ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人5月号「春のなまへ」橘夏生、初夏のプロムナード

2012-05-16 09:57:29 | 短歌人誌より
ゆびとゆびのあひだをあんまりきみが舐めるから水掻きができてしまつたぢやないか

恐ろしいことを告白される。告白というより責められる。水掻きが出来たのはゆびとゆびのあひだをあんまり舐めるからだと。しかも、この告白者は中性的な言葉使いだ。淫靡と禁忌の強烈な匂いがする。

短歌人5月号「春のなまへ」橘夏生、初夏のプロムナード

2012-05-16 05:56:44 | 短歌人誌より
ゆふやけの歩道橋はふたりで渡ろう美しい巨人に喰はれる日まで

ゆふやけの歩道橋はふたりで渡ろうと約束する。その理由としての巨人。巨人は死を約束する。まずは美しい巨人に喰はれるという作者の幻の世界での跳躍力に圧倒される。そして、私もこの巨人に喰はれてみたいと思ってしまう。もちろん、誰かと一緒であればだが。

阪森郁代「ボーラといふ北風」東京といふ概念

2012-05-16 05:55:01 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
ひとりゐてふたり掛けなる木のベンチ見る見る木肌を走る黒蟻

黒蟻は作者の寂しい感情を体現する。見る見る木肌を走りやがて消える。ふたり掛けのベンチ、一人きり。いてほしい誰かの不在。もしかしたら黒蟻は誰かの変わりだったのかも
知れない。