夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

角館の球場

2012-08-28 | diary
秋田に着けり。角館への電車の接続よろしからず2時間の空白できぬ。



駅に隣接せしネットカフェにてけいおん!を読む。
10:24の新庄行きにて大曲に向かえり。
2両編成ワンマンカーが列車はロングシートにしてほぼ満席なり。
よく晴れし空の下ぽこぽことせる山の合間を進めり。
日本は山と海と少々の平野よりなる国ならん。
ピットフィールドがピアノコンチェルトの聴こゆるに子どものいたずら弾きの如くして耳新し。



秋冬の頃東北に来てみたきなり。
雪に難儀もしてみたし、寒き思い凍ゆる感覚も味わいたし。
そは夏なればこその戯言なるや、果たして然らん。
吾人にとりて退屈は何よりの敵にして新鮮なる刺激こそが考うこと、書くことの源泉なり。
而して旅を書くことによりて自らの占有物とせん。
間もなく大曲なり。
山形へ南に向かう列車を降り、角館を経て盛岡に向かえる東行列車に乗り換えんとす。
思えらく昔の街道も同様に分岐していたが故にかかる地名となるらん。



東北の川は広し、関東以西ほど飼い慣らされておらずと言うべきや、河川敷が林となれり。
ディッタースドルフがシンフォニアを聴けり。



深く沈潜せし音楽なりてしみじみたる味わいあれど、芯に乏しく感慨の留まり難し。
東京行きのこまちの大曲駅のホームに長く留まりしに車体も小さく、グレーとピンクが配色もかわゆく覚ゆ。
山形新幹線は何と云うや、乗りたりしことあるにすぐには出て来ず。
さくらんぼとでも名づくるがよからん。
やまびこは一向に早き感じなきにはやぶさは秀逸なり。
田沢湖線は単線ローカルなれど、こまちが通る道なれば幾度か長らく停車す。
萌えキャラ倉庫を飽きるほど見し。



右手に高き山々が左手に低き山々の見ゆ。
漸くにして角館に着けり。
陽射し強くして暑し。
実は今回が旅の目的地はこの町にして他は行き当たりばったりなり。
山登りに仮託すれば頂上にしてここを愉しまば後は帰り道に過ぎず。
イヤフォンを外せしは勿論のことなり。
駅前にレンタサイクルありて便利にして高揚せる気持ちに叶えり。
名のみ聞き書きてお代は後でとお姉さんの申すに当方が心配がちなるを見て微笑みぬ。
同乗せる客をすいすいと追い越し、武家屋敷筋に至りぬ。
さは時代劇なる屋根瓦を戴く白壁にはあらず、道の両側の林ありて所々に門ありて屋敷、蔵は木立の中に点在す。



多くの観光客や車も通るもかまわずふらふらと道の中程まで歩きぬ。
立場の違うは勿論なれど、自転車に乗りて常に思うは注意力の弛緩せる人の多きことなり。
後ろから魂の飛びぬ人と見しはスマホ、ケータイをいじりしことしばしばなり。

ともかくも腹の空きたれば稲庭うどんを求めんが乾麺を商いし銘店なり。
ここでは食すること能わじやと尋ぬるに相申し訳なきことにてと微笑みぬ。
その店の麺を使いし店に赴くに目立たざれば追い越して、自転車を返す。
土産物屋の2階になれど昼時の故か繁盛したり。



喫茶店をば兼ねたるは昼食時以外の商売を考慮せしか或いは店主が趣味か。
注文を取りたる女性は美人にして気配りもあり。
稲庭うどんは950円とやや高きも山菜が入りて旨し。



付け合わせられたるは沢庵が燻製にて美味なり。
次に樺細工伝承館に入れり。
樺とは山桜の謂なりと種々記せるも当方は白樺は知れど樺は知らざれば何にても構わず。
なかなか手間の掛かりたる調度などあれど、それなればこそと納得できぬはこの種の工芸品の常なり。



職人が作業を見せるコーナーあり、彼の前に並びし細工物は悉く彼の作にして売り物なり。
買い求めんと欲すれば彼の手を止め、支払うべし。
これは意外なれど道理なり。
煎茶の茶杓が靴べらに適すべきと思いて買うに1050円が50円をおまけと言いぬ。
浮世絵や鎧兜の陳列もあれど、鎧が直垂などが細工に目の惹きつけられし。



そこを出でてもろこし菓子の店に入りぬ。
もろこしと云うも小豆粉を練りて作りしものとかや、枝豆が餡と合わせし饅頭を試食するに美味なり。
買うと決めたれば片端から試食せり。
シンプルなる生もろこしも捨てがたきも土産を渡す人もなきに熟考躊躇した挙句、最初の饅頭とす。

かく観光客らしきことのついでに武家屋敷を見物す。



武具、民具等々集め方、並べ方に系統性を欠き、過剰にしてバランスの失したるところ見ゆるも、学芸員を置きし美術館にはなき面白味を感じぬ。



秋田蘭画が如き風合いと云うは牽強付会に過ぎぬるや。
いくつもの蔵を巡りて外に出る折、この屋敷の主青柳氏が禄高は当初3、40石、幕末にても100石とあるを見て、かかる身分にてもかくも広き屋敷を所有せるかと驚けり。



まだまだ平田百穂が美術館など近隣に見所あるも倦みぬ。
折角自転車のあるに観光スポット外に漕ぎ出でん、観光客の面などよりも角館の日常を垣間見んや。
意気軒昂なれど町の真ん中に小高き丘ありて坂多くして、登りは苦しく、下りは危うし。
闇雲に走れど旧盆なるや人影は全くと言ってよい程なし。
観光地図の端の方に向うに懐旧の念を起せし川あり。



さらに自転車を漕ぐに忽然と落合球場現れり。
かの名選手にして名監督の落合氏は秋田の出身と記憶すれど、彼の寄附したるものや否や。
通常ならばその由来書なり、顕彰碑の類あるに物好きにも球場を1周すれど全くなければ一切の説明を拒否したるが如し。



これもまた氏らしきかなと一人合点して人っ子一人見かけぬ炎暑の土手を戻りぬ。
途中、高等学校ありたるもこれまたクラブ活動をしたる様子もなく森閑とせり。



列車間遠にしてまだたっぷりと時間あれば登ったり、下ったり町を巡るは不審者に近し。
されど吾人が観光はかくの如きものなれば未だに警吏に職質を掛けらたるも筋者に絡まれたるもなし。
自由の領域は自らが定るところあらん。
茹で上がりし脳みそにてかかることを考えれば森よりいと涼しき風の吹き下りぬ。

駅には裏手より着き、自転車を返さば3時間の料金900円は安し。
駅前をぶらつくに燻製味は好物にて昼食時のいぶりがっこを買い求めたり。
列車の早々に入線せしに乗車し、新庄に向かうや秋田に戻るやを思案す。
明日の日程を楽にするは新庄なれど、秋田を離れがたき思いして大曲にての乗り継ぎもよきに心決まりぬ。



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