法燈の明き伽藍や冬紅葉
鯉一尾跳ねて冬景動きけり
湖国よりはるばる冬の疎水かな
見通しの立たぬ世に生きすすはらひ
鴛鴦や七十の坂を共白髪
鴛鴦の水輪描きて静もれり
浮世絵の浪花百景浮寝鳥
埋み火やふつふつふつと君思ひ
笹鳴や舌打ちを吐く悪い癖
聖人君主然として立つ冬木かな
踊るシヴァ神像めきて冬木かな
裸木や不惑はとおに過ぎぬれど
かくかくと生きしかじかの師走かな
もしかして恋かも知れぬ散黄葉
また逢ふの契る握手や冬温し
名にしおはばひとさし舞へよ都鳥
寄り来たりて何言問ふか都鳥
都鳥の戯れをる鴨の流れかな
神仏の無きが如き世神無月
神無月村の社に絵馬一つ
防虫剤の香わし若き日のセーター