特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

Last moment(公開コメント版)

2016-04-20 09:17:37 | 特殊清掃
その日、私は東京から離れたところにある とある会社の工場にいた。
用向きは、特殊清掃の事前調査。
そこで、作業員の一人が機械設備に巻き込まれて死亡。
血まみれとなった機械設備を清掃するための調査だった。

最初は、電話での問い合わせだった。
しかし、その機械設備について素人である当方が言葉で把握できることは少ない。
結果、具体的な現場の状況が想像できず。
更には、仕事として請け負えるものかどうかも判断できず。
とにかく、現場を見ずしては どうにも話を進めることができず、結局、現地調査に出向くことに。
ただ、場所は遠方で、かかる時間も交通費もバカにならない。
私は、普段は無料で行っている現地調査を今回は有料とし、更に、当方から辞退する可能性も充分にあることを承諾してもらい、現地調査の日時を約した。

訪れた現場は、ある製品の原材料をつくる大きな工場で、同じ形態の機械が整然と並んでいた。
機械は、原材料の攪拌プレスを目的とするもので、一基に一人の作業員が従事する仕様。
事故が起こったのは、その中の一基。
その傍らには白布が掛けられた台が置かれ、その上には仏具と花や飲料が供えられており、日常の悲しみとは趣を異にした不吉な雰囲気が漂っていた。

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春爛漫(公開コメント版)

2016-04-07 09:12:47 | 特殊清掃
春本番。
ただ、今日の東京は、あいにくの雨天。
そして、終盤に入ってきた桜花も、今日でだいぶ散ってしまうだろうか。
それでも、低温のおかげで、咲いた状態が長く続いた。
だから、日々、あちこちの現場に走り回っている私も、多くの街に咲く桜を楽しむことができた。

咲き様、散り様が、日本の文化やそこで育まれた日本人の性質にマッチしているのだろうか、日本人はホントに桜が好き。
「狂ったように咲く様が気持ち悪い」と言う知人もいるけど、大半の人は、桜をみて心湧くものがあると思う。

私も、桜を愛でる気持ちは持っている。
「またこの季節が来たんだなぁ・・・」
と、時の移ろいのはやさをしみじみ感じながら、桜を見上げる。
そして、
「こうして春を過ごせるのも、あと何回かな・・・」
と、この命と人の世の儚さに切なさを覚える。

昨年は、夜桜見物に出かけたけど、今年は行かなかった。
気分を変えるために出かけてみようかとも思ったのだが、結局、行かず。
以前に書いたけど、どうにもクサクサした気分が抜けないのだ。

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黙視録(公開コメント版)

2015-12-31 09:34:19 | 特殊清掃
2015年12月31日木曜日。
今年も今日でおしまい。
ここ数年は不定期で更新頻度も低いこのブログだけど、毎年、大晦日には必ず更新している。
人の最期を締めている者の習性か、年の最後も締めないと、何かやり残したような気がして落ち着かないのだ。

例によって、私の仕事納めは今日。
似たような毎日を繰り返すばかりだったけど、何だかんだと、今年も色々なことがあった。
凄惨現場での過酷作業に疲労困憊した日も多かった。
それでも、今日という日を平和のうちに迎えることができていることに喜びを感じている。
そして、明日の元旦は仕事始め。
長期休暇がとれない生活にはもう慣れている(願望はあるけど)。
何かにつけ不平・不満が先行しやすい私だけど、まずは、こうして達者に働けていることに感謝したい。


呼ばれて出向いたのは公営の団地。
そこは大規模団地で、同じ造りの棟が無機質にいくつも並んでいた。
依頼者の女性とは、現場の棟下にある駐車場で待ち合わせ。
女性は、時間厳守がモットーの私より先に来ていた。
当然、初対面なのだが、互いのことは醸し出す雰囲気でわかるもの。
視線が合った我々は、軽く会釈をしながら歩み寄り、挨拶の言葉を交わした。


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顔笑心泣(公開コメント版)

2015-12-07 08:44:56 | 特殊清掃
2015年も、もう師走。
朝晩は、めっきり冷え込むようになってきた。
朝、布団をでるのが億劫だし、外にでても寒さで身体が縮こまってしまう。
だからと言って、ジッとしていてはいけない。
身体に怠け癖がついてしまうし、何より、私の場合は精神がやられるから。

しかし、幸いなことに、ジッとしているヒマはなく、12月は雑用やイベントが多い。
現場仕事はそう忙しくなくても、何かとやることはある。
御歳暮を贈ったり、会社のカレンダーを配ったり、暮の挨拶に出向いたり。
餅つき、クリスマス、正月仕度、大晦日、そして忘年会もある。
(ちなみに、年賀状は出さないから、その準備はない。)

30歳前後の頃は、毎週のように外で飲んでいた私だが、近年、外で飲むことはめっきりなくなった。
余計な金もかかるし、とにかく面倒臭い。
“家飲み”が懐にも身体にも一番優しい。
だから、「外に飲みに行きたい」と思うことはほとんどない。
ところが、そんな私でも、この時季は付き合わなければならない忘年会がある。
先週一回目が終わり、今週二回目が予定されている。
そして、あと一回ぐらいあるのではないかと思う。
ま、どれも社交辞令的な付き合いで行くものだから、飲む量もほどほどにするつもり。
深酒・泥酔しても何もメリットはないから。

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女もつらいよ(公開コメント版)

2015-11-30 08:51:04 | 特殊清掃
「ウァッ!!!!!!!」
衝撃的な光景に思わず悲鳴を上げた私。
その背中には悪寒が走り、同時に、その身体には裸のまま寒風に吹かれたかのような鳥肌が立った。

私の目に飛び込んできたのは猫の腹部。
しかも、フツーの状態ではなく、薄い腹の皮と内臓はとっくにウジが喰い尽くし、そこに無数のウジがひしめき合っている状態のもの。
その気持ち悪さといったら言葉にならないくらい。
あえて言うと、「イカ飯状態」というか、「いなり寿司風」というか・・・・肋骨の丼に大盛のウジライスが盛られたような感じ。
それは、実際に音は発していなかったもののグツグツといったような異音が聞えているような錯覚を覚えるくらい迫力のある光景。
これには、さすがの特掃隊長も仰天!し、彼らが飛び掛ってくるわけでもないのに、思わず後ずさり。
ただ、私が驚いたのと同じように、ウジ達も突然の環境変異に仰天したのだろう、身体を寄せ合って球状に固まっていたところから蜘蛛の子を散らすように(蜘蛛よりはるかにノロマだが)一匹一匹が離脱。
「捕まってたまるか!」と思ったがどうか知る由もないが、何千匹?何万匹?すべてのウジが一斉に逃走をはじめた。

私に驚いているヒマはなかった。
目の前のウジは次々と逃亡を図っている。
もう「触りたくない」「気持ち悪い」などと甘えたことを言ってられる状況ではない。
一刻も早く対処しないと、多くのウジを逃してしまう。
それがわかっていても、あまりのグロテスクさに、頭は混乱し、なかなかすべきことが決断できず。
私は、肝心なことが何もできず、右往左往するばかりだった。

いくら相手がノロマでも、時間を与えれば逃げきってしまう。
しかも、地面は砂利と雑草。
彼らが隠れる場所はいくらでもあった。
更に、私一人に対してウジは無数。
追いかけるにも限界があり、この勝負、どこからどうみても私の分の方が悪かった。

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ささやかな抵抗(公開コメント版)

2015-09-23 09:47:56 | 特殊清掃
現場は、木造の古い二階建アパート。
その二階の一室で住人が孤独死、腐乱。
周囲には異臭が漏洩し、窓の内側には無数のハエ。
更には、階下の部屋にまでウジが発生していた。

依頼してきたのは不動産管理会社。
「大至急!」と言われるものとばかり思っていた私は、気を高ぶらせた。
ただ、実際はそうではなかった。
不動産会社としては、一刻も早く部屋の始末に取り掛かりたかったのだが、遺族がそれを許可せず。
周囲に異臭や害虫が発生している状況にもかかわらず、遠方から来る遺族の都合で、現地訪問の予定はそれから数日後となった。

約束の日時。
現場ではなく不動産会社の事務所に来るように言われていた私は、まず、そこへ。
すると、通された応接間には、先に遺族らしき初老の男女がきていた。
そして、二人は私には目もくれず何かを力説。
何やら揉めているらしく、不穏な空気を察知した私は 黙って会釈をしながら示された椅子に腰掛けた。

そこに集ったのは、大家、不動産会社の担当者、遺族二人、そして私。
大方のケースだと、こういう現場では、大家・不動産会社が上手にでて遺族は平身低頭になる。
しかし、ここではそれが違っていた。
遺族のほうが上手にでて、大家・担当者は憮然。
私は、その様を妙に思ったのだが、黙って話を聞いていると、ほどなく揉め事の原因はつかめてきた。

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失然得然(公開コメント版)

2015-08-29 11:28:31 | 特殊清掃
もうじき9月。暦は秋。
このところ曇雨が続き、つい先日までの酷暑がウソのように過ごしやすくなっている。
過去形にするには早いような気もするが、今年の夏も暑かった!!
晴天の日などは当り前のように35℃を超えてくる。
その下での肉体労働なわけだから、もう、身体の芯が燃えているような感じ。
自分の身体がエンジン付の機械みたいになる。
とにもかくにも、熱中症には気をつけなければならない。
単独作業の場合は特に。
ただ、作業を始めると休憩するのが面倒臭くなる。
装備の脱着がいちいち面倒なのだ。
とは言っても、自覚症状がでてからでは遅い。

熱中症だったのかどうか・・・7月のある日のことだった。
あまりの暑さに食欲は減退。
そうは言っても、食べないとバテる。
咽通りのいいモノを食べようと、夕飯に盛そばを食べた。
ところが、直後から腹に満腹感とは明らかに違った不快感を覚えはじめた。
そして、それは夜が更けるとともにひどくなり、そのうち吐き気をともなうように。
結局、その日は、夜通し“吐いてはうなされ”“うなされては吐いて”を繰り返し、ろくに眠ることができずヘロヘロになってしまった。
ただ、朝がくれば、約束の仕事に行かなければならない。
私は、その日もフラフラの状態で現場に出て、何度も座り込みながら小刻みに作業を進めた。

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空(公開コメント版)

2014-01-25 09:22:10 | 特殊清掃
冬の空気は、冷たく乾燥している。
けれども、他の季節にはないほど澄んでいる。
猥雑な地上にいると、空を見上げる気力さえ失うことがあるけど、それでも空は万民をその下に置いてくれる。
そんな空を見上げると、一時的だけど心の空気が入れ替わる。

最近、特に気に入っているのが晴天の夜空。
満天の星空を仰ぐと、気持ちが癒される。
外はモノ凄く寒いけど、何か、あたたかい慈愛のようなものを感じる。
そして、命の儚さと、抱えている苦悩の小ささを確認する。

この空は、子供の頃に見上げた空と変わらない。
私が、この地上に生まれるずっと前から、空は変わらないのだろう。
そして、私がこの地上からいなくなっても、変わらないのだろう。
空にも“永久”はないのかもしれないけど、それでも、人間の時間をはるかに超えた時間、空は変わらないままだろう。

対象的に、地上の景色と自分は変わる。
地上の時間は過ぎるスピードも速く、生かされる時間も短い。
かたちあるものは、たちまち風と消えゆく。
まるで夢のように。
しかし、苦しい人生は長く感じる。
時間は、過ぎてみれば“アッという間”に感じるけど、苦悩の中にあるときは永遠のように長く感じられてしまう。

私は、寝ていても、夢の中で何かを考えるような性質。
起きているときは尚更で、余計な思い煩いが私を苦しめる。
思い煩いが始まったら「考えるのはこれでやめ!」「これ以上は考えるな!」「頭を空にしろ!」と自分に言いきかせる。

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暑熱寒冷

2014-01-16 10:14:34 | 特殊清掃
季節は真冬。
自然な話だが、極寒の日々が続いている。
早朝の最低気温は零下になることもざらで、昼間の最高気温が10℃に届かない日も珍しくなく、昨日なんて5℃にも届かなかった。
夜の睡眠は、安物の毛布と布団と自分の体温だけが頼り。
エアコンや電気毛布といった暖房器具は使わない。
私は寒さに弱いほうではないと思っているけど、夜中、寒すぎて目が醒めてしまうこともある。

春夏秋冬、季節に移ろいがあるのはすばらしい。
四季折々の景色、風情、情緒、食べ物、色々な恵みが味わえるから。
反面、それは過酷な環境をつくりだすものでもある。
真冬と真夏では、その気温に40℃もひらきがあるわけで、これに耐え、順応していくのはなかなか楽じゃない。
そんな環境では、道路・建物・車等々、かなりの耐久性が求められる。
急速に劣化してもおかしくないわけで、それがそうならないところに、日本の技術が生みだす品質の高さがうかがえる。

耐久性が求められるのは、人間も同じこと。
生きているかぎり、毎年、酷暑の夏、厳寒の冬を乗り越えなければならない。
暖房器具・冷房器具を使い、服の厚さを調節してそれをしのぐわけだけど、それでも、身体には堪えるものがある。
もちろん、大変なのは身体ばかりではない。
良くも悪くも、季節は精神にも影響を及ぼす。

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肉野菜(公開コメント版)

2014-01-06 09:49:59 | 特殊清掃
2014年 謹賀新年。

この正月、多くの人が、美味しいものをたくさん食べ、美味しい酒をたくさん飲んだことだろう。
一年間の無病息災を願いながらも、暴飲暴食をしてしまう。
しかし、これもまた、正月の楽しみ。
私も、いつもよりはいいモノを食べ、酒もいつもよりは多めに飲んだ。
体にしがみついて離れないメタ坊も、楽しい正月を過ごせたことだろう。
しかし、正月が過ぎたらそんなことしてられない。
腹八分を心がけ、酒もほどほどにバランスのとれた食事をするのが、自分のためである。

9連休明けで、今日が仕事始めの人も多いみたい。
私の場合、例年通り、仕事納めは12月31日。
そして、仕事始めは1月2日(いきなりの特掃)。
運よく?元日の一日は休むことができた。
いつ鳴るかわからないため携帯電話を離すことはできなかったけど、出社は免れた。

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