『アルプススタンドのはしの方』
【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
⠀ 配給:SPOTTED PRODUCTIONS
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:21/94
⠀ ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
⠀ ⠀ ⠀ ⠀ 映像:★★★☆☆
⠀ ⠀ ⠀ ⠀ 音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
高校野球の夏の甲子園一回戦。
観客席のはしっこで試合を見つめる4人の高校生。
とあることがきっかけで「しょうがない」とあきらめている演劇部の
安田あすは(小野莉奈)と田宮ひかる(西本まりん)。
ベンチウォーマーの矢野をバカにする元野球部の藤野富士夫(平井亜門)。
そして、成績優秀なのに友達がおらず、
野球部のエースに想いを寄せる宮下恵(中村守里)。
高校生ながらもこじらせたような背景をもつ彼女らは、
野球の応援を通してそれぞれの想いが交差し思いも寄らない展開になっていく。
【感想】
これ、すごいわ。。。
限られた空間で描かれる人間ドラマが面白すぎる。
舞台がほぼ野球場のアルプススタンドで場面転換が少ないのと、
笑いへの持って行き方がすごく演劇っぽいなとは感じていたんだけど、
これ、元は全国高等学校演劇大会で最優秀賞を受賞した名作戯曲らしい。
設定的に野球映画かなと思うんだけど、
それもまた斬新な切り口で野球応援映画なんだよ。
でも、野球の応援はきっかけでしかなく、
メインは高校生の「しょうがない」という“妥協”や“あきらめ”との向き合い方、
そして継続することの大切さを教えてくれる。
青春映画というより、
人としての生き方を投げかけるようなヒューマンドラマだと思った。
この映画の面白いところは2つあって、
ひとつは人間関係が徐々に明らかになっていく過程と、
もうひとつは冷めていた生徒たちが熱気を帯びていく変化。
この作品は群像劇だけど、この「しょうがない」を初めに言い出したのは、
とあることが原因で演劇の大会に出られなかった安田あすは。
彼女はそのことが原因なのか、しょっぱなからどこか冷めていて、
野球の応援も学校の行事だから仕方なく来ているだけなんだけど、
同じ演劇部の田宮ひかるや元野球部の藤野富士夫との何気ない会話から
彼らの関係性がどんどん明らかになっていく展開が、
謎がひとつひとつ解き明かされていく感覚に似ていて妙にドキドキする。
さらに、その人間関係の根底にあるのが、
部活のいざこざだったり、恋愛関係だったりと高校生らしい理由なのが、
この歳になって観ると懐かしくもある。
で、その冷めていた彼女らが、
だんだん野球の応援に本気になっていく変化も面白い。
その変化が生じた決定的な瞬間ってのは明確にはわかりづらいんだけど、
僕は熱血教師の厚木修平(目次立樹)の存在なんじゃないかと思ってる。
彼はひとり熱くて正直鬱陶しさしかない(笑)
ひたすら「声を出せ」と言い続けて、
最後に「俺は自分の野球魂をここに置きたい!」
と自分が今やれることを精一杯やる姿勢がよかったのか、
みんな応援に本気になっていくから、
彼の存在は何かしらの影響を与えているだろう。
ただ、もともと生徒たちは自分の中にもやもやを抱えていたから、
それを振り切るために大声を出したかったというのもあるとは思うけど。
この映画を観て思ったのは、世の中しょうがないことは多いし、
それをなくすことはできないということ。
演劇の大会に出られなかったこと、
野球部をやめざるを得なかったこと、
想っていた相手が別の人と付き合っていたこと。
過去を変えることができない以上、
それらの事実はもう曲げることはできない。
もちろん、それを覆すために努力をするのは自由だけれど、
それとは別に、自分がやりたいこと、今やれることを愚直に続けることでも、
何らかの道は開かれるんじゃないかというのは、映画を観て考えたりもする。
現に、先生は声を出し続けることで生徒たちの行動を変えたし、
もうひとり、劇中には出てこないけど、野
球部の矢野はベンチウォーマーながらも練習をひたすらこなすことで、
彼は輝かしい未来を手にするのだから。
キャストもすごくよくて、
小野莉奈は『中学聖日記』のときから注目していたけど、
今回もいい演技だったし、
黒木ひかりの美少女感はやばかったし、
目次立樹はだいぶ年上に見えたけど実は大学の同窓生に当たる方だったりして、
ストーリーだけでなくキャストの存在感も光る作品だったと思う。
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