ダ・ヴィンチ展の続きです。あれには例の「ウィトルウィウス的人体図」についての展示もあって、ヴィデオを使って黄金比や正七角形の作図方法が隠されているようなことを示しています。以前に私はあの人体図は黄金比とは関係がないって断言しちゃってるんで「まずいじゃん」って思って、何回かヴィデオを見てやっと「なーんだ」ってわかりました。
ヴィデオはイタリアの科学史研究所・美術館の「The Mind of Leonard」の中にあるので見ていただければいいんですが、要点はこの人体図の(両手を伸ばした人体が内接する)正方形と(両手両足を斜めに伸ばした人体が内接する)円は黄金比で結びついているということです。具体的には正方形の1辺を1とすると円の半径は0.618だということです。
ちなみに黄金比は通常1:1.618と理解されていますが、1.618の逆数は0.618、もっと正確には(1+√5)/2の逆数の2/(1+√5)=(1+√5)/2-1ということです(ちょっと計算すればわかります)。
でも、どうやって正方形と円が結びついたのかって言うと、正方形を半分にしてその中点にコンパスの針を置いて頂点までの幅で辺を延長してるんですね。……わはは、これって黄金比のいちばん簡単な作図方法じゃないですか(私のページのかなり最初に出てくる図そのものです)。つまりダ・ヴィンチは黄金比の関係が出るような図を作り、それに合うような人体を描いたってことでしょう。
次にヴィデオはこの円に内接する正三角形の一辺に中心から垂線を下ろし、その長さで円弧を分割すると正七角形が作図できるようなことを示しています。これはもちろん明白な間違いで、定規とコンパスだけでは正七角形は作図できないことが証明されています。ただ計算してみるとおもしろいです。円の半径をrとすると正三角形の一辺の半分はrcosπ/6=r√3/2となって、0.8660です。一方、円に内接する正七角形の一辺の長さは2rsinπ/7で表せ、0.8677です。惜しいなあってところですか。
さらにヴィデオはこうして描いた正七角形の一つおきの頂点を結んだ弦は正方形の一辺にほぼ等しいと言います。ほぼなんて言うところからいい加減ですが、こうした弦の長さは2rsin2π/7で表せるので、r=2/(1+√5)として計算すると0.9664です。うーん、こっちは惜しくもない感じですね。え?わりと近いだろって?なんか違うんですよね。こっちは√10=3.1623がπにほぼ等しいって言ってるような感じがして。……こうやって見ていくとダ・ヴィンチってやっぱり手を動かしていろいろやってみるのが好きな人で、数学者や理論家じゃないなって感じですね。
まあ、この人体図が黄金比に無関係だって書いたのは私の間違いでお詫びします。次回のサイトの更新の際にこの文章を補遺として追加したいと思います。
ヴィデオはイタリアの科学史研究所・美術館の「The Mind of Leonard」の中にあるので見ていただければいいんですが、要点はこの人体図の(両手を伸ばした人体が内接する)正方形と(両手両足を斜めに伸ばした人体が内接する)円は黄金比で結びついているということです。具体的には正方形の1辺を1とすると円の半径は0.618だということです。
ちなみに黄金比は通常1:1.618と理解されていますが、1.618の逆数は0.618、もっと正確には(1+√5)/2の逆数の2/(1+√5)=(1+√5)/2-1ということです(ちょっと計算すればわかります)。
でも、どうやって正方形と円が結びついたのかって言うと、正方形を半分にしてその中点にコンパスの針を置いて頂点までの幅で辺を延長してるんですね。……わはは、これって黄金比のいちばん簡単な作図方法じゃないですか(私のページのかなり最初に出てくる図そのものです)。つまりダ・ヴィンチは黄金比の関係が出るような図を作り、それに合うような人体を描いたってことでしょう。
次にヴィデオはこの円に内接する正三角形の一辺に中心から垂線を下ろし、その長さで円弧を分割すると正七角形が作図できるようなことを示しています。これはもちろん明白な間違いで、定規とコンパスだけでは正七角形は作図できないことが証明されています。ただ計算してみるとおもしろいです。円の半径をrとすると正三角形の一辺の半分はrcosπ/6=r√3/2となって、0.8660です。一方、円に内接する正七角形の一辺の長さは2rsinπ/7で表せ、0.8677です。惜しいなあってところですか。
さらにヴィデオはこうして描いた正七角形の一つおきの頂点を結んだ弦は正方形の一辺にほぼ等しいと言います。ほぼなんて言うところからいい加減ですが、こうした弦の長さは2rsin2π/7で表せるので、r=2/(1+√5)として計算すると0.9664です。うーん、こっちは惜しくもない感じですね。え?わりと近いだろって?なんか違うんですよね。こっちは√10=3.1623がπにほぼ等しいって言ってるような感じがして。……こうやって見ていくとダ・ヴィンチってやっぱり手を動かしていろいろやってみるのが好きな人で、数学者や理論家じゃないなって感じですね。
まあ、この人体図が黄金比に無関係だって書いたのは私の間違いでお詫びします。次回のサイトの更新の際にこの文章を補遺として追加したいと思います。
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↓アンケートやってます↓
なんかいろんなものがあるサイトです。
つまり今はサイトにある例の文章は、読解の問題の答えとしては正しかったということですね。
あとはお手あげ~
教え方が悪いのか、教わった方が悪いのか、いずれにせよすっかり忘れてる人が多いですね。
まあ、でも私の文章は正確に理解していただいたようで、結論はそんなに変える必要がなかったっていうのが裏の意味ですw。
先日の土曜日にダ・ヴィンチ展に行ってきた者です。
(最終日前日とはいえ,あんなに混んでいると思わなかった。)
正7角形の作図のビデオは,上手に説明されていたけど,なんとなく本当に正7角形になるの?と気になっていたので,家に帰ってインターネットでもう一度正7角形の作図を調べてみようと思ったら,「作図不可能」という記述ばかりでびっくりしました。
そこで数学の問題を質問できるサイトで「ダ・ヴィンチ展でやっていた正7角形の作図」について質問してみましたが,かえって来る返事は「ダ・ヴィンチなら正5角形の間違いだろう」というものばかり。正7角形の作図法なんてなにを勘違いしているのかと。
うーん,私の見たあのビデオはなんだったんだろうと,半ば「幻の正7角形の作図」になりつつありましたが,
googleの検索でこの文章に出会い,かなり解決した気分です。
ところで,あのビデオでは,
正7角形の1辺の長さを求めるのに,
夢のもつれさんの記述のように簡単ではなく,
正三角形の頂点から角の二等分線を引いたほかに,
もう一本二等分線を引いてどうのこうのと
やっていた気がするんですが,どうだったか覚えていらっしゃいますか?
もし覚えていらっしゃったら教えてください。
ビデオの確認ができました。
ちゃんと調べてから質問すべきでした。
お騒がせしました。
自分でも計算してみようと思います。
ただこのヴィデオがいつまで見れるかは心もとないんで、それを忠実に描写するためには少し言葉を補って「円に内接する正三角形の一辺に円の中心から垂線を下ろし、三角形の頂点からその垂線による辺の中点までコンパスを広げ、それで円弧を分割していくと正七角形が作図できるようなことを示している」とした方がいいように思いました。
このブログの記事は元のままにしておきますが、サイトの方はそんな感じで直そうかなって思っています。
しかし、あれだけ大騒ぎになった展覧会で、あのヴィデオだって何万人と見たでしょうし、その中には正七角形が定規とコンパスで作図できないのを知っている人もいっぱいいただろうにって思いますね。
動映像展示の中では明らかに正7角形の作図法と言っていました。近似的とは言っていなかったと記憶しています。 問題は、中高学生(ひょっとして小学生)の少年が正7角形の作図法と信じてメモを取っていたことでした。
科学的事実ははっきりと誤解を招かないように伝えるべきです。
東京博物館にメールしましたが返事はなし。
正7角形の作図不可能性の問題は、幾何学のみならず、代数学の進展にも関わる重要問題で、勿論ガウスの研究や、ガロワ理論野も関係します。
問題のビデオは、イタリアの科学史研究所・美術館のものをそのまま使用し、日本語のナレーションをつけただけのもののようです。
東京博物館が展示に対していい加減だであるのは、お役所の一部で素から、当然と言うか。 大事な事は十分できっちり納得できないものは、安易に信用しないという態度でしょう。
ココのブログを見つけてほっとしました。だれも気にしないのであれば、日本人の精神も終りでと思っていましたから。
あの展覧会はイタリア作られたものを元に、どっかの広告代理店に作らせて、名前だけの監修を誰かに頼んだだけでしょうから責任感なんかないでしょう。……逆に私はどんな権威が言うことでも自分で納得しない時は書かない(こともありますw)。
正七角形がなぜ定規とコンパスでは作図不能なのかも記事にしたいなって思っているんですが、直感的にわかりやすい説明が浮かばないんでそのままになっています。