081 勾玉
口に入れて冷たい感触を味わう
トゲと穴を舌で確かめる
眩暈のような古代のにおいが立ち込める
鏡を見ない日はあっても
死を思わない日がないように
するりと抜けて夜の海に沈んでいく
むっとするようなみどりいろの風が地面を這う
082 まさか
気がついたらあたしは賀茂川の畔にいて
浴衣を着て立っていた
胸乳に汗が粒になっているけれど
横顔を涼しげに見せる
洛東、洛北と裾を翻しながら
炎熱にあえぐ街を如意ケ嶽から眺めれば
ちりめんの波がまぶたにそよぐ
天地逆さま、まさかの坂
083 魔女
白妙の袖の別れに
よく熟れたいちじくをちょうだい
あなたの心臓によく似た
露落ちて身に染む色の
カクテルをひとりで飲み干せば
夜の砦から黒猫が慰めに来る
084 祭り
近頃のお祭りは
プロの踊り手を招いたり
神輿もなくただ露店が並んだり
遠巻きにする子どもと年寄り
奇妙なほどきれいな夕焼けが
消えた頃にあたしを組み伏せた
遠い日の笛太鼓の音は
生々しいにおいを立ち昇らせる
085 未遂
ぶっきらぼうなメール
息を殺して回る秒針
恋するには早く
証拠を残すには遅い
勇気がなかったから罪はなく
死体置場には愛だけ
法律のようなブラインドの光
秋の風が騒がしく揺らす
086 胸
夜の夏服
小首傾げた三日月
時間より早く流れる群雲
触られるとくすぐったい
噛まれると甘く痛い
思い出すと切なくて
ボタンをはずす
087 メモ帳
茜色のビスケットの缶
古いメモ帳を見つけた
「海鳥の影がぼくたちの前を横切る」
あなたの下手な字
いつの間に書いたのか
何を伝えたかったのか
「まぶたの裏をかすめる」
昨日の雲を探すようなもの
088 もう二度と
別にそう願っているわけではないけれど
これまで出逢ったほとんどの人とは
もう二度と会うことはない
中にはキスをしたり
もっといろんなことをしたりした人もいるけれど
だからこそ偶然にも会えない
あたしが思う「人生の意味」ってそういうこと
089 燃ゆる山
最近、地震が多かったし
東京にだって温泉はあるし
だからといって代官山が噴火して
渋谷が溶岩流で埋まってしまうなんて
西風に乗って大量の灰が降り注ぎ
秋葉原は雪景色のようにきれい
夜空を赤く染めて吹き上げる炎は
山手線のガードを飴細工に変えていた
090 闇の中
エレヴェータが止まって真っ暗になった
ぶうん・ガシャという音とともに
うつむいてぼんやりしてたからはっきりしないけど
スーツ姿の男の人がいたはずだ
「困りましたね」
少し置きすぎたくらいの間があって
手探りのような声が聞こえた
「困らないですよ」
そう言ってみるのもおもしろかったかな
口に入れて冷たい感触を味わう
トゲと穴を舌で確かめる
眩暈のような古代のにおいが立ち込める
鏡を見ない日はあっても
死を思わない日がないように
するりと抜けて夜の海に沈んでいく
むっとするようなみどりいろの風が地面を這う
082 まさか
気がついたらあたしは賀茂川の畔にいて
浴衣を着て立っていた
胸乳に汗が粒になっているけれど
横顔を涼しげに見せる
洛東、洛北と裾を翻しながら
炎熱にあえぐ街を如意ケ嶽から眺めれば
ちりめんの波がまぶたにそよぐ
天地逆さま、まさかの坂
083 魔女
白妙の袖の別れに
よく熟れたいちじくをちょうだい
あなたの心臓によく似た
露落ちて身に染む色の
カクテルをひとりで飲み干せば
夜の砦から黒猫が慰めに来る
084 祭り
近頃のお祭りは
プロの踊り手を招いたり
神輿もなくただ露店が並んだり
遠巻きにする子どもと年寄り
奇妙なほどきれいな夕焼けが
消えた頃にあたしを組み伏せた
遠い日の笛太鼓の音は
生々しいにおいを立ち昇らせる
085 未遂
ぶっきらぼうなメール
息を殺して回る秒針
恋するには早く
証拠を残すには遅い
勇気がなかったから罪はなく
死体置場には愛だけ
法律のようなブラインドの光
秋の風が騒がしく揺らす
086 胸
夜の夏服
小首傾げた三日月
時間より早く流れる群雲
触られるとくすぐったい
噛まれると甘く痛い
思い出すと切なくて
ボタンをはずす
087 メモ帳
茜色のビスケットの缶
古いメモ帳を見つけた
「海鳥の影がぼくたちの前を横切る」
あなたの下手な字
いつの間に書いたのか
何を伝えたかったのか
「まぶたの裏をかすめる」
昨日の雲を探すようなもの
088 もう二度と
別にそう願っているわけではないけれど
これまで出逢ったほとんどの人とは
もう二度と会うことはない
中にはキスをしたり
もっといろんなことをしたりした人もいるけれど
だからこそ偶然にも会えない
あたしが思う「人生の意味」ってそういうこと
089 燃ゆる山
最近、地震が多かったし
東京にだって温泉はあるし
だからといって代官山が噴火して
渋谷が溶岩流で埋まってしまうなんて
西風に乗って大量の灰が降り注ぎ
秋葉原は雪景色のようにきれい
夜空を赤く染めて吹き上げる炎は
山手線のガードを飴細工に変えていた
090 闇の中
エレヴェータが止まって真っ暗になった
ぶうん・ガシャという音とともに
うつむいてぼんやりしてたからはっきりしないけど
スーツ姿の男の人がいたはずだ
「困りましたね」
少し置きすぎたくらいの間があって
手探りのような声が聞こえた
「困らないですよ」
そう言ってみるのもおもしろかったかな
勾玉の独特の緑、茜色のビスケットの缶がぐっとイメージの中に引き込んでくれます。
闇の中はそりゃあ、真っ黒だったろうな、ていうのが息詰まる感じと共に感じられたし。最後の2行で救われましたがw
「燃ゆる山」はちょっと赤過ぎてまっすぐ見たくない感じでしたw
ぽけっとさんの好みは原色って感じじゃないですよねぇw