恒川光太郎 雷の季節の終わりに
ただ暑さを避けるために通っている図書館で、偶然見つけた本である。前もっての知識もなければ、申し訳ないが作者も知らなかった。
現世から離れて存在する異世界穏(おん)には、四季の他にもう一つ雷季と言われる季節がある。激しい雷が何日も続き、人々はその間雨戸を締め切り家にこもるのだった。
そんなある年の雷季の夜、幼い賢也はたった一人の身寄りだった姉を何もかに連れ去られた。以来隣の家の老夫婦の庇護を受けながら、一人で暮らしている。
孤独な賢也にとって、少年のような少女穂高と体の大きな少年凌雲はかけがえのない友だった。しかし賢也にはその友さえも知らない、大きな秘密を抱えていた。
それは姉が連れ去れた時だった。風わいわいに憑かれたのだった。
賢也が小学五年生になった夏のことだった。ヒナという若い娘が不可解な失踪を遂げた。ある日賢也はヒナが穂高の兄のナギヒサに殺されたことを知った。おかげでナギヒサに殺されそうになったが、賢也にとりついた風わいわいが出現して助かったのだ。だがナギヒサ深い傷を負わせてしまった。もうじきナギヒサは死ぬだろう。
このままでは賢也はナギヒサ殺しの罪で捕らえ始末されるだろう。もう逃げるしかない。わずかな食料と小刀を持って賢也は穏の地を出た。
途中で追手と戦い、賢也を追って来た穂高と一緒に東京にたどりつくことができたのだが。そこで待ち受けていたのは……。
と物語はこんな感じで続いていくのだ。ファンタジーホラーというジャンルだそうだ。
それにしても暑い。外は体温を越えているようだ。この猛暑の中クールシェアしようと多くの人が図書館を訪れていた。熱心に本を読む人、居眠りをする人。人それぞれであるが誰もが口を閉じて、外の猛暑をやり過ごそうとしているようだ。どことなく家に閉じこもり雷季をやり過ごす穏の人々に似ている。
ちょっと固めのソファーに腰を下ろし、異次元の不思議な物語の世界にしばし身を置いた。だがどうやら私も風わいわいに憑かれたのかしれない。読み終えた本を棚に戻すと、隣にあった恒川氏の本をまた手に取っていのだ。
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