夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

昔と今のリンク~1972:テロ、首相交代、マスコミ

2005-05-30 | review

 「ジャパン・レクイエム」は、1972年から10年ほどを扱うことにしていますが、その頃の新聞記事になったようなことがらを紹介していこうと思います。大掃除で畳を上げたときや押入れを片付けていたときに、古新聞が出てくると忙しいのに思わず読みふけってしまった経験はある方が多いのではないでしょうか。そんな感じのする話になればと思います。

 最初は1972年です。ちょっと主な事件からピックアップします。
① 4月4日:警視庁、外務省公電漏洩事件で蓮見事務官と西山毎日新聞記者を逮捕。
② 5月30日:鹿児島大学生岡本公三ら日本赤軍3人、イスラエルのテルアビブ空港で乱射。空港にいた民間人26人が死亡、72人が重軽傷。ゲリラ2人射殺。PFLP(パレスチナ解放人民戦線)がこの襲撃事件を指示したと言明。7/17イスラエル臨時法廷、岡本に終身刑判決。
③ 6月17日:佐藤栄作首相、衆参両院議員総会で退陣を表明。田中角栄、福田赳夫、大平正芳、三木武夫が総裁選に出馬。
④ 7月7日:第64代第1次田中角栄内閣成立。田中首相、日中国交正常化を急ぐと談話。
⑤ 9月5日:パレスチナ・ゲリラ、ミュンヘン・オリンピック選手村を襲撃。イスラエル選手、役員2人射殺、9人を人質に。脱出先にエジプトを指定。警官隊、空港でゲリラ3人を射殺。人質9人も死亡。
⑥ 9月25日~30日:田中角栄首相、大平正芳外相訪中。周恩来中国国務院総理と会談。国交正常化の基本方針で合意。共同声明発表。

 ②や⑤は、今でも大きなテロ事件として語り継がれるものです。②のテルアビブ事件(画像はその惨劇の様子です)での岡本公三らの世界同時革命といったイデオロギーとパレスチナ人民との連帯といったセンチメンタリズムは、その後ほどなく雲散霧消しましたが、テロそのものは、インティファーダとか内戦とか自爆テロとか言葉(小林秀雄流に言えば意匠)は変っても、今も増えることはあっても、減ることはありませんし、それを支えるイデオロギーにも感情にも事欠かないでしょう。
 ⑤は、よりにもよって西ドイツのオリンピックでユダヤ人を人質にとったのですから、②への報復としてもすごいものです。当時の西ドイツ政府の対応は、およそ日本政府には(昔も今も)考えられない対応ですが、テロに対する姿勢の問題でしょう。穏便な解決を期待するのは当然としても、私としては、犯人にも言い分があるとか、背景にはこういう事情があるとかいったことを言いつのるマスコミや評論家に問題があると思います。外科的治療をどうしようかというときに、内科的な所見を述べても無意味で、かえってテロ側を利するだけでしょう。そう、テロが起きたときの対応は、すぐれてoperationの問題なのです。先日、イラクで捕まった外人部隊に長くいた日本人はそうしたことはイヤというほど知っていたでしょうし、去年の人質事件のようなくだらない議論が今回はほとんどなかったのはよかったです。

 ③、④、⑥は、一連の首相交代がらみで、64年から8年間という最長不倒記録の佐藤栄作が田中角栄に代わったわけです。佐藤は官僚出身らしく新聞嫌いで、辞任表明のときに新聞記者と言い合いになって、新聞記者全員が会見場から出て行ってテレビカメラだけを前に語りました。この話は物語で取り上げますが、考えてみれば報道の自由ばかり言う新聞社には報道の義務って観念はなかったんでしょうか。
 その後に三角大福と呼ばれた激しい自民党内の争いがあって、中学校にも行っていない今太閤と呼ばれた田中に決まったのですが、その人気は就任当時の小泉さんと同じようにすごいものがありました。そっくりさんがドラマに出てたくらいですから。日中国交回復がそれに拍車を掛けたのですが、そうした目玉作りとかから言って、彼が最初のpopulistであったと思います。最後はカネの問題、今も政治疑惑のお手本wのように言われるロッキード事件で辞任したことも含めて。
⑥のことなどを思い起こすと、中国との今の関係は隔世の感がありますね。私見では、中国の基本的スタンスは変わっていない(度量が狭くなったということはあります)と思いますが、日本の姿勢が変わったのでしょう。少なくとも72年当時は朝貢外交みたいなものでしたから。

 最後は①の事件で、毎日新聞は報道、取材の自由で論陣を張ったのですが、外交機密を女性外務省職員と情を通じて入手したというやり方が全然受け入れられなくて、今に至る毎日新聞の凋落、低迷の原因を作った事件です。「目的は手段を正当化するか?」なんて何だかむずかしい話のようですが、この事件の結果はNOですし、今ならもっと問題になるでしょう。……でも、マスコミの基本的な姿勢は、先日の朝日新聞のNHKへの取材の仕方を想像するに、そうは変わってないように思います。


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8 コメント

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TBありがとうございました (cxvxc)
2005-05-31 02:17:02
 72年って、そうそうこんな年でした。オリンピック村襲撃が一番ショックでした。まさか、スポーツ選手が狙われるなんて、思わなかったですから。

 「庶民派宰相」田中角栄氏は、TVドラマ『時間ですよ!』か何かに、そっくりさんが出てましたよね。

 72年からの10年間、楽しみにしております。
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コメントありがとうございます (夢のもつれ)
2005-05-31 02:25:03
オリンピックは「平和の祭典」でしたからね。今は警備がすごいんでしょうけど。



そうそう「時間ですよ」でした。お約束の女湯をおじさんたちは喜んでましたw。



これからもよろしくお願いします。
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1972年・・ (gungnir25)
2005-06-01 23:33:31
私はこの頃の話は全く知らないので、興味深く読ませてもらいました。



田中角栄って、最初はそんなに人気があったんですね。非エリートの希望の星だったのでしょうか。

日本赤軍といえば、たしか「あさま山荘事件」もこの年かな?



ミュンヘン五輪の襲撃事件とは、TV番組でチラッと見た事があります。これ以来、五輪では警備が厳重を極めるようになったとか。

スポーツに政治が持ち込まれる状況は、現代まで続いてますね。

というか世界も日本も、残念ながら抜本的な問題点はあんまり変わってないのかもといった印象を受けました。



HP開設したんですね。またそちらもゆっくり見させていただきますね。
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あの辺から「現在」が…… (夢のもつれ)
2005-06-02 13:42:25
始まっているように思います。現象的にそうですし、なぜそうなのかも徐々に解明していきたいと思います。

70年代は、歴史と現在が交錯する時期なのかなって感じです。



gungnir25さんからは、田中角栄が汚れた政治家というイメージなのはよくわかりますが、田中真紀子の人気の半分以上はお父さんによるものなんですよ。



浅間山荘事件も同じ72年の2月です。これはいろいろ言いたいことが多いので。……また取り上げることになると思います。



これからもよろしくお願いします。
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72年の受験生 (full-house)
2005-06-13 12:34:29
音楽で通りすがった者です。

72年2月は浅間山荘事件と札幌オリンピックでテレビに一日中釘付けでした。

入試前の追い込みだったのでよく覚えています。



入試は盾を持った機動隊に囲まれて受けました。



授業料はこの学年から月1千円から3千円に一気に値上げ承知だったのですが、先輩達が学生運動で値上げを半年延期にしてしまいました。

あとの運動目標は、成田と筑波大反対だったでしょうか。



卒業の年の学園祭では立花隆「越山会の女王」のコピーが飛び交ってましたっけ。



激動の時代でした。まったく傍観者してました。

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リアルタイムですねw (夢のもつれ)
2005-06-13 12:54:12
コメントありがとうございます。

札幌オリンピック……日の丸飛行隊ですね。あれは感動しちゃいました。



授業料は、隔世の感がありますね。今じゃ国立でもかなり高いそうですから。

確かに激動の時代で、おもしろいと言えばおもしろい時代ですね。アメリカやフランスでもおんなじようなことをやっていたので、ヴェトナム戦争とか文化大革命とかの時代背景もありますけど、たくさんいてパワーを持て余していたベビーブーマー(日本では団塊の世代)が騒ぎたかっただけって気もしてます。
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似ていますね (8マン)
2005-06-24 01:06:34
田中が中国へ行ったのも小泉が北朝鮮へ行ったのも…。国家戦略がない、という意味で…。



外国の貿易≪小≫委員会の暴露なんかで一国の首相が失脚してしまうなんてナント情けない話じゃあありませんか(笑)。それまでは日本の首相にも(アメリカ政府による)一定の敬意が払われていたように思うのですが…。
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8マンさんへ (夢のもつれ)
2005-06-25 04:43:30
田中さんまでは、1内閣で1外交課題を片付けるということになっていたようです。それは佐藤さんの沖縄復帰のように戦後処理の一環でもあったのでしょう。



小淵さんの沖縄にしても、小泉さんの北朝鮮にしても、意味はあるし、ご本人としては信念をもってやっているのかもしれませんが、政権が変わると方針が変わるならまだしも、忘れられたようになってしまうのが問題なような気がします。



日本の首相に敬意??……そんなの感じろって言うほうが無理でしょう。唯々諾々の国の首相になんか(笑)。
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