゛まあ綺麗゛その初々しさに
目を細め見とれた
あの日の俯いていた少女も
季節の風にあやされて
今は軒下のドライフラーワー
゛春よ゛
゛春よ゛
目覚めの雨垂の音
窮屈であった茶封筒から開放放され
大空を仰ぐ
そよ風に促され
゛私ひなげしです゛
゛私コスモスです゛
金盞花、百日草のそれぞれが
葉緑の自己主張
その間合いを
夏風が蕾を抱かせ
陽は美しい花にと十色を添えてくれたが
今は物憂げな
軒下のドライフラワー
軒から引き寄せ手にすると
カラカラと風に爆ぜ゛
茜の空のビオロンの鐘の音
晩秋の空を駆け巡る
共に育んできた庭の園生
記念にと花束にして置いたが
季は寒々とした生まれ変わりの空白の充電期
ドライフラワーの鄙びた匂いが
心の残りの一年を引きずりながら
鼻先をスーッと抜けて行く