内田英雄文 古事記あらすじ13
第五章 大国主命
㈦根(ね)の堅洲国(かたすくに)へ
大穴牟遅命は須佐乃男命のお住まいになる、根(ね)の堅洲国(かたすくに)にお出かけになりました。堅洲国は死者の国でしたが、今では明るい光がさし、地上の国と変わりがありませんでした。そして大穴牟遅命にとっては大おじいさまになる須佐之男命は、あのおろち退治の頃と少しも変わらず若々しい姿をしておいででした。
須佐之男命はこの国で末娘の須勢理毘売(すせりびめ)と暮らしておりました。大穴牟遅命が兄の八十神(やそがみ)たちから殺され、その度に生き返った強い奴だと仰せになり、大穴牟遅命に会うことにいたしました。
「お前は何をしにきた」と大声でどなる須佐之男命に、大穴牟遅命はひるむことなく「生太刀と生弓矢をいただきにまいりました」と、お答えになりました。
須佐之男命は「与えぬわけではないが、今から言うことをやり遂げなければならい」と仰せになりました。まずは「へびのむろや」で寝てみろと仰せになりました。
㈧へび、はち、むかでのむろや
これにはさすがの大穴牟遅命も困ってしまいました。すると須伊理毘売が「へびの比礼(ひれ)」というへびをよける力のある布を渡しました。
「へびのむろや」の中には何百匹という毒へびが入れられています。戸をあけると、へびどもは今にも飛びかからんばかりの勢いで、命を睨みつけております。命は姫からもらった「へびの比礼」を振ってみました。するとへびどもは、おとなしく寝てしまいました。
翌朝、よく眠ったと背伸びをして出て来た命をみて、須佐之男命は今夜は「はちとむかでのむろや」で寝るように言いつけました。でも、須伊理毘売がこっそり渡してくれた「はちとむかでの比礼」のおかげで、翌朝元気に出ておいでになりました。