夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

「デイズ・オブ・グローリー」を見ました

2008-07-09 | art
この映画は第2次大戦において、フランスの植民地だったアルジェリアやモロッコなどの「現地人INDIGENES」が祖国の解放のために戦いに参加させられながら、人種や宗教の違いから種々の差別を受けたという話です。「INDIGENES」がオリジナルのタイトルですが、「そういう言い方をしちゃいかん」というセリフがフランス人上官同士で交わされるので差別的ニュアンスがあるんでしょう。とは言え、「ムスリムという言い方もいかん」とも言われてましたが。

戦争と差別というテーマはとても興味深いものですし、戦闘や昇進だけでなく、食べ物や恋人との文通まで行われた差別の描き方は説得力のあるものでした。でも、おびただしい墓標という戦争映画の常套手段的な最後の映像にオーヴァーラップして、今も恩給面で旧植民地の兵士には差別があるというテロップを見て、ちょっとプロパガンダが過ぎるような気がしてきました。その辺のひねくれた見方をちょっと敷衍してみます。

通常の理解ではアフリカ、イタリア、フランスの連合軍による解放というか侵攻は主にイギリス軍とアメリカ軍が中心だと思うんですが、この映画には全く出てきません。この作品だけ見ると三色旗とラ・マルセイエーズの下に集まった兵士がナチス・ドイツをやっつけたように思えるでしょう。つまり祖国解放戦争という神話を構築し、そこに植民地の人びとも回収しようとしてるような気がします。それはそのまま現在の多民族・多宗教国家としてフランスは生きていくべきだというプロパガンダのようにも思えます。この意味で「デイズ・オブ・グローリー」という能天気な英語タイトルはあながち間違っていないかもしれません。

「アメリ」に八百屋の店長からいじめられる店員役で出ていたジャメル・ドゥブーズがアルジェリア人役で出ていますが、彼は右腕を子どもの頃に失っているそうです。通常の映画であればどうということもないんですが、戦争映画の兵士役で何の説明もなく、誰もそのことに触れず、ずっと右腕をポケットに入れたままでピストルで戦うのはどうかと思いました。軍隊の実際を少しでも知っている人ならありえないと思うでしょう。初戦で彼が塹壕に手榴弾を放り込んで手柄を立てるのもわざとらしい感じです。見えているはずのものを見えないふりをするのって差別と無関係ですかと皮肉を言いたくなりました。

さて、悪口はこれぐらいにしていちばん印象深かった点を挙げます。この映画では北アフリカ、イタリア、プロヴァンス、アルザスとロケ地が移動するたびにモノクロの画面に色がついていきます。最初は砂漠の中の乾いた町だったのがヨーロッパになり、北進して緑が濃く湿気も多い感じになっていきます。それがいい感じだなって思って見ていたら、アルザスの町に入ったジャメル・ドゥブーズが「こんな寒いところにはとても住めない」と言います。このセリフには故郷を遠く離れて戦争をしてきた兵士の感慨がこもっていて、「INDIGENES」というタイトルの意味を考えさせるものがあるなと思いました。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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