特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

Last moment(公開コメント版)

2016-04-20 09:17:37 | 特殊清掃
その日、私は東京から離れたところにある とある会社の工場にいた。
用向きは、特殊清掃の事前調査。
そこで、作業員の一人が機械設備に巻き込まれて死亡。
血まみれとなった機械設備を清掃するための調査だった。

最初は、電話での問い合わせだった。
しかし、その機械設備について素人である当方が言葉で把握できることは少ない。
結果、具体的な現場の状況が想像できず。
更には、仕事として請け負えるものかどうかも判断できず。
とにかく、現場を見ずしては どうにも話を進めることができず、結局、現地調査に出向くことに。
ただ、場所は遠方で、かかる時間も交通費もバカにならない。
私は、普段は無料で行っている現地調査を今回は有料とし、更に、当方から辞退する可能性も充分にあることを承諾してもらい、現地調査の日時を約した。

訪れた現場は、ある製品の原材料をつくる大きな工場で、同じ形態の機械が整然と並んでいた。
機械は、原材料の攪拌プレスを目的とするもので、一基に一人の作業員が従事する仕様。
事故が起こったのは、その中の一基。
その傍らには白布が掛けられた台が置かれ、その上には仏具と花や飲料が供えられており、日常の悲しみとは趣を異にした不吉な雰囲気が漂っていた。

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隙間風(公開コメント版)

2016-04-15 07:06:55 | 特殊清掃 消臭消毒
「取り壊す予定のアパートに白骨死体があった」
ある年の初冬、不動産会社から特殊清掃の依頼が入った。
“人の死”に慣れてしまっている私は、寒風吹く曇空の下、事務的に支度を整えて現場に向かった。

現場は木造二階建、“超”がつくほどの老朽アパート。
最後の住人が出て行ってから数年がたち、それからは、誰の手が入ることもなく放置。
雨風に晒されるまま朽ちていき、不気味な様相を呈していた。

そこは都会の一等地。
周辺には住宅やマンションが建ち並び、ハイソな雰囲気が漂っていた。
しかし、そのアパートだけは時代を異にし、周囲の景観を不自然なものにしていた。

遺体を発見したのは、アパートの解体業者。
マンションの建替計画を進めるため、解体調査に入ったときのこと。
妙な異臭がすることを怪訝に思いながら一室ずつ検分し、そして、二階の一室で遺体を発見したのだった。

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春爛漫(公開コメント版)

2016-04-07 09:12:47 | 特殊清掃
春本番。
ただ、今日の東京は、あいにくの雨天。
そして、終盤に入ってきた桜花も、今日でだいぶ散ってしまうだろうか。
それでも、低温のおかげで、咲いた状態が長く続いた。
だから、日々、あちこちの現場に走り回っている私も、多くの街に咲く桜を楽しむことができた。

咲き様、散り様が、日本の文化やそこで育まれた日本人の性質にマッチしているのだろうか、日本人はホントに桜が好き。
「狂ったように咲く様が気持ち悪い」と言う知人もいるけど、大半の人は、桜をみて心湧くものがあると思う。

私も、桜を愛でる気持ちは持っている。
「またこの季節が来たんだなぁ・・・」
と、時の移ろいのはやさをしみじみ感じながら、桜を見上げる。
そして、
「こうして春を過ごせるのも、あと何回かな・・・」
と、この命と人の世の儚さに切なさを覚える。

昨年は、夜桜見物に出かけたけど、今年は行かなかった。
気分を変えるために出かけてみようかとも思ったのだが、結局、行かず。
以前に書いたけど、どうにもクサクサした気分が抜けないのだ。

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再出発(公開コメント版)

2016-04-01 08:03:09 | 不要品
「引越しをするので、不要品の処分をお願いしたい」
依頼者は女性。
一人暮らしで、仕事の合間をぬって引越しの準備を進めているよう。
特別汚損が発生している現場でもなく、通常なら、私が出る幕ではなかったのだが、現地調査の希望時刻は女性の仕事が終わった後の夜。
しかも、仕事が忙しいらしく、結構な遅い時間。
そんな時間に動きたがるスタッフはいない。
また、同じような依頼で現地に出向くと、“実はゴミ部屋だった”なんてことも珍しくない。
人が行きたがらないところへ行き、やりたがらないことをやるのが特掃隊長。
気が向こうが気が向くまいが、そんなこと関係なく私が出向くことになり、約束の日の夜、私は女性宅に赴いた。

現場は、低層小規模の賃貸マンション。
オートロックもなく、玄関までは誰でも素通りが可能。
夜遅い時刻に女性一人の部屋を訪れるのは、ちょっと抵抗がある。
自分が頼んだこととはいえ、見ず知らずの男が部屋に入り込んでくることには、女性のほうも少なからずの不安感を覚えるはず。
私は、“マジメな人間”であることを少しでもアピールするため約束の時刻ピッタリにマンション下から女性の携帯電話を鳴らし、その上で玄関前に行きインターフォンを押した。
そして、ドアの覗き窓からこちらを見られることを意識してキリッとした顔をつくった。

女性はすぐにドアを開けてくれた。
見たところ、年齢は40歳前後か・・・
そして、
「こんな時間にスミマセン・・・お疲れ様です・・・」
と、私を労ってくれ、

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