目に
やや狭い道を急ぐ
風が吹いている。
向こうに焚き火の煙が見える
すすきの揺れる晩秋の小径。
小さな人が現れてつぶやく
「夢を作るとはいかにもあなたの言いそうなことだ」
「ただそうありたいと想っている」
「何かしらの喜びがあるからこそできるんだろうね」
「はっきりしたことは何にも考えてはいない。ただこうして歩いているのとおんなじでね」
「仲良しの人はいるのかい?」
「頻繁に会うとか話すとか、そんなじゃないんだ。ただね、困ったとき、辛いとき、人はただ冷静に、それはあなたの問題だから立ち入れない。自分で解決しなさいって言うのが普通のこと。」
「正論だ」
「確かにその通りで、具体的な助けなど簡単にはできないこと。」
「そりゃその通り」
「違う人もいたということ」
「そりゃ一体?」
「具体的な助けなど要らないけどね、黙って横にいて聞いてくれる人。都合悪くなればいなくなる人ではなくて、困った時に別に何もできなくても寄り添ってくれる人。」
「そりゃ実質的におんなじじゃないかい?」
「大いに違うよ。温かみを感じたり存在を感じられることは、自分の心を奮い立たせるものさ」
「そんなものなのかな?」
「そうさ。うわべの付き合いや、都合の良いときの付き合いじゃなく。自分が一番弱ったりだめなとき、面と向かってそれじゃダメだとムキになって真剣に言える人も大切だ。あとから、こう思ってたけど、という人とはちょっと違うよ」
「聞いて腹の立つ人もいるのでは?」
「人は図星だと腹が立つものさ。でもそれを通り越して、誰も指摘してくれなかったり、言ってくれないのが常なのに、言葉や態度にしてくれる人がいたとしたら」
「いたとしたら」
「本当の仲良しかもしれないね」
「………。」
「ストーブに火を焚くでしょう?」
「うんうん」
「そんな時のじんわりとした感覚。そんな人がいたら仲良しだよね」
「そうだね」
「そこにはね、相手の社会的立場とか、職業とか、何にもないわけよ。」
「何にもないの?」
「そう。その人がどんな立場の人だとか、全く関係ないわけで。ただそこにいたいからいる。そうしたいからしている。それだけのこと。」
「そこから生まれてくるの?」
「そこから生まれてくるものは、温かい素朴な夢なんだ。別に派手でもないのだけれど。ただ、とてもとても愛おしい夢なんだ。」
小さな人と連れ立って歩く先には
風が雲を吹き払って
青い空が少し見えていました。