短歌人5月号「 H氏の長い一日」長谷川莞爾、初夏のプロムナード

海底のやうなしづかな午（ひる）さがり一輪車にのつて希莉が訪ひくる

なんとも独特のオーラを持ったシリーズで私はファンである。この一首もまたそうだ。まるで海底から一輪車に乗って希莉がやってきたようだ。希莉とはH 氏の孫であるから微笑ましい。H氏は御近所さんになりたいと思える愛すべきキャラクターである。

阪森郁代「ボーラといふ北風」東京といふ概念

通り過ぎてしまひし季節残された記憶の枝が空へ張り出す

季節は通り過ぎ、記憶は残る。そして枝になり空に張り出す。枝はまた季節を重ねて記憶の分だけ空に張り出す。やがて空一面に広がる。