特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

崖っぷち(公開コメント版)

2020-06-18 09:11:11 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
ある日の深夜、電話が鳴った。
「掃除をお願いしたいんですけど・・・」
声の感じからすると、30代くらいに思われる女性。
「知り合いに部屋を貸していたら、汚されてしまって・・・」
訊きもしないのに、そういって語尾を濁した。

これまで、似たような電話を何本も受けてきた私は、“知り合いに部屋を貸していたら・・・”というセリフにピンときた。
これは、よくあるパターン・・・ほとんどのケースで、それはウソ。
昼間でもいいはずなのに、間夜中にかけてくるというのも不自然。
他人がしでかしたことなら尚更。
実のところ、ゴミ部屋をつくったのは、知り合いでも何でもなく本人。
それが、羞恥心に耐えられず、第三者のフリをするのである。


夢のカケラ(公開コメント版)

2017-08-16 08:40:09 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
八月も後半に入るというのに、相変わらず、梅雨のような天気が続いている。
しかし、専門家によると、これでも“異常気象”というほどではないらしい。
でも、何だか おかしな感じがする。
そうは言っても、悪いことばかりではない。
常々不眠症に悩まされている私でも、雨が降っているとよく眠れるから。
気圧のせいなのか湿度のせいなのかよくわからないけど、何故だか昔からそう。
ただ、その分、朝がツラい!
普段、寝起きがいい私も なかなか起きられず、いつもより寝坊してしまうこともしばしば。
もちろん、仕事に遅刻するようなヘマはしないけど、ショボショボする眼とボーッとする頭が朝の私を鈍らせる。

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つぼみ(公開コメント版)

2017-03-27 08:19:54 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
三月も下旬。
冬の残寒の中にも春暖が感じられるようになってきた。
が、今日の東京の空は、まるで真冬に戻ったかのような厳寒冷雨。
桜の開花は既に宣言されているものの、ぶり返す寒さの中で、まだ ほとんど蕾(つぼみ)の状態。
とは言え、それも丸々と膨らんでおり、それが、一花咲かせるのをワクワクしながら待ちわびているようにも見え、何とも愛らしい。

一昨年は、仕事が終わってから夜桜を見に出かけた。
そして、他の花見客に混じって、弁当を食べたり露店を見て回ったりした。
桜もそうだけど、露店というものは人々の笑顔が集まるせいか、見ているだけでも楽しい。
ささやかなレジャーだったけど、幸福が味わえたひとときだった。
しかし、夜桜と露店を両方楽しもうすると時間が限られる。
昨年は、残念ながら都合がつかず、夜桜現物は叶わなかった。
さて、今年はどうなるか・・・暗い仕事からの いい気分転換になるから、できることなら楽しく出かけたいものである。


ゴミ部屋の片付けについて、相談の電話が入った。

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老の行方 ~その一~ (公開コメント版)

2017-03-15 08:53:29 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
「ゴミの処分をお願いしたいんですけど・・・」
「ただ、“ゴミ”といっても、普通のゴミじゃなくて・・・」
ある日、中年の男性からそんな電話が入った。

「ゴミの処分」と言ったって、自分で片付けることができれば、ほとんどの人は自分でやるはず。
自分の手には負えないから、他人に頼むわけで・・・
で、“自分の手に負えない”ということは、“それだけ困難な事情が発生している”ということ。
“ゴミが大量にたまってしまっている”とか、“ゴミが極めて不衛生”とか、または、その両方であるとか。
したがって、私は、すぐにゴミ部屋を想像し、また、男性が いよいよ追い詰められて相談をよこしたであろうことを察し、その緊張感や羞恥心を刺激しないよう、終始 明るい応対に努めた。

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マ田力気 ~後編~(公開コメント版)

2015-11-05 09:13:24 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
私には、忘れたい過去でありながらも、忘れてはいけない過去がある・・・
その一つが、引きこもりの経験。
これまで何度か書いてきた通り、この仕事に就く直前、私は、実家に引きこもっていた。
それは、大学卒業後、23歳のとき。
衣食住、家事雑用から生活経費まで、すべて両親が負担。
生産性のあることは何もせず、人目を気にして外出もせず、実家の一室にいるだけ。
ただ飯を食べ、用を足し、寝るだけの毎日を過ごしていた。

PCや携帯はもちろん、自室にはTVもなかった。
(ちなみに、PCや携帯電話が一般に普及したのは、この数年後。)
読書は嫌いだった(今も嫌いだけど)から、本を読むこともなく。
部屋に閉じこもって一日をどう過ごしていたのか・・・細かくは思い出せない。
ただ、当り前の話だが、実家といえども居心地が悪かったことは憶えている。

もちろん、楽しいことなんて何もない。
夢も希望も何もない。
頭に浮かんでくるのはネガティブなことばかり。
危機感、絶望感、劣等感、敗北感、罪悪感、虚無感・・・
自意識過剰、履き違えた自尊心、精神不安定、そして極度の欝状態・・・
上向きなことを考えようとしても気力がともなわず、すぐに萎えてしまっていた。

悩みながら生きることの意味、苦しみながらも生きなければならない理由・・・
そんなことばかりが頭を過ぎる毎日。
そして、そういう状況では、当然、悲観的・否定的な考えばかりが頭に浮かんでくる。
「無理して生きる必要なんかない!」
「誰か俺のこと殺してくれ!」
そんな思いに苛まれて、心を掻きむしっていた。

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マ田力気 ~前編~(公開コメント版)

2015-11-03 09:52:09 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
ある日の午後、私は、街中に建つマンションに呼ばれた。
その上階にある一室で、住人が腐乱死体となって発見されたのだ。
依頼者は、マンションの管理会社で、私はそこの担当者と待ち合わせ。
私より少し遅れて現れた担当者はハイテンション。
近隣から苦情がでているわけではなかったが、苦手な何かにプレッシャーをかけられているようにピリピリしていた。

このエリアは一等地。
間取りは1Rや1LDKばかりで、独身者用の造り。
高級マンションではなかったが、築年数は浅く家賃は高め。
経済的に余裕のある学生や独身のビジネスマン等が多く居住。
部屋ごとにオーナーがおり、それぞれが賃貸で運用するタイプ・・・いわゆる投資型マンション。
そして、問題の部屋のオーナーは故人の父親だった。

1Fエントランスで担当者から鍵を預かった私は、専用マスクを脇に隠すように持ち、エレベーターで上階へ。
現場の部屋の玄関前に立ち、とりあえず深呼吸。
そして、周囲に人影がないのを確認して開錠。
マスクもつけないままドアを開け、素早く身体を室内に滑り込ませた。

ドアの奥には薄暗い部屋が。
それも、どこかに何が隠れていてもおかしくないようなゴミ部屋。
そんな光景に、慣れた私でも少なからずの不気味さを覚えた。

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素のまま(公開コメント版)

2015-10-14 08:30:04 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
不特定多数の人と関わるのが私の仕事。
そして、一仕事が終われば、その関係は解消される。
不動産業者や建築業者等の担当者の中には、仕事柄、複数回に渡って関わりを持つこともあるけど、原則として一期一会。
大方の場合、
「二度とお目にかかるようなことはないと思いますし、お目にかかるようなことはないほうがいいですから・・・」
と、ちょっと切ない挨拶をもって関係は終了する。

現場によって、関わる期間はまちまち。
一回(一日)限りで終わることもあれば、数日から数週間、長いときは数ヶ月に及ぶこともある。
過去には、特殊清掃・消臭消毒・家財撤去・内装改修工事をやった現場で、関係が一年くらい続いた依頼者もいた。
そうなってくると、その関係は、「客と業者」というより親しい友人みたいなことになり、故人との思い出、人生観、悩み事等々、仕事には直接関係のない話も多くなる。
そして、仕事が終わると、「もう二度と会うことはないだろう」とわかったうえで、お互いに「ありがとうございました」と労いあって別れる。
そうして、少し寂しいような、少しあたたかいような余韻だけを残し、またアカの他人に戻るのである。

そんな仕事においては、残念ながら、苦手な(嫌いな)タイプの人とも遭遇する。
いくつかはブログにも登場させたが・・・
代金を踏み倒す人、
契約を交わした後で追加作業をサービスでやらせる人、
契約通りの作業をしたにも関わらず、終わった後で値引きを要求する人、
仕事を依頼するつもりもないのに、現地調査をさせてアドバイスだけ求める人、
現地調査に呼んでおいて約束の日時に現れずスルーする人等々・・・
思い出すと頭にくるけど、こういう類の人が少なからずいるのだ。
そうは言っても、素のままの自分を曝け出して怒り散らすわけにもいかず、忍耐をもって穏便に事を治めるのである(ほとんど泣き寝入り)。

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隠し事(公開コメント版)

2014-04-14 11:40:38 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
依頼者は、若い女性。
依頼の内容は、ゴミの片付け。
現場は、女性の自宅アパート。
女性は、電話で色々と訊いてきたが、現場を見ないで答えられることは限られている。
私は、現地調査の必要性と説明し、女性はそれを理解。
ただ、当日の待ち合わせ場所には、アパートではなく少し離れた公園を指定。
そこから、女性に、それなりの事情があることを感じた私は女性の指示に従い、調査日時を約束した。

その日時、約束した公園に女性は現れた。
仕事は休みのはずなのに、キチンとしたスーツ姿。
作業服姿の中年男とスーツ姿の若い女性が二人でベンチに座っている光景を思い浮かべると、明らかにミスマッチ。
話が長くなりそうな雰囲気はあったけど、私は、立ち話で通すことにした。

誰しも、アカの他人に自分の身分や経歴、個人情報に関することを知られるのは抵抗があるだろう。
隠し通せるものなら隠し通したいもの。
女性も同様のようだったが、それらは、部屋の中にあるものを見ればすぐにわかってしまうこと。
それを悟った女性は、何もかも包み隠さずに話して、自分が抱える事情を汲んでもらったほうが、自分にとってはプラスと考えたよう。
私が訊きもしない事情や心情を吐露し、抱える苦悩を打ち明けた。
もちろん、そんな女性にも羞恥心はあるはず。
私は、女性の羞恥心を刺激しないよう、感情を抑えた態度と淡々とした受け答えを心がけた。


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残された時間(公開コメント版)

2014-03-13 06:52:44 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
「ゴミの片付けと清掃をお願いしたい」
と、ある女性から相談が舞い込んだ。
現場は、女性の自宅。
それなりの経験がある私は、女性がくれる情報を組み立てて、頭の中で女性宅を映像化。
そして、それを分析し、その片付け・清掃に要する作業内容と費用を伝えた。

私が提示した概算費用は、女性が想像していた金額とはかなり乖離。
「てっきり、○万円くらいで済むと思ってたんですけど・・・」
と、具体的な金額を明かしてきた。
しかし、それは、予想されるこの仕事にはまったく合わない金額。
私は、不親切な人間と思われることを承知で
「多分、その費用ではやれないと思います」
と難色を示した。

あたたかい人間でありたいとは思うけど、私は、結構、冷たい人間。
この仕事だって、基本的には“ビジネス”と割り切っている。
しばらく前の「痩心」に書いた通り。
だから、こちらが見積もる料金と依頼者が心積もる料金が、まったくかけ離れた金額だと、現地調査を断ることもある。
現地調査に行くだけでも、それなりの移動交通費・駐車場・人件費等がかかるわけで、仕事にならないとわかってしまっては現場に行きようがない。
私自身も気が進まないし、会社もそれを許可しない。
本件も、まったくのそれで、私は「行くだけ無駄だな」と思い、遠まわしに現地調査は不可能であることを伝えた。

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初志甘徹(公開コメント版)

2014-03-08 08:49:46 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
一月が行き、二月が逃げ、もう三月。
あれから、一年が経った・・・
そう、私が週休肝二日を始めてから。
昨年の三月からはじめて、何とか一年を通すことができた。

ルールは、一年前のブログに書いた通り。
日曜~土曜の間、任意で二日以上、酒を飲まない日をもうけるというもの。
簡単なルールだけど、これをやり通すのは、なかなか簡単ではなかった。

たった週二日、されど週二日。
現場がキツくて咽が渇きやすい春・夏は苦戦。
相当意識したため、何とか二日は死守することができた。
逆に、秋・冬は楽勝。
精神の低迷のため、飲みたい気持ちも高まらず、自然と飲まない日が多くなった。

飲まなかった日は、カレンダーに赤○印。
週の前半に赤丸を一つでもつけておかなければ、後半にプレッシャーがかかってくる。
何事もプレッシャーを嫌う私は、とにかく、週末になる前に週休肝二日を達成するよう努めた。
そして、赤丸が多くなるほど、達成感も増していった。

害といえば我慢のストレスくらいで、身体(健康)のことを考えると利のほうが大きい。
ただ、ストレスを侮ってはいけない。
これはこれで不健康の原因になる。
だから、ノンアルコールビールや炭酸水等の力を借りながら、少しでもストレスを抱えないで済むよう工夫しながら、これからも続けていくつもり。

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