ハナコ十五歳
夕方姉が血相を変えてハナコがいないといってきた。ハナコは我が家の飼い猫で、今年で十五になる。長い間外の出入りを自由にしてきたが、三年前猫同士の喧嘩で大怪我をしてから、外に出さないようにしている。
それでも隙を見ては表に飛び出し、そのたびにチュールをもって追い回す。年のせいか若い頃に比べれば動作が緩慢になったものの、隙を見て外に飛び出す速さは昔のままだ。
部屋にいるものだと思い込んでいたので、気がつくかなかったのだ。姿が見えなくなってから三時間以上になる。ハナコはこの頃では姉の猫と言っていいくらいに、姉になついている。
さて、どこに行ったのやら。三時間も姿が見えないなって、何かあったのだろうか。姉が蔵にいないかという。そういえば私は、さっき蔵の中に入っていた。
慌てて漆喰の重たい戸を引くと、ハナコが中から飛び出して来た。姉は自分向かって一直線に走ってくるハナコを、ヒョイとつかまえすぐに家の中に入れた。
実は私、過去に二度ほどハナコを蔵に閉じ込めたことがある。その時も今みたいに飛び出してきた。飛び出して走っていく姿は昔とちっとも変わらなかった。
ハナコ十五歳。まだまだ長生きしてほしい。
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