夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

イマージュの象潟

2012-08-25 | diary
19:10になりて一部区間再開せしも未だ不通区間ありとのアナウンスあり。
この電車には既に3時間半乗れり。
先程よりワンセグにてNHKニュースをば見んとすれどわずかな時間にて途絶す。
新潟、山形、秋田いずれよりも遠き地なればなり。



19:49車掌より運転再開の見込みなきが故にタクシーにて代行運送を行うとの知らせあり。
こは想像だにせざるところにしておもしろし。
果たして何時にいずくまで吾らを運ばんや。
車掌を何人かが取り囲みて口々に質問すれど彼の所掌外・認識外のことにして大方は意味なし。
吾人は行き先を尋ねられし折にタクシーは何台呼びしかとのみ質問す。
大型8人乗りを3台との答えに順番争いの醜状なからんと安堵す。

20:19にタクシーの到着により下車す。
通常のタクシー3台と大型1台にて注文通りに行かずは当然のことにして行き先別に分乗すれど、よそよそしき車内の空気にて一語たりとも発する者なし。
雨激しく、海岸沿いを山と漁村を経巡り行き、1時間半ほどにして漸く酒田駅前に着きぬ。
何を差し置いても酒ぞ、食事ぞと浅ましき目つきで駅前通りを観察しおるもさほど店はなく、よって迷いもなし。
すぐ近くの居酒屋に入り、岩牡蠣、もずく、茶豆、手羽先餃子、お好み焼きと矢継ぎ早に誂えし。
店長はタイガースファンらしく、たこ焼きやらどて焼きやらもありぬ。
駅前のホテルに電話せしも満室なりとの返答にて、芋焼酎2杯の深酔もありて問い合わせを続けるも倦しと11時前にはネットカフェに向かいぬ。
疲労により速やかに眠り、4時頃に目覚めぬ。
歯磨きをし、シャワーを浴びぬれば生き返りし心地す。
アイフォンをば駆使して旅程を整理などせし間に始発の時間迫れり。



昨日は運休となれり列車多きがためなるや、駅が改札口には5時過ぎなれど人の集まれり。
ひょっとすれば駅にて一夜を過ごせし人もあらんや。



駅前にはコンビニもなく、エキナカも未だ開かざりしに朝食を買うあたわず、5:39発の秋田行きに乗車す。
この旅行中初めての全席ロングシートなれど一車両に2、3人のみ。



首を回して車窓を眺むるに広々とせり田圃に蘊気の垂れこめしも良き有様にて2駅目は南鳥海駅なり。
さればかの雲を纏いしリズミカルにして優美なる稜線は鳥海山ならんにその名もまた麗し。



リストが編曲せしベートーヴェン交響曲第1番をばシチェルバコフが弾きたる耳に入りし。



序奏部を極度に遅きテンポにて慈しむが如くに奏し、一転して加速せし箇所は転がす様なる演じ方はオーケストラにては叶わじ。
全体として云々すべきものにあらずしてピアニスティックなる部分をば愉しむものと思料するなり。

鳥海山と別るればほどなくして再び険しき海岸となりぬ。
この列車以降は最早海岸は望まじと思うほどに窓外を眺むるに象潟なる駅と気づくや、やおら立ち上がりて降りぬ。
芭蕉が句を詠みし景勝地と知識のみはあれど此処とは知らざりける。



駅員は1時間後の列車に乗らんとすれば急ぐべしと云いしが、芭蕉の頃まで松島が如き海に小島の点在せし風景深く魅せられし。



客年訪れし松島も美しけれど、かつての海を歩き、陸没せし島々に登りぬ。
いつしか海がイマージュの立ち現れ、アーティスティックな感動を覚えり。
すなわち象潟は不自然なる自然なり。



初めて音楽を止め、イヤフォンを外して堪能せり。
さるにても車中にての咄嗟の判断を自賛す。



駅にてもらいしパンフレットには奥の細道の最北地なると記載あり、また能因法師、西行法師以来の和歌、俳諧等記せり。
 命あらばまたも来て見ん象潟の
  心とどめし松のみどりに (伝、北条時頼)
 象潟や雨に西施がねぶの花 (松尾芭蕉)
これらが印象深し。
西施は越王勾践の呉王夫差に謀りて差し出されたる傾城の美女とかや。
そを合歓の花に重ねて耽美にして物憂げなるイマージュを浮かび上がらせたり。
イマージュが意義はドビュッシーが同名曲により感得すべし。



時を忘れてあちこち散策すれども駅に戻るを忘らるる筈もなし。
近くのローソンにてサンドイッチ他多めに朝食を買い求めた後、おもむろに時刻表を検索するに次が秋田行きは7:15にして今は7:05なり。
走らんやと声に出して靴紐をば結び直して走り出しける。
直ちに息切れして歩きぬ。
少しも息の整えば走りぬ。
その繰り返しによりて凡そ1.5キロを行き、駅舎に入りしと同時に列車の来たりぬ。
かほどのギリギリは珍し。
息の切れて拭くはじより汗の吹き出しぬ。

直ぐと暫くの間くらいにして象潟を通ぎぬ。
乗り鉄の一眼レフにてうろつき撮るもおかし。
向かいに座りし女子高生や3人、容姿は何と云うべきにあらずも襟にチェックのテープあるベージュの制服ぞかわゆし。
漸う息の整いて朝食を摂りぬ。
車内にて食らうは好まぬところなれど、秋田まで1時間以上あれば已む無し。


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