ペンションのオーナー夫人の饒舌ぶりは、あっけにとられるものだったのである。
チューリンゲン州は、旧東ドイツである。社会主義であった時代、土地は、国のものであった。統一後、元の持ち主に返すということになったが、政治家がからみ、登記簿が、虚偽のものに書き換えられるというような混乱があったことは聞いていたが、このペンションの土地も例外でなく、14年も抗争したという。抗争する間も、着々と彼女は、亭主そっちのけでペンションの改革を進めたようだ。
所在地の小さな村Witteradaでなく、12km先のチューリンゲン州の州都、エアフルトの観光局に属して、宣伝に努め、DLGのチューリンゲン州のメンバーとして、積極的に活動しているらしい。Webページも、なかなか洒落たデザインのものを発信している。http://www.pension-zum-ross.de/freizeit/auf_dem_hof.htm
こちらでフェーリエンボーヌングと言われる滞在型の宿泊施設(コンドミニアム)を3つ作って、きれいで清潔な家具を入れている。それぞれ居間、キッチン、トイレ、シャワーがあって、60平方メートル(一日40ユーロ)。70平方メートル(一日50ユーロ)、80平方メートル(一日55ユーロ)あって、宿泊客の人数に対応できるようベット設備がある。3,5ユーロ追加で、朝食をつけてもらえることもできる。息子さんが、肉屋さんに勤めているそうで、そこから直送の手作りのペーストがとても美味しかった。私たちは、ツインを2つ取ったのだが、1泊一人朝食つきで、20ユーロだった。
彼女のアイデアで面白かったのは、サマーキャンプのように子供を親なしで預かることである。動物に触れさせたり、ビデオを見せたり、いろいろプログラムを考えて受けているようだが、そのために必要な資格習得にも怠りない。おっとりした娘さんといいチームで、ペンション経営を進めていて、飲んだ暮れのダンナは、かやの外らしい。1994年からは、本業としていた農業をやめ宿泊業のみを営んでいることを示す「Landurlaub」の称号を取った。彼女は、やがては、このペンションを娘に譲るもよし、誰かに貸すもよし、自分は、マーケティングに専念したいと壮大な夢を語るのであった。