別のところで、お題をいただいて詩を書いています。9月の初めからスタートして、30を超える詩を書いてきましたが、秋も終わろうとしているので、それに関係した7つを掲載します。女性からの依頼ばかりですから、そういう内容が多くなっています。
権威づけをするつもりもありませんが、古今集以降の和歌は題詠が多いですし、恋の歌においては男性が詠む場合でも女性一人称と解すべきものが少なくありません。まあ、そんなことより、自分の中に題材を見つけたくもないのと、どうせ憑依するなら女性の方がいいってことですがw。
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秋へのプレリュード
秋は風の音にあるって昔の人は言いました
うん、今ならピアノも弾けそう
ショパンだってなんだって
入道雲を追いやった風が教えてくれるの
秋は空の色にあるってあなたは言いました
うん、今ならずっと泳いでいけそう
成層圏だってどこだって
あなたの瞳に映るものならわかるの
秋はまだ来ていません
秋はもう来ています
風と空とあなたと
誰が最初に伝えてくれるの?
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後悔
あたしは後悔なんかしたことない
浮気を見つけたときは
頬を2発叩いて
それでさよなら
うじうじ悩むなんてあたしは嫌い
空虚な気分のときも
パンケーキを焼いて
メイプルシロップでおなかいっぱい
めそめそ泣くなんてあたしに似合わない
涙を流すこともたまにあるけど
知っているのは愛犬だけ
頬をなめて秘密を守ってくれる
振り向かない
くよくよしない
秋はあたしの季節じゃない
昔のピアスをつけたり
出すあてのない手紙を書いてみたり
あたしらしくなくなる季節
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雨降りは嫌い
窓を涙のように流れる
秋の冷たい雨を
一日中、ながめていると
いろんなことを思い出す
落ち葉を踏みしめ
歩いたいちょう並木
銀杏のにおいが嫌いだって言って
あなたのセーターに顔をうずめた
灰色の海に向かって
吹く風の中で
花火の燃え殻をたくさん見つけた
あなたの肩を借りてパンプスの砂を捨てた
思い出の上に雨が降り続いて
「ちょっと寒いね」と独り言を言う
そうでもしないと
心があふれそうだったから
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気持ちの整理
さあ、片付けなくっちゃ
散らかりまくったこの部屋を
整理=捨てること
どんどん捨てちゃいましょう
美術館のパンフレット
片っぽだけのイヤリング
男物のパジャマ
いろんな思い出があるものだけど
段ボール箱に放り込め
すっかり片付いたじゃないの
秋の夕暮れは早く
もう辺りは暗くなって
がらんとした部屋に
あたしはうつむいて
ずっと立っている
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一人旅
こんな季節に一人で旅に出るなんて
何かあったの?って
みんな訊くけど、何もないよ
ただ風の光を見たかったの
行く先も、帰るところも
旅の目的じゃない
電車に乗って、バスに乗って
それから気の向くままに歩いて
移りゆく季節と
一人のあたしがお話をする
ひさしぶりね
旅から帰って
何かあったの?って
みんな訊くけど、何もないよ
ただ心の色が深くなったの
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アリア
春、小鳥があたしに歌いました
「恋とはどんなものかしら?」
楽しいこと
せつないこと
きっといろんなことが待ってるの
夏、白い波があたしに歌いました
「愛する人、あなたの心はどこにあるの?」
不安にゆられて
同じところを行ったり、来たり
答は水平線の彼方なの
秋、鈴虫があたしに歌いました
「歌に生き、恋に生き」
とてもきれいな声で
でも、もう消えそうな声で
何も悔いはないの
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クリスマス
クリスマスが楽しみな人にも
クリスマスが来てほしくない人にも
クリスマスに甘い思い出がある人にも
クリスマスに忘れたいことがある人にも
すべての人にやって来る
星が静かに輝くように
すべての人に心があるように
ケーキ屋さんにも
おもちゃ屋さんにも
レストランのウェイトレスにも
ホテルのボーイにも
すべての人にやって来る
雪が黒い空から降るように
すべての人が眠るように
お父さんにも
お母さんにも
子どもたちにも
ひとりぼっちの人にも
Merry Christmas!
Merry Christmas……