草むしりの「幼年時代」その11
糸水仙
子どもの頃購読していた学習雑誌の付録が、チューリップともう一つ何か分からない球根だったことがあった。その頃は畑には家族が食べる野菜を植え、田んぼでは米を作っていた。だから庭は収穫した米や麦を干すための場所で、花など植える場所でもなかった。
田舎ではまだチューリップの花が珍しい時代だった。母に頼んで畑の隅に植えさせてもらうと、翌年の春に赤いチューリップの花と、黄色い水仙の花が咲いた。
水仙は葉が編み棒のように細くて、花は私の知っている花の中で一番いい香りがした。その水仙が、糸水仙という名前の花だと知ったのはかなり後のことだった。
チューリップはその年限りだったが、糸水仙はそれから次々に増えてった。球根がたった一つだったのにと、母が喜んで庭のあちらこちらに植えかえた。そしてどんどん増えていった。
今でも糸水仙は春になると黄色い可憐な花を咲かせ、どの花よりも一番いい香りをさせている。
◎いつも草むしりブログにご訪問いただきありがとうございます。当ブログは明日より3月12日までお休みいたします。
次回3月13日より、有吉佐和子「悪女について」のあらすじを連載致します。ご期待下さい。
草むしり
糸水仙
子どもの頃購読していた学習雑誌の付録が、チューリップともう一つ何か分からない球根だったことがあった。その頃は畑には家族が食べる野菜を植え、田んぼでは米を作っていた。だから庭は収穫した米や麦を干すための場所で、花など植える場所でもなかった。
田舎ではまだチューリップの花が珍しい時代だった。母に頼んで畑の隅に植えさせてもらうと、翌年の春に赤いチューリップの花と、黄色い水仙の花が咲いた。
水仙は葉が編み棒のように細くて、花は私の知っている花の中で一番いい香りがした。その水仙が、糸水仙という名前の花だと知ったのはかなり後のことだった。
チューリップはその年限りだったが、糸水仙はそれから次々に増えてった。球根がたった一つだったのにと、母が喜んで庭のあちらこちらに植えかえた。そしてどんどん増えていった。
今でも糸水仙は春になると黄色い可憐な花を咲かせ、どの花よりも一番いい香りをさせている。
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