猫の棲む家
二ヶ月ぶりの生家です。出迎えてくれたのは姉と猫のハナコと畑の草。そして隙間風でした。
築九十年以上になる我が家は、当時の百姓家にしては天井が高く窓の多い家です……。 と、ここまで書いた時です。家が微かに揺れはじめました。
地震でしょうか……。おや姉がテレビを見ながら体操をはじめています。あっ、軽くジャンプしました。おお、揺れる……。
昔の家ですから、基礎工事なんてしていません。石の上に柱を乗っけているだけなので、ちょっとのことで揺れます。別に姉が巨大なわけではないのです。
そして当然ですが断熱材なんて入っていません。また一階は部屋を仕切っている襖を外すと、一つの部屋になります。ここで叔父の祝言も父の葬式もしました。
現在ではめったに襖など外すこともありませんので、使うことのない八畳間が四つあります。台所と居間もその並びにあり、ガラスの引戸で仕切っています。
ほとんど引戸で仕切らている家の中で、唯一壁で仕切られているのが洗面所とトイレです。洋トイレと男子用トイレ、洗面所とあり、その三か所にはそれぞれに窓がついています。
さらに台所の西側は姉の家とつながっており、引戸で仕切っています。また台所の片隅には二階に上がる階段があり、二階もまた姉の家の二階と渡り廊下でつながっています。
なんだか迷路みたいな家だと思いませんか。築九十年の家と新築の家が、一ミリの段差もなくつながっているのですよ。
さてこの二つの家を自由に行き来するのが、我が家の飼い猫ハナコです。
ある時は台所の引戸から、またある時は二階の階段からトントンと降りてきます。トイレに置いてある猫のトイレで用を足し、喉が渇くと仏壇の水を飲みに行きます。そして夜になると、姉の部屋の我が家で一番上等の羽毛蒲団の上で寝ます。まるでハナコのために建てられた家みたいです。
ただ問題はそこにあるのです。ハナコのために家じゅうの戸をすべて少し開けておかなければならないのです。
いかがでしたか、猫の棲む家?寒いですよ!