ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「花見」

2011-04-08 | エッセイ
2011年4月8日(金)

風が強い一日だった。ハハの病院へ行く途中、コブシ並木が花開いていた。(^^)
さらに、ハハの病院の近くの工業団地では、敷地の縁の桜が咲いていた~♪
わ~・・・。(^^)
咲き出したばかりの桜は、強い風にも負けずに初々しく咲いていたよ~。(^^)
今年の桜は、特別、目が吸い寄せられるわ・・。

ハハの先生との面談は、・・・これまでと同じような感じだった。
つまり、ときどき肺炎を起こしては、薬で止め、腎臓がだんだん悪くなっているので、
急変もありえます・・・という。う~ん。お任せするほかないよね・・。
ハハは、ゼリーとヨーグルトのおやつをおいしそうに食べていたよ。
それから、携帯のゆ~ちゃんの写真を見せて、二人で可愛いねって、にっこり・・。(^^)

桜が咲いたけれど、もうハハとのお花見は無理だ。そこで、2年前のハハとの最後の
お花見のエッセイを・・・。
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「花見」

 母の病室へ入ると、母はベッドでうつらうつらとしていた。
「おばあちゃん、さあ、お花見に行こう」
 と、私が声をかけると、母は、「まあ」と、にこりとした。けれども、久しぶりの外出に
ベッドから起こそうとしても、母の体はしゃんとしない。なんということだろう、母は自分の
脚で立てなくなっていた。ずっしりと重い母を車椅子に移すだけで、もう腰が痛くなった。
そろそろとでも足を前に出してくれれば……。帰りに私の家に寄って寛いでもらおうと思っていたが、
これではとても無理だ。今日はお花見だけにしようと決め、私は母の体を車椅子から私の車の
座席までなんとか運んだ。
 車の中で待っていたポチが早速母の膝の上に寝そべった。ポチの体重は三キロ。母に、
「重くない?大丈夫」と、聞くが、「大丈夫だよ」と言うので、このまま、母とポチと私のお花見と、
車を発進させた。行く先は、病院から十五分もかからないところの桜並木だ。車から降りずに
見上げるだけでお花見が出来る。毎年、父と母を連れてきていたが、昨年の秋に父が亡くなり、
今年から母だけになってしまった。そのことに気づいている様子もなく、助手席の母はただ眠そうだ。
 桜並木は満開だった。ベッドの上で日々を重ねる母には、今日の桜をたっぷり楽しんでもらいたいと、
「晴れて良かったね。綺麗ね」「ほら、ここの桜、見事よ。見て」「ず~っと道の先まで桜、桜よ」
 と、話しかけ続けた。道は花見客の車で渋滞しているので、桜に気をとられてばかりもいられず、
「前の車は、信号は」と、私は気忙しく運転を続けた。やがて桜並木の終わりに近づき、私は
右手にある道路からやや高くなったスーパーの駐車場へ車を入れた。
 道路側に頭を向けて車を止めれば、目の前に桜の花が帯となって広がっている。ここならゆっくりと
桜を見渡せる。母と見入っていると、開けた窓からそよそよと風が入り、桜の花びらも舞い込んだ。
私はひとひらを掌に乗せてポチの鼻先に近づけたけれど、ポチはちょっと匂いを嗅いでそっぽを
向いてしまった。
「食べられないからいらないんだって。ポチってしょうがないね」
 と、母と笑いあってから、私は、急いでスーパーで葡萄ゼリーを買ってきた。とたんに、ポチが
母の膝の上でぱっと座りなおす。鼻をくんくんさせるポチを避けながら、母にゼリーを食べさせると、母は、
「う~ん、良いお花見だね……」
 と、呟いた。 
 帰りは、病院へ戻る前に母の留守宅や近所の様子を見せ安心させようと、回り道をした。
母の家の前で車を止め、
「ほら、おうちだよ。ちゃんとしているでしょう」
 と見せてから、隣りの私の家の駐車場に車を入れた。
「今日は、家の中までは連れて行ってあげられないけれど、この次は家の中で休もうね」
 と、二人並んでお向かいの垣根際に幾鉢も並べられた桜草を眺めた。いつもの春の光景に、
「懐かしい?」
と、聞くと、母は、
「懐かしいけれど、少し寂しい」
 と、答えた。どきりとした。戻れないかつての暮らしが思い出され、かえって寂しさが募ったのだろうか?
「少し寂しいの?」
 と言う私に、
「たくさん寂しいんじゃないのよ。少し寂しいのよ」
 と、母は微笑んだ。
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コメント
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