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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

悲運の連鎖と魂の救いだった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(ネタバレあり)

2022年02月28日 00時29分26秒 | 映画

3回目、観ました。
2022年日本公開映画の中で1位、
生涯観た映画の中で3位なのは、
やっぱり変わりません。
もう公式もネタバレしているので、
全部言っちゃおう(笑)

◆すべてのユニバースがひとつに集結する興奮

過去のヴィランが全部出てくるということで、
予告のときから大興奮だったこの映画。
もちろん集まったのはヴィランだけじゃない、、、
なんとスパイダーマンも総出演なのだ!!
役名が同じなので役者名で統一するけど、
トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドが合流!!
これはもう、
2002年のスパイダーマンから全部映画館で観ていた身からしたら、
これ以上ないエモさだった!!
彼らがイエローサークルから出てきたときは、
劇場内で歓声と拍手が沸き起こったからね。
感極まって泣いたよ、3回とも。・゜・(ノД`)・゜・。

◆どのユニバースにも訪れる喪失感

メイおばさん(マリサ・トメイ)を失ったトム・ホランド。
でも、他の2人も同じように大切な人を失くしてるんだよ。
トビー・マグワイアはベンおじさん(クリフ・ロバートソン)を、
アンドリュー・ガーフィールドはグウェン(エマ・ストーン)を。
でも、みんな失ったのは1人だけじゃない。
トビー・マグワイアは親友のハリー(ジェームズ・フランコ)も、
アンドリュー・ガーフィールドだって
ベンおじさん(マーティン・シーン)も亡くしてる。
そして、トム・ホランドは、、、
トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)を。
トニー・スタークは別としても、
他の人たちはみな、
ピーター・パーカーがスパイダーマンになったことがきっかけとなって、
命を落としている。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。
その言葉通り、
自分が大きな力を持ってしまったことが、
大切な人の死に繋がっているから、
これはものすごくやるせない。

◆魂が救われたアンドリュー・ガーフィールド

個人的に、本作で一番感動的だったのは、
MJ(ゼンデイヤ)が高所から落ちるシーン。
トム・ホランドが助けに行こうとするも、
グリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)に邪魔されて叶わず。
でも、咄嗟にその危機を救ったのが
アンドリュー・ガーフィールドだったのよ。
彼は『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)にて、
同じように時計塔から落ちていくグウェンを
ギリギリで救えなかったことをずっとずっと悔やんでいた。
だから、今回MJを助けたときに、
「ああ、彼はこうやってグウェンを助けたかったんだろうな」
って思うと、ここも涙が止まらなくて。
同じ過ちを繰り返さないことで、
ある意味救いにはなったと思うけど、
MJを助けた後のアンドリュー・ガーフィールドの
安堵と後悔が混ざったような表情はとても印象深い。

◆最後の決着のつけ方はトニー・スタークがいたからこそ

今回の騒ぎを終息させるために
トム・ホランドが取った行動。
それは、みんなの記憶から
スパイダーマン=ピーター・パーカーという記憶を消すこと。
みんながそのことを知っているから、
あらゆるユニバースから彼のところに押し寄せてくる。
ならば、その記憶がなくなれば、
危険は去ると考えたわけだ。
大切な親友、恋人、仲間たちから
自分の存在が忘れられることは、
ある意味死んでも記憶に残り続けることより残酷じゃないかな。
でも、トム・ホランドは大切な人たちを救うために、
自ら犠牲になったのだ。
これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で、
自分の命と引き換えに世界を救った
アイアンマンと通ずるところがあるように思う。
むしろ、彼のその自己犠牲の姿を目の当たりにしたからこそ、
トム・ホランドは今回の決断をできたのかもしれないなって思うと、
2人の絆の強さを感じる。
トニー・スタークとピーター・パーカーは、
親子のようでもあり、
兄弟のようでもあったから。

◆そんなわけで

日本でもそろそろデジタル配信が開始されそうな本作。
その前に、ぜひ映画館で観て欲しい。
すべてのユニバースが集結し、
笑いと涙と驚きと興奮とエモさに満ち溢れたこの映画を、、、!



農業から音楽業界へ転向してその名を轟かせた『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』

2022年02月27日 18時25分56秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:9/34
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】
ドキュメンタリー
音楽

【原作・過去作、元になった出来事】
・施設(音楽スタジオ)
 ロックフィールド

【あらすじ】
今から50年以上前。
ウェールズの片田舎で音楽好きの兄弟
キングズリーとチャールズが家業の酪農場を引き継ぐ。

当時、エルヴィス・プレスリーに夢中だった2人は、
農場の仕事の傍ら、
屋根裏に録音機材を持ち込み、
大胆にもレコーディングスタジオを作ってしまう。
当初は友人らと使用する目的だったが、
空き部屋を宿泊施設に改修したことで、
兄弟は無意識に“世界初”の宿泊可能な滞在型音楽スタジオ、
ロックフィールドを設立。

図らずもまたたく間に情報が広がり、
バンドマンが録音したい場所として国際的な注目を集め出し……。

【感想】
洋楽好きにはたまらないドキュメンタリー映画かと。
僕はほとんど聴かないけど、
それでも名前を知ってるぐらいの
大物ミュージシャンたちが勢揃いし、
代表曲のオンパレードだったから。
こういう“才能が集まる場”を提供できるのは、
とても素晴らしいことだと思う。

◆農業からまさかの音楽スタジオへ

ロックフィールド設立者の
ウォード兄弟は農家の家系。
両親は継がせる気満々だったけど、
本人たちにはその気なし。
10代でエルヴィス・プレスリーに影響を受けて、
音楽の道を志すも、
EMIに持ち込んだ歌は採用されず。

それでも、家に録音機材を持ち込めば
何かできるだろうとして始まったのが
ロックフィールドだ。

◆世界初の滞在型音楽スタジオ

当初は遊びのつもりだったけど、
空き部屋を塾初施設に改装し、
機材も本格的なものにすることで、
滞在型の音楽スタジオへと変貌。
業界内は狭いからかはわからないけど、
噂が噂を呼び、
そこを使いたいというアーティストが
後を絶たなかったそう。

『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)
を観たことある人は覚えているだろうか。
同曲を録音するとき、
クイーンのメンバーは田舎のスタジオに籠もっていたと思うけど、
あそこがロックフィールド。

他にも、ブラックサバス、ザ・ストーン・ローゼズ、
オアシス、コールドプレイなど、
今となっては名だたるアーティストが利用した。

◆クリエイティブに最高の場

コールドプレイのクリス・マーティンは、
「音楽のホグワーツ魔法学校」と形容していた。
都会から200km以上離れた田舎。
まわりは牛や豚などの家畜ばかり。
「こんなところで録音できるの?」と。

でも、どこまでも続く緑の平原ではっちゃけ、
イカダに乗って遊び、
ドラッグにまみれながら音楽を作る。
24時間メンバーといっしょだから、
創作やアイディアの流れを止めることなく、
いい意味で囚人になれる。
まあ、同じ場に同じ人とずっといる分、
感情がぶつかり合うこともしばしばあったようだけど。

◆時代の流れには逆らえず

70年代までは次から次へと利用者がいたため、
スタジオも潤い、
運営していたウォード一家もかなり裕福な生活ができたとか。

ただ、80年代になり、
テクノロジーが進化してくると、
コンピューターで音楽が作れるようになり、
スタジオの利用も減り、
家計は苦しくなったようだ。

◆アナログのよさ

それを救ったのがザ・ストーン・ローゼズ。
数週間の契約だったのが、
14ヶ月も滞在したそう(笑)
90年代に入り、
利用者もまた増えはしたものの、
現在ではスタジオと並行して貸別荘も営んでいる。

今はコンピューターひとつで音楽が作れるから、
廃業に追い込まれている音楽スタジオも多い。
レコード会社も毛の生えたての若造に、
高級スタジオを貸して様子を見るなんてこともしない。

でも、昔ここを使ったアーティストを筆頭に、
生でヴァイブスを感じたい人には需要がある。
結果として売れる音楽を生み出すことは大事だけど、
成功するかどうかの前に、
その音楽を作り出す過程も大事にしたいのだ。
「情緒と感情と共に魔法も込めたい」
と言ったアーティストの言葉は共感できる。

◆そんなわけで

基本的には、
アーティストたちのここでの思い出話がメインなので、
彼らを知らない人にはハマりづらいかもしれないけど、
数々の名曲が生まれた
この“偉大なるモノ作りの場”を知れたのはよかった。

 

モヤモヤしながら心のままに突っ走っちゃう予測不能なラブコメ『愛なのに』

2022年02月26日 23時48分47秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:12/33
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
ラブストーリー

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
古本屋の店主・多田(瀬戸康史)は、
昔のバイト仲間、
一花(さとうほなみ)のことが忘れられない。
その古本屋には、
女子高生・岬(河合優実)が通い、
多田に一途に求婚してくる。

一方、亮介(中島歩)と婚約中の一花。
結婚式の準備に追われる彼女は、
亮介とウェディングプランナーの美樹(向里祐香)が
男女の関係になっていることを知らずにいて…。

【感想】
まず、この映画はある企画から生まれた。
それは、城定秀夫監督と今泉力哉監督による
コラボレーション企画「L/R15」。
両者が脚本を提供し、
R15+指定のラブストーリーとなる劇場映画を監督し合うというもの。
本作は「L/R」のうちのLと位置づけられている。

この映画は、男女の関係性について
何かが解決したり完結したりする話じゃないと思うんだよね。
出てくる登場人物の関わり合いについて、
「わかるぅ」と思ったり「わっかんねぇな」と思ったり、
あーだこーだ語り合う余白のある内容な気がしてる。

◆身近で起こる男女のもつれ合いに興味津々

あまりにも近いところでいろいろ起こりすぎて、
かつてのトレンディドラマを思い出しちゃうのが
この映画の特徴かな。
古本屋の店主である多田に求婚しまくる女子高生・岬。
交際をすっ飛ばして求婚ってところがぶっ飛んでるけど。

でも、多田はかつて好きだった一花のことを引きずっていて、
岬の気持ちに応えられず。
そもそも、15個も歳が離れているし。
正常な大人なら一歩立ち止まるのが普通かと。
とはいえ、完全に突き放さないところに、
彼の優しさと同時に、
若干の下心もあるんじゃないかって気もする(笑)

多田が想いを残す一花は、
亮介との結婚を控えているけど、
彼の浮気をきっかけにまさかすぎる行動へ。
しかも、亮介の浮気相手である美樹が、
2人の式を取り持つウェディングプランナーっていうね。
美樹はどんな気持ちで、
普段2人の式の相談に乗っているんだろうか。
すべてをビジネスライクに捉えていそうなので、
ある意味一番信頼できるとも言えるけど(笑)
こうやって、普通ならモラルとしてありえない状況が
平然と行われている様は、
それだけで魅力的な物語になっているなと感じた。

◆肉体的充足と精神的充足のせめぎ合い

一花は亮介の浮気を知って、
「自分も同じことをする」と宣言。
その相手に選んだのが、多田。
これまで、多田のエピソードと一花のエピソードは
並行して進んでいたのだけど、
ここでクロスするんだよ。
まあ、当てつけセックスをしてやろうってことなんだけど、
多田からしたら複雑な気持ちだよね。
そりゃ男として、
かつて想いを寄せていた女性と寝られるんなら、
それはそれでうれしい気持ちもありつつ、
後腐れないどうでもいい相手として選ばれたっていうことは、
彼女が自分のことを大して重要視してなかったということ。
これは悲しいよ。
自分の存在を全否定された気持ちになるじゃんか。

ただ、この出来事がきっかけで、
ものすごい変化が起こってしまうのが面白い。
多田と一花だけでなく、
岬との向き合い方も変わる。
肉体的な結びつきと、
精神的な結びつき、
両方について考えさせられる。
ここはぜひ劇場で確かめて欲しいところ。

個人的には、
結局一番おいしいのは多田じゃんって思うんだけどね。
身も心もおいしくいただきやがって!って(笑)

◆そんなわけで

真面目で大人なラブストーリーを主軸に、
ちょいちょいクスッと笑える要素を含んだ本作。
男女で感想も異なりそうだし、
誰の視点で捉えるかによっても正義が変わりそう。
タイトル通り、
「愛とは何なのか」
ってことを考えるきっかけになるかも。
とりあえず、"身体的コミュニケーション"のうまさは、
人生を変えうるってことだけはわかった(笑)


韓国版『スピード』だった『ハード・ヒット 発信制限』

2022年02月25日 23時48分22秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:16/32
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
スリラー
アクション

【原作・過去作、元になった出来事】
・映画
 『暴走車 ランナウェイ・カー』(2015)

【あらすじ】
銀行支店長として働くソンギュ(チョ・ウジン)は、
毎朝車で子どもたちを学校へ送り届けそのまま職場へと向かう。
それはいつもと変わらない、
当たり前の日常のはずだった。

しかし、1本の電話が彼の運命を一変させる。
運転中にかかってきたそれは
「発信番号表示制限電話(非通知電話)」。
声の主がソンギュに告げる。
「車から降りれば、仕掛けた爆弾が爆発するだろう」と。
タチの悪いイタズラだと電話を切ろうとするソンギュ。
そのとき、目の前で同僚の車が大爆発を起こす。

警察に助けを求めることも、
そして車を降りることも許されない絶体絶命の状況の中、
ソンギュの日常は制御不能の悪夢へと塗り替えられてゆくのだが…。

【感想】
本作は2015年のスペイン映画
『暴走車 ランナウェイ・カー』の韓国版リメイク。
オリジナル版も観たかったんだけど、
どこの配信サービスにもなく、
近くのTSUTAYAにもレンタルがないので、
泣く泣く断念。
ちなみに、リーアム・ニーソン主演でも
リメイク作品が制作中のよう。

◆既視感ある設定に某映画を思い出す

何者かによって爆弾が仕掛けられた自車に乗ったソンギュ。
車から降りたり、
犯人の言う通りにしないと爆発すると。
あれ、どこかで見たような設定。
そう、『スピード』(1994)ですね。
若き日のキアヌ・リーヴスと
サンドラ・ブロックが出ていた名作。
あれは、時速80kmを下回ると爆発するという設定だったけど、
本作では速度の規定はない。
その代わり、今回の爆弾は重さを感知するようで。
一度作動した後は、
一定の重量をかけ続けないと爆発してしまう。
なので、降りたら即アウト。

◆ハリウッドに負けないカーアクションはさすが

その緊張と不安にまみれた設定を、
スピード感溢れるスリリングな展開に仕上げているのが、
韓国映画のいいところ。
韓国も国土が広いわけじゃないから、
日本のように都市部は狭い上に交通量が多い。
そんな中でおかまいなしに車を爆走させて、
ハリウッド並みのカーアクションを披露してるのはさすが。
その映像だけで、
見映えがメチャクチャよくなるよ。

ド派手なアクションの中で、
爆弾に対する恐怖、
すぐに金を集めなければならない焦り、
同乗している子供たちへの心配、
真実を知ったときの後悔など、
あらゆる負の感情が押し寄せてくるのがこの映画の見どころかと。

◆ラストは好みが分かれそう

全体的にスリルと興奮を味わえる内容ではあるけど、
ラストが近づくにつれ、
個人的にはちょっと「あれ?」と思い始めて(笑)
犯人を捕まえてチャンチャン的な終わりを期待したんだけど、
今回の事件の発端はソンギュの過去の過ち。
そこに気づいてから、
ヒューマンドラマというか、
家族を想うハートウォーミングな雰囲気が出てきて。
感動的な要素ではあるものの、
これまでのスリルと興奮が一気に冷めてしまった。
作品のベクトルの向く方に、
自分の気持ちは向かなかったんだよね。

◆そんなわけで

設定は面白かったし、
アクションもすごかったけど、
ラストがうまく噛み切れなかった、
そんな印象の映画だったかな。

そういえば、
最初に「外部に連絡したら爆発させる」
と犯人は言ってたけど、
ソンギュは事前確認なしに外部に電話してたから、
あれはよかったんだろうかって思った。
まあ、連絡しないと金も用意できないんだけど(笑)

 

マフィアというより経済感覚に秀でたビジネスマンだったマイヤー・ランスキーの半生を描いた『ギャング・オブ・アメリカ』

2022年02月24日 22時09分21秒 | 映画


【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:17/31
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
伝記映画
犯罪映画
サスペンス
マフィア

【原作・過去作、元になった出来事】
・人物(マフィア)
 マイヤー・ランスキー(1902-1983)

【あらすじ】
1981年、マイアミ。
作家のデヴィッド・ストーン(サム・ワーシントン)は、
伝説的マフィアである
マイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル)の伝記を書くことになる。
出された条件は、
「俺が生きているうちは、誰にも読ませるな」
ということ。

インタビューが始まり、
ランスキーは自らの人生を赤裸々に語り出す。
それは、半世紀以上におよぶ、
ギャングたちの壮絶な抗争の記録だった。
貧しい幼少時代、
ラッキー・ルチアーノと出会い、
やがて殺し屋集団《マーダー・インク》を組織し、
ついにはアル・カポネやフランク・コステロと
肩を並べる存在まで上りつめ、
巨万の富を築いたランスキー。

インタビューが終わりに近づいた頃、
ストーンはFBIが3億ドルともいわれる
ランスキーの巨額資産を捜査していることに気づく。
捜査協力を強いられたストーンは、
ある“決断”を下すことになるが……。

【感想】
実在したマフィア、
マイヤー・ランスキーの半生を描いた伝記映画。
初めて知った人物だけど、
マフィアの中では有名だそう。

◆マフィアというよりビジネスマン

マフィアと聞いてどんな人物を想像するだろうか。
ドラッグを売りさばき、
ドンパチやって、
人を殺すことに何の躊躇もない。
僕はそんなところだけど(笑)

マイヤー・ランスキーもマフィアなので、
作中では直接手を下しはしないものの、
怖い面はあった。
でも、実際の彼は身長160cm前後と小柄だったようで、
腕っぷしで勝負するタイプではなく、
完全に頭脳派。
とにかく数字に強く、
経済感覚に秀でており、
いかに利益を上げるかをよく考えていた。
映画では触れられていないけど、
少年時代に満足な教育を受けられなかったことに
コンプレックスがあったらしく、
生涯読書家だったそう。

そんな彼は、
カジノ経営で成功していた。
その手腕を見込まれ、
キューバでもカジノ建設に携わり、
莫大な売上を生んだとのこと。

また、それまでは金を貸した相手に返済能力がなくなったら、
ゴロツキを派遣して殺しちゃうのが常だった。
でも、それだと結局貸した金は戻ってこないまま。
そこでランスキーは、
ゴロツキの代わりに会計士を派遣し、
数字を学ばせて利益を出す方法を教えた。
こっちの方がはるかに回収しやすい。
マフィアではあるけど、
やってることはまさに財務専門のビジネスマンといったところだ。

◆黒でも白でもなくグレーな世の中

足はつかないようにしているけど、
彼もれっきとした犯罪者ではある。
そこは完全に黒だ。
でも、彼の起こした賭博産業は
年間2,500億ドルも売り上げ、
200万人の雇用を生んだ。
この経済効果だけを見れば、
白と言えなくもない。
まあ賭博なんでね、
それだけ人生を破綻させている人を増やしていることにはなるけど。

さらに、彼は夫でもあり父でもあった。
仕事ばかりしていて、
妻からは愛想を尽かされていたけど、
長男からは尊敬されていた。

ただのマフィアといっても、
彼の事業や実績、
家族との関わりを考えると、
確かに白黒はっきりつけ難いのもわかる。
本人も言っていたけど、
「この世は黒でも白でもなく、グレーの濃淡で決まる」
というのは、なんと説得力の強いことか。

◆残された謎

そんなランスキーなので、
3億ドルの資産があるという噂もあった。
ところが、現在に至るまでそんな資産は見つかっていない。
映画では描かれていないけど、
むしろお金には困っていたようなのだ。
身体に障害のあった長男の養護施設の医療費すら支払いがままならず、
安いところに移ったものの、
結局そこも追い出され、
長男は貧窮のうちに亡くなったとか。

◆そんなわけで

マフィア映画ではあるけど、
実際にはビジネス映画の要素もあって、
個人的には楽しめた。
ちなみに、ランスキーの孫が
「マフィアグッズ専門店 Japan Meyer Lansky」を展開している。
ホンマかいなって気もするけど(笑)
https://mafiagoods.official.ec/


父親の狂気が世界チャンピオンを2人も生んだ『ドリームプラン』

2022年02月23日 18時17分33秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:10/30
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】
伝記映画
ヒューマンドラマ
スポーツ
テニス

【原作・過去作、元になった出来事】
・人物(ビーナス、セレーナ姉妹の父親)
 リチャード・ウィリアムズ(1942-)

【あらすじ】
2人の娘を世界最強のテニスプレイヤーに育てる夢を持つ父親リチャード(ウィル・スミス)。
テニス未経験の彼は、
娘たちが生まれる前から
「常識破りの計画=ドリームプラン」
を独学で作成。
その無謀なプランと娘たちの可能性を信じ続けた父は、
どうやって2人の世界チャンピオンを誕生させたのか?

【感想】
女性テニス界に革命を起こした
ビーナス・ウィリアムズとセレーナ・ウィリアムズ。
本作はそんな彼女たちを育て上げた
実の父親の伝記的な映画である。

◆己の道を盲信して猛進する父親

この映画、とにかく父親の狂気とも言える子育て手法がすごい。
『二月の勝者』という漫画で、
「中学受験は母親の狂気と、父親の経済力」
なんて言葉があったけど、
これに関しては「父親の狂気」そのもの。
母親もそれに近しい雰囲気はあったんだけど、
父親が突出してたね。

バージニア・ルジッチという選手が
4日間で4万ドル稼いだのを見た彼は、
生まれてくる2人の娘をプロテニス選手にしようと決意。
そこから、その道のりを78ページのプランにまとめ上げたんだけど、
愚直にその通りに進めていくのよ。

夜間警備の仕事をしつつ、
娘たちには雨の日でも構わず練習させ、
自分は無料でコーチをしてくれる人を探す日々。
実績もコネも金もないのに、
自分のプランに絶対的な自身を持ち、
「将来ビッグになって大金を稼ぐからタダで教えて」
という営業トーク。
ほとんどの人から門前払いに。

◆参考にしたい父親のスタンス

そんなぶっ飛んだリチャードだけど、
いくつか印象に残った部分を記しておきたい。

①執念の営業

もうこれが一番かな。
有名なコーチのアタックリストを作成し、
断られても断られても次々に営業をかけていく。
直接プロテニス選手の練習場にも赴き、
強引に娘たちのプレーを見させて、
ようやくコーチを引き受けてくれる人を見つける。
執念の賜物だと思った。
まあでも、娘たちに実力があったから成立するんだけど。
プロを教えるコーチをうならせるだけの実力あってこそ。

②洗脳かってぐらいのイメトレ

これも大事だなと思ったんだけど、
娘たちには常に夢や目標を口にさせるし、
ポジティブな言葉を投げかける。
「グランドスラムで優勝する」とか。
「おまえに勝てるやつはいない」とか。
ずっとそんな調子だからか、
本当に娘たちはいつも自身に満ち溢れている。
インタビューアーに
「目指しているプロテニス選手は?」
と聞かれても「私です」と。

③教えるのはテニスだけじゃない

テニスの練習が基本ではあるけど、
優先するべきは学業。
ゆーても子供だからね、
他のプロテニス選手のように、
子供のときからテニス漬けにはしなかった。
外国語も習わせ、
メディア対応の練習も行う。

中でも一番印象的だったのは、
「自慢はするな」と。
ジュニア大会で優勝して喜んだのも束の間、
テニスが終わったらもうその話はおしまい。
決して自慢に聞こえるようなことは言わず、
謙虚であれと。
人としてバランス感覚を持たせようとするのはよかった。

◆逆に参考にしたくない部分(笑)

とはいえ、あまりにも自分のプランにこだわりすぎる余り、
他の人の意見を一切聞かない頑固さも併せ持つ。
育成はコーチに一任するも、
必ず口を挟むし、
試合に出たがる娘の意向も無視。
そのことで、コーチや妻と軋轢を生むこともしばしば。
もう少し柔軟性があってもいいのではとも感じる。
見方によっては、
完全に親の敷いたレールの上を歩んでいた娘たちだけど、
本人たちも嫌がることなく世界的な選手になったので、
結果オーライではあるけども。

ただ、この映画、
ドリームプランの内容はわからないままなんだよ(笑)
てっきり、何歳までに何をどうやるのか
ってことが明かされると思ったんだけど。
テニス未経験なのに、
どんなプランを作ったのかは知りたかった。

◆そんなわけで

姉妹で世界的な女子テニス選手になった
ビーナス・ウィリアムズとセレーナ・ウィリアムズ。
その2人がどういう育ち方をしたのかが知れるという意味で、
とても面白い映画でした。

 

子供のときと大人になってから、2度は観たい『スタンド・バイ・ミー』

2022年02月23日 15時31分20秒 | 映画

【個人的な評価】
「午前十時の映画祭11」で面白かった順位:11/25
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★

【ジャンル】
ヒューマンドラマ
青春映画
ジュブナイル映画

【元になった出来事や原作・過去作など】
・小説
 スティーヴン・キング『The Body』

【あらすじ】
作家のゴードン(リチャード・ドレイファス)は、
ある日「弁護士クリストファー・チェンバーズ刺殺される」
という新聞記事に目をとめ、
ふと少年時代を思い出す―。

1959年の夏、オレゴン州の小さな町。
小学校を卒業した12才のクリス(リヴァー・フェニックス)、
ゴーディ(ウィル・ウィートン)、
テディ(コリー・フェルドマン)、
バーン(ジェリー・オコンネル)という4人の仲間たちは、
行方不明になっていた少年が
30キロ先の森の奥で列車に轢かれ、
野ざらしになっていると聞きつける。

4人は線路伝いに死体探しの旅に出かけるが―。

【感想】
「午前十時の映画祭11」にて。
1986年のアメリカ映画。

青春映画の金字塔。
最近はあまり見かけないけど、
昔は子供たちがメインの映画って
ちょいちょいあったよね。

◆大人になってから“わかる”

僕がこの映画を初めて観たのは高校生のとき。
原作本が夏休みの英語の課題図書だったので、
そのときにビデオを借りて観た以来かな。
当時はそんなにハマらなかった記憶がある。
だって、子供たちの一夏の大冒険ってスタイルではあるけど、
死体探しだからね(笑)

ただ、大人になってから観ると、
より伝わってくるものがある。
面白さというか、ノスタルジーの面が強いけど。
「子供のとき、大人抜きで友達同士だけで遊びに行く」
ということが、どれだけ楽しかったか。
しかも、この4人の男の子たちは、
家庭環境がいいとは言えず、
居場所が友達以外になかったから、
余計にそう感じたと思う。

子供たちだけでのちょっとした遠出。
死体探しというタブーに足を踏み入れる好奇心。
そして、いつもいじめられてばかりだった
町のチンピラを出し抜く爽快感。
どれを取っても、
毛の生えそろってないような年頃の男の子からしたら、
心踊る体験だろう。

死体を見つけて町に戻った後、
「町が小さく見えた」というのは、
ものすごい成長だと感じる。

◆大人だったら絶対噛み合わない4人

ガキ大将のクリス。
知的なゴーディ。
サイコパスなテディ。
ビビりでおっとりしたバーン。

子供がメインの映画なら、
よくありそうな設定ではあるけど、
子供だから4人での行動ができたんだと思う。
ちょっとハメを外したいけど、
一人で何かするには幼すぎる年齢。
だから、みんなでいるしかない。
これが大人だったら、
特殊な環境にでもいない限り、
みんな個別行動してしまっていたかと。

でも、4人それぞれ、
心の内に抱えているものがある。
子供ながらに、
いや、子供だからこそ持つ悩み。

クリスは頭がいいのに、
家庭環境が悪いせいで、
まわりから冷ややかな目で見られている。
そして、本人は自分の置かれている状況を
客観視できてるのがすごいところ。
ゴーディに対して、
「お前は俺らみたいなのといっしょにいると腐っちゃうから、
 中学に上がったらまともな連中と付き合うべきだ」
と、友達の未来を案ずる優しさも持つ。

ゴーディはいつも兄と比べられ、
両親からの愛をあまり受け取れていない。
ガリ勉っぽく見えつつも、
ラストでチンピラに銃を向ける度胸もある。

テディはサイコパスっぽく、
命を軽んじる言動が見受けられるけど、
クズな父親を愛し、
父のことをバカにされると激ギレする一面も。

バーンは、、、一番裏表のない人物かな(笑)

◆そんなわけで

子供のとき、
自分と同じぐらいの登場人物の冒険譚に何を感じるのか。
そして、大人になってから、
昔を思い出して何を感じるのか。
ラストで「12歳のときのような友達はもうできない」
と締めくくったゴーディの言葉に感慨深さを感じる。
まさに、子供と大人の2回観ることをオススメできる作品。

また、当時ティーンだったリヴァー・フェニックスや
キーファー・サザーランドの姿を拝めるのも注目ポイント。

そういえば、
『デジモンアドベンチャー02』のラストって、
絶対これのオマージュだよね(笑)

 

笑い、悲しみ、驚き、興奮、すべての感情が揺さぶられる歴史に残る最高傑作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(ネタバレあり)

2022年02月22日 21時03分40秒 | 映画

【個人的な評価】
2019年日本公開映画で面白かった順位:1/220👑
生涯で観た映画の中で面白かった順位:1/2002👑
   ストーリー:★×3000
  キャラクター:★×3000
      映像:★×3000
      音楽:★×3000
映画館で観るべき:★×3000

【ジャンル】
スーパーヒーロー
マーベル
アベンジャーズ
アクション

【原作・過去作、元になった出来事】
・漫画
 『アベンジャーズ』(1963)
 
・映画
 マーベル・シネマティック・ユニバース(2008-)

【あらすじ】
最凶最悪の敵“サノス”(ジョシュ・ブローリン)によって、
人類の半分が消し去られ、
最強チーム“アベンジャーズ”も崩壊してしまった。
果たして、失われた35億の人々と仲間を取り戻す方法はあるのか?

大逆転の確率は、1,400万605分の1…。
わずかな希望を信じて再び集結した
アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)、
キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、
ソー(クリス・ヘムズワース)たちに残されたのは、
最強の絆だけ──。
“今はここにいない”仲間のために、
最後にして最大の逆襲が始まる!

【感想】
旧作だけど、
再度鑑賞したので、
備忘録として。

マーベル・シネマティック・ユニバース第22作目。
『アベンジャーズ』シリーズ第4作目。
MCUに一区切りつけるにふさわしい有終の美すぎる作品。
再度、『アイアンマン』(2008)から観直して、
ついにここまで来ました。

◆歴史に残るアベンジ映画

公開当時、
映画館で6回観るぐらいドハマリした作品。
それまで『ターミネーター2』(1991)が
自分の中で一番好きな映画だったけど、
見事に塗り替えられた。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で
圧倒的な敗北を観客に見せつけて、
壮絶な絶望感を味わわせた上でのアベンジ。
これが公開するまでの1年間が本当に苦しかった。
アベンジャーズはあの絶望からどうやって立ち直るのか、そ
れだけが気がかりで仕方なかったから。
そして、蓋を開けてびっくり。
あの規模感でキャラクターを勢ぞろいさせた
壮大な前作をはるかに凌ぐ面白さだったのだ。

◆ジェットコースターのようなストーリー展開

本作の見どころは、
複数の感情が非常に高いレベルで刺激されるところにある。
タイムトラベルという、
オーソドックスだけど、
まさかここで使うかという設定。
先がどうなるかわからない中、
笑って、泣いて、驚いて、興奮して。
3時間という尺にも関わらず、
まったくその長さを感じさせない、
ジェットコースターのような展開だ。

『インフィニティ・ウォー』では、
勝つか負けるかの瀬戸際で、
「これは勝ったんじゃないか、、、?」
と期待させた上での敗北という、
その振れ幅の大きさに余計にショックを受けた。
しかし、今回はその逆。
世界を元に戻す希望が見えつつも、
結局、サノスたちの圧倒的優位による再び沸き起こる絶望感。
でも、そこからの大逆転っていう構成に、
より一層強い興奮と感動が味わえる。

◆圧倒的キャラクター数なのに全員に見せ場を作るすごさ

あれだけのキャラクターを登場させて、
それぞれに見せ場を作るのもすごい。
『インフィニティ・ウォー』と併せて、
すべてのキャラクターのよさを伝える要素を引き出している。

個人的には、
アイアンマンとキャプテン・アメリカが甲乙つけがたいほど、
両者共によかった。
終盤、アベンジャーズ側は
キャップとアイアンマン、
ソーしか戦える人がおらず、
絶体絶命のピンチ。
でも、キャップは半壊したシールドを手にして、
ベルトをキュッと締めて、
最後まで戦う姿勢を崩さなかった。
この絶望的な状況の中でも
決してあきらめることをしない彼の勇敢さは、
最初からずっと持ち合わせているもので、
それを貫き通していることに感銘を受ける。

アイアンマンに関してはもう。。。
過去で自分の父親と対面したシーンも感動だったけど、
やっぱりクライマックスでのアレでしょう。
歴史に残る名セリフと偉大な死。
終わった後の喪失感が凄まじかった。

◆そんなわけで

過去のMCU21作品すべてを観ないと、
この映画の真価は実感できないと思う。
それでも、時間をかけて過去作をすべて観てから、
この映画に臨むだけの価値はある。

ありがとう、マーベル。
ありがとう、アベンジャーズ。
ありがとう、スタン・リー。
3000回、愛してる。


トムホのスパイディ感満載だった令和のインディ・ジョーンズ!『アンチャーテッド』

2022年02月21日 20時46分03秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:14/29
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★★★
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】
アドベンチャー
アクション

【原作・過去作、元になった出来事】
・ゲーム
 『アンチャーテッド』シリーズ(2007-)

【あらすじ】
ネイサン・ドレイク(通称:ネイト)(トム・ホランド)は、
海洋冒険家フランシス・ドレイクの末裔。
幼い頃、唯一の肉親である兄のサム(ルディ・パンコウ)と生き別れ、
今はNYでバーテンダーとして働いている。

ボトルを扱うその器用な手さばき、
そして類まれなるスリの能力を見込まれ、
トレジャーハンターのサリー(マーク・ウォルバーグ)から
50億ドルの財宝をいっしょに探さないかとスカウトされる。
信用の置けないサリーだが、
消息を絶ったサムのことを知っていたことから、
ネイトはトレジャーハンターになることを決意する。

早速、ネイトとサリーはオークションに出品される
ゴールドの十字架を手に入れるため、会場に。
この十字架は財宝に辿り着くための重要な“鍵”で、
モンカーダ(アントニオ・バンデラス)率いる組織も狙っていた。

オークション会場での争奪戦の末、
なんとか十字架を手に入れたネイトとサリーは、
500年前に消えたとされる幻の海賊船に誰よりも早く辿り着く。
しかし、その海賊船ごと吊り上げられてしまい、
絶体絶命のピンチに!

アメリカ、ヨーロッパ、アジア、世界中を駆け巡り、
果たして2人は50億ドルの財宝を手に入れることができるのか?
そして、ネイトは兄サムと再会できるのか?

【感想】
原作ゲームは未プレイだけど、
かつての『インディ・ジョーンズ』を思わせる
ザ・冒険映画って感じで、
個人的には楽しめた。
ゲームのような設定(もともとゲームだけどw)を
ガチで映画化しちゃうのは、
ハリウッドの好きなところ。
また、冒頭の"プレイステーション"のロゴがエモいので注目。

◆謎解き少なめアクション多めのお宝発見エンターテインメント

古くからハリウッド映画では、
こういう未知なる財宝を求めて冒険する映画はよくある。
『‌インディ・ジョーンズ』シリーズが最も有名かな。
他にも、『ハムナプトラ』シリーズや
『トゥーム・レイダー』シリーズなどがあって、
どれかひとつは観たことある人も多いかと。
設定はどれも同じで、
敵対勢力と競りながら、
謎解きをしつつ、
古代の秘宝を手にすることが目的。

今回もまさにそれで、
ストーリーや世界観的な部分での差は特にない。
ただ、主演がMCU版『スパイダーマン』シリーズで
絶大な人気を誇るトム・ホランドってのが大きい。
ストーリー的に何度も焼き直されている中で、
旬すぎる俳優を起用して、
むしろそれしか差別化ポイントがないってのは、
最近のハリウッド映画ではめずらしい気もする。

テンポよく進む流れと、
邦画じゃ観られないようなアクションの数々は、
観ていてやっぱり楽しかった。
本格的なセットやVFX技術は、
潤沢な予算あってこそだとは思うけど(笑)

一方で、この手のジャンルで
必ずと言っていいほど出てくる謎解き(暗号やら仕掛けやら)は、
だいぶ都合よくクリアしてる印象。
大した苦労もなくトリックに気づき、
パパっと謎を解いてしまう流れ。
まあ、ゲームなら謎解きで
ユーザーが頭を悩ますことで達成感があると思うけど、
映画だとね、
サスペンスやミステリーでもない限りは、
そこに尺を割いても仕方ないかも(笑)

◆主人公のネイトはもはやピーター・パーカー

演じているのがトム・ホランドで、
しかも『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公開から
まだ1ヵ月ちょいしか経ってないこともあり、
本作の主人公ネイトは、
ピーター・パーカーにしか見えなかった(笑)
キャラにもあまり差がないんだよ。
好奇心旺盛でおっちょこちょいなところとか。

アクションシーンなんか、
糸が出ないスパイダーマンでしかないから、
結局、スパイダーマンの延長っていう印象が強かったかな。
個人的には、それはそれで全然アリなんだけど、
人によっては新鮮味がないと感じるかもしれない。

◆そんなわけで

アクション・アドベンチャーの魅力満載なので、
『インディ・ジョーンズ』や『トゥーム・レイダー』が
好きな人は楽しめると思う!
続編を匂わせる終わり方も気になるし。
それにしても、パンフレットの制作がないのはもったいない。


『もののけ姫』の要素が強かった『鹿の王 ユナと約束の旅』

2022年02月18日 21時01分05秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:23/28
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

【ジャンル】
アニメ
アクション
ファンタジー

【原作・過去作、元になった出来事】
上橋菜穂子『鹿の王』(2014-2019)

【あらすじ】
かつて、ツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国に侵攻した。
しかし、突如発生した謎の病・黒狼熱(ミッツァル)によって、
帝国軍は撤退を余儀なくされる。

以降、二国は緩やかな併合関係を保っていた。
ところが、アカファ王国はウィルスを身体に宿す山犬を使って、
ミッツァルを再び大量発生させることで反乱を企てていたのだ。

ミッツァルが国中で猛威を振るう中、
山犬の襲撃を生き延びたヴァンは、
身寄りのない少女ユナと旅に出る。
ただ、その身に病への抗体を持つ者として、
治療薬開発を阻止したいアカファ王国が放った
暗殺者サエから命を狙われることに。

一方、治療薬を作るため、
ヴァンの血を求める医師のホッサルも
懸命にヴァンを探していた―― 。

様々な思惑と陰謀が交錯したとき、
運命が動き始める。

【感想】
原作を読まずに行ったのだけど、、、
これは原作読んでからの方がいいかもしれない。
つまらなくはないのだけど、
いろいろ設定の理解に体力使う(笑)

◆『もののけ姫』かなと感じる画

原作の世界観はわからないけれど、
映画として観ると、
非常に『もののけ姫』(1997)に似た印象を受ける。
山や森といった自然が大部分を占める風景。
ヴァンが捕まっていた地下壕は、
タタラ場のような雰囲気もある。
山犬はモロたちを思わせるけど、
その登場の仕方はタタリ神のよう。
飛鹿(ピュイカ)はどう見てもヤックル。
さらに、特殊な力を得たヴァンと、
呪いにかかったアシタカのかぶり度合い。

これ、アシタカの30年後の物語といっても、
あんまり違和感ない気がした(笑)

◆映画だけで理解するには多い情報量

ミッツァルという不治の病。
その抗体を持つヴァン。
ホッサルはヴァンの血は使ってミッツァルを治したい。
でも、ミッツァルがなくなることで困るアカファ王国。
それぞれの思惑が交錯するところが、
この物語の面白いところ、、、なんだと思う。

とりあえず、ヴァンの血を求めて、
いろんな人たちが近寄ってくるって思っとけば大丈夫。
だけど、いろいろわかりづらいところがある。
ホッサルってどういう立場なんだっけとか、
ヴァンが所属していた独角って何する集団なんだっけとか。
前提となる設定がわからないと、
そこの理解に意識が行っちゃって、
あんまり物語に集中できなかった。
だから、原作小説を読んでおいた方が
わかりやすいよなあとは思った。

◆そんなわけで

アニメってだけで、
ある程度の面白さはあるし、
ファンタジーの世界観が好きなら
そこそこ楽しめるとは思う。
ただ、観終わった後のすっきりしない感は、
初見の人は特に強いかもしれない。

あと、キャストの演技はよかったけど、
メイン3人の堤真一、竹内涼真、杏は、
キャラクターというより、
まんま彼らだなって感じがした(笑)

 

メイン3人の圧倒的な演技力とタイトルに込められた意味に驚かされる『さがす』

2022年02月14日 19時48分52秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:10/27
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】
サスペンス
ヒューマンドラマ
犯罪映画

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
大阪の下町で平穏に暮らす
原田智(佐藤二朗)と中学生の娘・楓(伊東蒼)。

「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。
 捕まえたら300万もらえるで」。

いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。
しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。

ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、
父をさがし始めるが、
警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。
それでも必死に手掛かりを求めていくと、
日雇い現場に父の名前があることを知る。

「お父ちゃん!」

だが、その声に振り向いたのは
まったく知らない若い男だった。

失意に打ちひしがれる中、
無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。
そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。

【感想】
これはまたインパクト大の映画。
重く暗い雰囲気のサスペンスではあるんだけど、
予想だにしない展開に引き込まれるので、
事前情報を入れずに観るのがよいと思う!

◆ストーリーが進むほどタイトルの意味にハッとする

この映画、いろいろ思うところが多い作品なんだよね。
あまり書くとネタバレになってしまうので難しいけれど(笑)

突如行方不明になった父親を"さがす"娘。
それは、この映画の"ひとつの顔"でしかない。
観ていくとわかるけど、
"さがす"にはいくつかの意味が込められている。
さらに、現実問題として頭を抱えそうな事柄を扱っていて、
胸の奥をえぐられるような気持になり、
それだけでものめり込める要素足りえていると思う。

それは、父の失踪の真相と繋がるんだけど、
本当に心苦しい内容でね。。。
もうぜひその目で確かめて欲しいわ。
悲しくて苦しくて愛しい彼の隠された真実を。

◆"死こそ救済"という考えの奥深さ

『FF』というゲーム、
僕は大好きなんだけど、
そこに出てくる敵キャラって、
シリーズを通して死や破壊を"救済"と捉えてることが割とある。
特に『X』はその傾向が強いかな。
苦しみながら生きるよりは、
死んで楽になった方がいい。
そんな考えが、
この映画においても狂気を生む発端となっている。

指名手配されていた山内照巳(清水尋也)は、
連続殺人犯ではあるものの、
彼なりの主張としては、
この世界の死にたがっている人に救いを与えていただけという。

これは現実問題として、
単に「頭がおかしい」と一蹴できるものではないと、
個人的には思う。
生きる権利があるなら、
同時に死ぬ権利を認めてもいいのではなかろうかって思うこと、
これまでの人生の中でゼロじゃなかったので。
方法はともかく、
死ぬことで救われる人もいるかもしれないのに。
まあ、実際にそれを認めてしまうことによる
社会的・倫理的な問題があることは、
もちろん承知の上だけど。
観る人によって、いろんな意見が出そう。

ただ、彼は人を殺しながらも、
実は自分が一番死にたかったんじゃないかなって気がした。
終盤のクライマックスで、
そう感じる部分があったから。

ひとつ気になるのは、
彼がなぜそのような思想に至ったかということ。
そこは語られていないので、
ぜひ知りたいところではある。

◆メインキャストの壮絶な演技に注目

この映画はストーリーやキャラクターもすごくいいのだけど、
一番推したいのはメインの3人の演技だ。
突然姿を消す父を演じた佐藤二朗。
そんな彼を必死に探す娘を演じた伊東蒼。
そして、連続殺人犯を演じた清水尋也。

3人とも甲乙つけ難いほどの名演技なんだけど、
僕は佐藤二朗の演技に感銘を受けた。
主に福田雄一監督作品での
コメディな役どころのイメージが強いため、
『はるヲうるひと』(2021)に続く
シリアスな役はとても印象に残る。

さらに彼のね、
病気になった愛する妻とのやり取りがまた心が痛むんだよ。
生きる希望を失い、
自ら命を絶とうとすらする彼女を見て、
取り乱すときの彼の演技。
そのとき、音声だけ無音になるんだけど、
その演出がよかった。
音を無くすことで、
悲しみに打ちひしがれる表情や体の震えが
より際立っていたから。

◆そんなわけで

淡々と進む映画ではあるんだけど、
ダークな世界観に、
引き込まれるストーリー、
キャストの圧巻の演技力と、
見ごたえ充分なので、
ぜひ映画館で観て欲しい映画。

邦画ではあるんだけど、
どことなく雰囲気的に韓国映画っぽいなと感じるのは、
本作の片山慎三監督が、
あのポン・ジュノ監督の下で
助監督を務めたことも影響しているかもしれない。


オリジナル版に忠実な上に、ダンスシーンが超絶パワーアップしていて大興奮だった『ウエスト・サイド・ストーリー』

2022年02月11日 22時49分02秒 | 映画
 

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:2/26
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★★★★★★
      音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★★★★★★

【ジャンル】
ミュージカル
ラブストーリー

【原作・過去作、元になった出来事】
・ミュージカル
 『ウエスト・サイド物語』(1957)

・映画
 『ウエスト・サイド物語』(1961)

【あらすじ】
夢や成功を求め、
多くの移民たちが暮らすニューヨークのウエスト・サイド。
だが、貧困や差別に不満を募らせた若者たちは、
同胞の仲間と結束し、
各チームの対立は激化していった。

ある日、プエルトリコ系移民で構成された
“シャークス”のリーダーを兄に持つマリア(レイチェル・ゼグラー)は、
対立するヨーロッパ系移民
“ジェッツ”の元リーダーのトニー(アンセル・エルゴート)と出会い、
一瞬で惹かれ合う。

この禁断の愛が、
多くの人々の運命を変えていくことも知らずに…。

【感想】
ミュージカル映画の金字塔!
60年の時を経て、再びスクリーンで!!
元の作品が好きなので、だいぶ色眼鏡ついちゃうけど(笑)

◆オリジナル版に忠実+αのストーリーに大満足

ミュージカル版の初演は1957年。
その後、1961年に映画化されている本作。
今回は、スティーヴン・スピルバーグの手によって、
60年ぶりにリメイクされた。

一応、僕は事前にオリジナル版で復習はしたものの、
その必要がないぐらい、
オリジナル版に忠実なストーリー構成。
長らく観ていなかった人でも、
徐々に記憶を蘇らせることができると思う。

とはいえ、もちろん変更・追加となったシーンもある。
歌とダンスが披露されるタイミングや場所が変わっていたり、
トニーとマリアのエピソードが追加されていたり、
新たな歌もあったりと、
とても楽しめる内容だった。

そのおかげで、
全体的にキャラクターが深掘りされるだけでなく、
彼らの置かれた環境が
オリジナル版よりもわかりやすくなっていたので、
個人的にはかなり好印象!

例えば、オリジナル版は
冒頭でマンハッタンの都市部の空撮映像が流れるのね。
でも、本編の舞台はスラム街っぽいところばかり映され、
スタジオのセット内での撮影も多かったから、
イマイチ舞台設定や時代背景がわかりづらい部分があった。

一方、リメイク版は市街地内でのロケも多い分、
自然な街並みをたくさん観れたので、
彼らの生きる時代の空気感というのをより強く感じることができた。

◆圧巻のダンスシーンに興奮しっぱなし!

今回のリメイク版で一番の見どころは
何と言ってもダンス!!
いやもうね、
本当にすごくてヤバくて熱くて。・゜・(ノД`)・゜・。(語彙力w)。
もちろん、オリジナル版のダンスも素晴らしかったんだけど、
今回のダンスはレベルが違いすぎる!!

全体的に動きがメチャクチャ速い上に、
アクロバティックかってぐらいの派手さがあって!!
それでいて、オリジナル版以上にみんな動きが揃ってるのよ!!
この群舞が最高にかっこよくて!!
特に、ダンスバトルのシーンと
『アメリカ』のシーンが最高だった!!
『アメリカ』なんて、
みんなで街に繰り出してド派手に踊り狂ってて。
しかも、衣装の華やかさとすごくマッチしてるんだよ。
プエルトリコ系の衣装って、
オリジナル版では紫が強くてやや暗い印象だったけど、
今回は黄色やオレンジなど明るい色を基調としてたから、
ものすごく晴れやかだった。

◆ファンならうれしいリタ・モレノの存在

オリジナル版でアニータを演じたリタ・モレノ。
すでに90歳だけど、
今回はヴァレンティナという、
オリジナル版でドクにあたる役で出演している。
アニータは終盤で、
ジェッツのメンバーに襲われるシーンがあるんだけど、
それを止めるのがヴァレンティナ。
リタ・モレノからしたら、
60年前に自分がやった役を助けるってんだから、
なんだか感慨深く感じるよ。

ちなみに、オリジナル版のメインキャストは、
マリア役を演じたナタリー・ウッド以外はまだご存命なので、
どうせならみんな出て欲しかったなあ
(ナタリー・ウッドは1981年に43歳の若さで謎の死を遂げているとか)。

◆そんなわけで

とにかく歌とダンスがものすごくよかったので、
配信なんか待たずに映画館で観て欲しい。
映画館で観るべき映画!

 

簡単に済むはずだった誘拐事件が多くの命が失われる惨劇となった『ファーゴ』

2022年02月11日 14時58分04秒 | 映画

【個人的な評価】
「午前十時の映画祭11」で面白かった順位:19/24
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】
サスペンス
犯罪映画

【元になった出来事や原作・過去作など】
実際に起こった3つの殺人事件をミックス

【あらすじ】
事業の資金不足に悩む
自動車ディーラーのジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は、
自分の妻を偽装誘拐させ、
義父から身代金を引き出そうと考えた。
ジェリーに依頼されたカール(スティーヴ・ブシェミ)と
ゲア(ピーター・ストーメア)は、
妻の誘拐に成功したものの、
逃走中、職務質問をかけてきたパトロール警官を射殺し、
その目撃者までも殺害。

翌朝、女性警察署長マージ(フランシス・マクドーマンド)が
現場検証に訪れるが―。

【感想】
「午前十時の映画祭11」にて。
1996年のアメリカ映画。
町山智浩さんの解説付き。

◆小さな計画がとんでもない事態へと発展していくサスペンス

最初は些細な話だった。
まあ、些細といっても誘拐事件だから、
正しい表現ではないけれど。
お金が必要だったジェリーは、
雇った男たちに妻を誘拐させて、
義父から身代金をもらおうっていう話。
人の命がなくなることなんてないはずだったのに。

誘拐途中に、
車体ナンバーを付け忘れていたことで
警察に呼び止められ、
彼を射殺。
そこをたまたま車で通りかかった
2人の目撃者も射殺。
その後も、
邪魔をする人はどんどん殺されていって。
本当に、
なんでこんなことになってしまったのかわからないぐらい、
人がバンバン死んでいく怖さ。
間違っても、
"ヤバいやつら"とは関わらない方がいい
という教訓になるぐらいだった。

◆フランシス・マクドーマンドの細かな演技に注目

町山さんの解説がなかったら、
そこまで深く考えなそうなところまで知れたのが、
今回の企画上映のよかったところ。

この映画、
主演はフランシス・マクドーマンドで、
彼女が初めてアカデミー主演女優賞を受賞した作品。
とはいえ、彼女が出てくるのは
上映してから30分を過ぎてからで、
ジェリーを演じたウィリアム・H・メイシーの方が
出演時間は長いんだけど(笑)

彼女が演じたマージは、
地元の警察官。
普段、殺人事件なんて起きなそうな
閑静な場所で起きた悲劇。
殺害された死体を見て、
普通なら取り乱しそうなところを、
彼女は淡々とした様子。
吐きそうになったかと思えば、
ただのつわりだったり。
さらに、現場に残された足跡から、
犯人像まで特定。
妊娠中にも関わらず、
冷静に捜査にあたる姿は、
なかなか肝の据わった人物であることが伺える。

そんな彼女の細かい表情が、
この映画の最も重要なシーンを担っていたというから驚き。
彼女は、同級生であった
マイク・ヤナギタという日系人と再会する。
そこで、彼は奥さんと別れたことや、
マージのことが好きだったことを告白するんだけど、
後日、別の友人との電話で、
それがウソだったことが発覚。
本編と何の関係もないし、
なんでこんなシーンを挟んだのか、
僕自身わからなかった。

ここからは町山さんの受け売りになっちゃうんだけど。
ヤナギタの言葉がウソだったと知ってから、
マージは車を運転しながらボーっとした表情をしていて、
突然何かに気づいた顔に変わるのよ。
一瞬のことだし、
小さな変化だから、
よく観てないと気づかないんだけど。

そして、ここが一番の肝。
彼女は運転しながらずっと考えていたんだよ。
こんな普通の人でもウソをつくのかって。
そこでハッとする。
普通の人でもウソをつくなら、
散々話を聞いていたジェリーもウソをついているのではないかと。
そこから一気に話が進んでいく。

今のドラマや映画だと、
刑事や探偵がこれまで得た情報を整理しているシーンって、
特別な演出があるじゃない。
例えば、『99.9 -刑事専門弁護士-』だと、
まつじゅんが耳をふさいでいるとか。
当時はそういう演出がないから、
マージのボーっとした表情が、
何かを考えているんだっていうのも、
ちゃんと観てないとわからない。
むしろ、この演出をした監督がすごいと思うんだけど。

あと、出てくる人はみんなミネソタ訛りらしいんだけど、
英語が聞き取れない自分には、
そんな違いはわからなかった。
なので、東北弁でしゃべってるって思うといいらしい(笑)

◆そんなわけで

今から25年以上前の映画だけど、
だんだんと大ごとになっていくストーリー展開は面白いし、
フランシス・マクドーマンドの演技もすごくよかったのでオススメ。


人類史上最も難しいチームビルディングを実現させた『クレッシェンド 音楽の架け橋』

2022年02月10日 22時13分33秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:17/25
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★

【ジャンル】
ヒューマンドラマ
パレスチナ問題
音楽

【原作・過去作、元になった出来事】
・楽団
 ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

【あらすじ】
世界的指揮者のスポルク(ペーター・シモニシェック)は、
紛争中のパレスチナとイスラエルから
若者たちを集めてオーケストラを編成し、
平和を祈ってコンサートを開くという企画を引き受ける。

オーディションを勝ち抜き、
家族の反対や軍の検問を乗り越え、
音楽家になるチャンスを掴んだ20余人の若者たち。
しかし、戦車やテロの攻撃にさらされ、
憎み合う両陣営は激しくぶつかり合ってしまう。

そこで、スポルクは彼らを
南チロルでの21日間の合宿に連れ出す。
寝食を共にし、
互いの音に耳を傾け、
経験を語り合い、
少しずつ心の壁を溶かしていく若者たち。

だが、コンサートの前日、
ようやく心がひとつになった彼らに、
想像もしなかった事件が起きる――。

◆民族紛争の当事者たちによるオーケストラという強すぎる設定

今回題材となったのは、
イスラエルとパレスチナの若者たちを集めて作られたオーケストラ。
実在するウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団がモデル。
長らく対立を続ける両者が、
オーケストラという
最も一致団結しなければならない環境に置かれるっていう設定は、
コンテンツとして強いよね。

イスラエルとパレスチナの問題は、
以下にわかりやすくまとめてあるので、
よかったら読んでみてください。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji97/

気が合う合わないとか、
そういうレベルの話じゃない。
厳密に言えば、
2000年という長い歴史にわたる争いなので、
民族としてお互いに憎しみや嫌悪感が積もりに積もってる。
事あるごとに、
相手を罵り、
口論に発展し、
大騒ぎになり、
オーケストラの練習すらままならない。

◆無理ゲーすぎるチームビルディングの過程が見ごたえあり

会社勤めをしていても、
組織をどう作っていくかってことに
頭を悩ませる人は少なくないだろう。
それが今回は民族レベルでの不和である。
その状況をまとめていくのが、
世界的指揮者であるスポルクの役目。

まずは、自分たちのやるべきことは何かを、
みんなの共通認識として持つ。
メンバーだって、
ケンカするために集まったわけではないし、
そもそも敵意があるわけでもない。
だから、その共通認識さえしっかり握れれば、
後はとにかく話し合いの連続。
あえて相手への不満をぶちまける時間を作ったり。
相手の立場になって考えるロールプレイングをしたり。
自分や家族の身に起こった悲劇を共有したり。
そうやって、徐々にお互いを知っていくことで、
ひとつのチームになっていく過程は面白かった。

ちなみに、実際の撮影現場も、
この映画と同じような流れだったらしい。
最初はいがみ合っていたけど、
最後にはみんな打ち解け合うみたいな。

◆印象に残る"鍵"の話

これはあまり本編とは関係ない話なんだけど。
劇中に出てくるメンバーのおばあちゃんが、
首から鍵をぶら下げてるっていう話があって。
現実でも、昔のパレスチナ難民は、
首から鍵をぶら下げて生きていたらしいんだよ。
それは、追い出された人たちが、
いつか自分の家に帰れることを願ってのことなんだけど、
そういう実際のエピソードを入れ込んでくるのはいいなって思った。

◆クラシックの名曲が心地いい

ヴィヴァルディの『四季』から《冬》、
ラヴェルの『ボレロ』、
パッヘルベルの『カノン』など、
今でもいろんな場面で使われるクラシック音楽は、
いつ聴いても心が安らぐ。

しかも、演奏している楽団員役の人は、
みんな本物の演奏家たち。
映画の設定に沿って、
メインの4人以外は、
ユダヤ人とアラブ人の演奏家からキャスティングし、
演奏指導もしたとのこと。
その作り込みが素晴らしいよね。

◆そんなわけで

あまりにも溝が深い対立を背景にしながらも、
徐々にお互いを受け入れ、
一致団結して音楽を奏でていく様子はとても見ごたえがあった。
これはぜひオススメしたい映画!


石油泥棒というぶっ飛んだ設定にハマるも、ラストのグダグダコメディがもったいなかった『パイプライン』

2022年02月09日 20時10分20秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:17/24
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
犯罪映画
クライムアクション
コメディ

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
盗油業界最高の穿孔技術者ピンドリ(ソ・イングク)。
彼は、数千億ウォンの石油を盗むための大計画をぶち上げた
大企業の後継者ゴヌ(イ・スヒョク)の提案を拒めず、
危険極まりない作戦に合流する。

そこには、プロ溶接工のチョプセ(ウム・ムンソク)、
地中を透視できるかのように把握しているナ課長(ユ・スンモク)、
怪力の人間掘削機ビッグショベル(テ・ハンホ)、
彼らを監視するカウンター(ぺ・ダビン)といった、
個性的なメンバーが集っていた。

しかし、異なる目的を持つ者たちが騙し騙されながら、
計画は予想外の方向にこじれ始める…。

【感想】
相変わらず設定が面白い韓国映画。
とはいえ、個人的にはちょっと期待外れだったかなー。
韓国映画はメチャクチャ面白いのとそうでないのとで、
だいぶ差が激しい気がする(笑)
(一方、邦画はそこまで差がつかずに平均的っていう印象がある)

◆"盗油"という発想の面白さ

本作の題材は、
石油を盗む"盗油"と呼ばれる特殊犯罪。
産油国でない日本では聞きなれない言葉だけど、
実際の韓国では社会問題になっているらしい。

これ、石油を運ぶトラックを強奪するとか、
そんなハイリスクな話ではない。
石油が通るパイプに穴を開け、
そこからホースなどで石油を抜き取ろうというものだ。
地中の構造を把握し、
穴を掘り、
手作りの特別なドリルでパイプに穴を開けていく、
専門知識やスキルが必要とされる高度な犯罪。

そんな盗油事情を真正面から描いたのは、
韓国映画の中でも初めてじゃないかな。
日本では起こり得ない犯罪自体に、
とても興味がわく内容ではあった。

◆シリアスなのかコメディなのかどっちつかず

犯罪映画ってことで、
ハラハラする展開やシリアスな雰囲気ももちろんある。
なのに、ちょいちょいコメディ要素が入ってきて、
それはそれで笑えるんだけど、
作品全体としてあんまり統一感がなかったかなー。
どうせなら、もっとコメディに振り切って欲しかった。
特に、ラストの乱闘シーンからはだいぶグダグダしてて、
せっかく作り上げてきたクライムアクション感が台無しに。

先に書いたように、
トラック強奪みたいな派手さがない分、
こういうコメディ要素で抑揚をつけたのかもしれない。
ただ、ミートスパゲティにタバスコ入れまくって、
ちょっと違う食べ物になってしまったっていうイメージ(笑)

◆そんなわけで

題材はよかったけど、
話のテイストがうまく合っていなかったので、
すごく惜しいなっていう印象の映画。
盗油という特殊犯罪がどんなものなのかを知るにはいいかもしれない。