夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

「悪夢探偵」を見ました

2008-08-05 | art
塚本晋也監督の映画で最近のものを見ようと思ってレンタルしました。「鉄男」よりも10倍わかりやすいですが、おもしろさは半分もないように思いました。20年近い年月を隔てても汚いアパートや金属音、ぐらぐらするカメラワーク、一瞬だけインサートされる気味の悪い映像といった点は変わりません。悪夢探偵に松田龍平、刑事にhitomiという配役からしてエンタメよりに作られていますが、魅力を感じるところが同じなのは監督がそうしたものが好きだからでしょう。

後輩刑事がおとり捜査の犠牲になって死んでからクライマックスになって、監督自身が演じる連続事件の犯人「0」が現れるんですが、テンションはかえって下がっていきます。きっと物語を回収するのが苦手というか嫌いなタイプなんでしょう。

「0」が最後に悪夢探偵に対し、「さあ、これからこの忌々しい社会をめちゃくちゃにしてやろうじゃないか!」といったセリフを言いますが、これは「鉄男」の末尾で同じく監督が演じた「やつ」が「男」に言ったセリフと同じです。しかし、その反応は正反対で、悪夢探偵は「あんたはホントに能天気だな」というものです。つまり自身の代表作のパロディになっています。しかし、そのアイロニーは時代の変化を嘆いているだけのように響きます。

こういうふうにいうと失敗作だと思っているように聞こえるかもしれませんが、そう言い切れないところがあります。映画としての出来を超えて、描こうとしていることにただならない気配が感じられるからです。他人の夢に入り込み、隠れた死の衝動を利用して八つ裂きにする人物や、同じく夢の中に入れる能力を持ちながら、それがイヤでしょうがない人物はこの作品の作者と極めて近い存在だと考えられます。「あ。今、タッチしました」というちょっと意味のよくわからない、それだけに実感がこもった「0」のセリフがその例です。「悪夢探偵は職業ではない」と強調されているのは、好きでやっていることではない、どうしようもなく身についた能力だということなんでしょう。

選んだのではなく、勝手に選ばれた能力、それを人は天才と呼ぶんでしょう。本人にもわからないような心の奥底が見えて、すごい、羨ましいと思うのは凡人の浅はかさです。天才自身はそんなもの見たくもないんです。望んでそうなったわけではないと言えば贅沢言うな、傲慢だと思われるでしょうけど。……見えぬけれどもあるんだよ。いっそ見えぬ方がいいんだよ。そう言いたくもなるでしょう。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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2 コメント

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へええ (ぽけっと)
2008-08-15 21:47:40
作者(監督自身なのかな)がそういう特別な能力の持ち主なんだろうと見えたところがすごいですね、なんか。

「アメリ」のときにも似たようなコメント書いたような…
きっと私もそういうのに惹かれるんでしょうねw
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うんうん (夢のもつれ)
2008-08-24 18:41:18
そう言えば全然違うタイプの映画なのに超越的な感覚を感じさせるところは共通している気がします。
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