白鷺の一歩が描く水輪かな
写真短歌
白鷺の一歩が描きし水の輪の
自然に和する刹那の美かな
睡蓮の葉裏を揺らし鯉一尾
清濁のありて人の世
睡蓮の如くありたし濁池なりとて
白鷺のやおら踏み出す一歩かな
人の世に清濁ありて未草
白鷺のやおら一歩を踏み出して
止まると見えし時動き出し
小水を振りて初蝉発ちにけり
くま蝉よ悔ひなく今を鳴き尽くせ
梅雨寒や伝言板に“さようなら”
愛しても所詮叶わぬ恋のあり
ラストシーンの熱き口づけ
美醜など気にしてをらず熱帯魚
熱帯魚飼われて生くる幸不幸
老兵の浸る往時や走馬燈
冷酒にけふのひと日を締めにけり
冷酒や下戸の詠みたる句の美味く
綿菓子のやうな初恋ちひろの絵
梅雨の夜の狐一家の出入りかな
恨めしくお岩出さうな溽暑かな
喜怒哀楽のもう面倒な溽暑かな