「はやりを」河野裕子 日本の花 2010-10-01 06:10:48 | クンストカンマー(美術収集室) たつたこれだけの家族であるよ子を二人あひだにおきて山道のぼる 山という大きな自然。そこを歩く人間の家族。その対比が「たつたこれだけ」を補強する。しかし、決して心細さだけではないだろう。なぜなら確実に一人ではないのだから。ちなみに山道は人生の象徴でもある。
短歌人十月号「夏のこと」斎藤典子 2010-10-01 06:10:06 | 平成22年短歌人誌より 帰るたび透明の傘を忘れゆく息子のひとりの夜を思へり ただ忘れ物が多いから心配なのではなく、骨が見える透明の傘のように息子を思っているから心配なのではないだろうか。そんな息子の一人の夜はもっと心配だろう。作者は本当に言いたいことは言わない。この一首では「心配」とは言わない。それが大切なのだと思う。河野裕子 さんがある著者で四句目を五句に持ってくるといい歌になることが多いと書いていた。たいてい、五句で言い過ぎるのだろう。自戒したい。