元ライターの小説家への道

僕もまだ本気を出していません。

福岡旅行記2日目~よかですたい…~

2006年06月30日 00時46分24秒 | 会社での出来事
 この文章は全裸で書いています。全裸旅行記。

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「じゃあこっちについて来てくんさい。この子たち家に繋いだら送るさかい」
「ここから近いんですか?」
「すぐそこじゃきー。けどアタシの家じゃなか。貸家の人が全然散歩に連れていかんけん、ワシが面倒見てるバッテン」

 話を聞くとおばちゃんの家は不動産を経営しているとのことだ。

「じゃあちょっと繋いで餌やったら行きましょうかね」

そしてつながれた犬スケ。


自分の餌があるにもかかわらず、もう一匹が餌を食べると猛烈に咆える犬。


咆えられ悲しむ犬。


「じゃあ車に乗ってくんしゃい」
「合点承知のスケ」
「お兄さんは志賀神社は行ったと?」
「いえ、行ってないです。どこにあるんですか?」
「あーそれはもったいないキー。志賀島にもどっちゃるけん行くバイ行くバイ。玄界灘を眺められるいい所ばってんねー」

※お断り
おばちゃんの方言はむちゃくちゃです。雰囲気で書かせていただいております。

 車は再び志賀島へと向かった。それはフェリーの発着場から100メートルほどの距離の場所にあった。大きな鳥居を抜けて100段近くある階段を目指しておばちゃんは歩く。しかしおばちゃんは階段を上る前に立ち止まった。

「ここで立ち止まってくんしゃい」

 するとおばちゃんは階段横にあった砂が箱に手を入れ、自分の前に2度ほど撒き、二礼二拝した。

「こうしてから、この神社に入るバイ」

 僕もそれに習って砂を撒き二礼二拝。信仰としての神仏は信じていないが、こういう儀式は嫌いではない。そして2人で階段を上る。途中、キャワイイ女2人組みとすれ違ったが、彼女たちは僕たちを見て笑っていた。恐らくナイスカップルに見えて嫉妬したのだろう。愛いやつめ。

 階段を上りきり木々の間に顔を出すとそこには玄界灘が広がっていた。


「こっちきんしゃい。一緒にお賽銭しましょね」

 何を願えば良いだろうか。スーツのポケットに手を伸ばし財布を取り出しながら考えていると、おばちゃんがそっと手で制した。



「よかですたい」

 そして僕の手の上に100円玉を乗せてくれた。こんなにやさしい「よかですたい」を聞いたのは初めてだ。なぜ数分前に会ったばかりの名前も知らないクールビズ自殺男&嘘つきにこれほどまでに優しくしてくれるのだろう。これが田舎の普通なのだろうか。このやさしさがあれば…このやさしさがほしい…。
アイツに。

「じゃあ帰るばい。今度はフェリー乗り場まで送って行くきね」



 志賀島には昔たくさんの鹿がいたそうだ。神社の一角に鹿の角がたくさん収められていた。しかし志賀島の由来は鹿ではない。近い島というのが訛りチカイシマ→チカノシマ→シカノシマになったらしい。

 おばちゃんの車に戻るとドアがロックされていなかった。そういうのは平気な街なのだろう。
コメント (4)
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