ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け35年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

善通寺市等の「即応機動連隊」を考えるための基礎知識(20201029)

2020年10月30日 | 米軍/自衛隊
 私の今回の旅の主目的は、香川県善通寺市に編成された第15即応機動連隊の実相に迫ることだった。これを分かりやすく書くためにはひととおりの基礎知識が無いとわかりにくい。これを整理しておきたい。
 戦後日本の自衛隊は、憲法9条などによって、規制されており、憲法論争があり、だからこそ「専守防衛」を建前として、再軍備が強行されてきた。憲法解釈が歪められてきたのだ。米国政府主導による大日本帝国の軍備の放棄と、米日共同による再軍備。初めから矛盾に包まれてきたのだ。だから軍隊としての本質を隠すために様々な言い換えが行われてきた。戦車を「特車」と呼んでみたり、武器らしからぬいいかえ=誤魔化してきたのだ。歩兵部隊を「普通科部隊」、ミサイル等の部隊を「特科部隊」などと呼んでいる。だから自衛隊の現状を把握するためには、積極的な関心と知識が無ければ、分からない。

【2010年防衛計画大綱、2013年防衛計画大綱の改訂】
 自衛隊が大きく変わったのは、実は2010年の民主党政権時代のことだ。1976年に作られた「防衛計画大綱」は「基盤的防衛力構想」を根幹としていた。これは米ソ冷戦構造のなかで、両国が核とミサイルで張り合う、そのバランスの中で、日本国の防衛力(軍事力)は、アジアのこの地で米国を補完するものだった。この考え方は、1995年、2004年の改訂に当たっても変わらなかった。これが2010年の改訂で、「基盤的防衛力構想」を破棄し、「動的防衛力」に変更したのだ。
 これは1991年にソ連邦が崩壊する中で、核戦争の危機が遠ざかったことを背景としたものだが、私たちはこの絶好のチャンスを捕り逃がしたのだった。そればかりか、米・日、中・ロなどの国家は軍事力に固執し続けているのだ。
 「動的防衛力」は、目には目をの具体的な力を開示する防衛力だ。「専守防衛」の建前が崩れだしたとすら言えるだろう。その中核的な構想が琉球諸島を戦場とする『島嶼防衛』策に他ならない。
 2012年に政権に復帰した安倍晋三政権は、2013年、また防衛計画大綱を改訂し、「統合機動防衛力」と言い出した。統合とは何か? 陸海空の3個の自衛隊を一個の指揮下で、一体的に運用することだ。「動的防衛力」の曖昧さを払拭し、統合機動防衛力としたのだが、ここに伏線があった。それは米軍との一体的な運用だ。米日共同統合軍の完成を目指すものだ。そして2014年7月Ⅰ日の集団的自衛権の閣議決定を経て、2015年の戦争法の制定に至るのだ。「国権の最高機関」だった国会審議を袖にしながら行政権力が暴走を始めたのだ。
 話しを自衛隊に戻す。「統合」は分かったとして、「機動」とは何か? 持ち場(「方面隊」)での防衛力を超えて、素早く移動して軍事力を行使できることだ。2013年の防衛計画大綱のあちこちに「シームレス」という言葉が出てくるが、これが曲者だ。「常続的監視」という辞書にない言葉も常套句になっている。常に継続して監視しながら、軍事力行使の部隊行動をとるということであり、平時から戦時までをシームレスに繋げていくというのだ。
 
【新たな殴り込み部隊としての水陸機動団と機動師団・機動旅団の編成】
 こうした発想を国の根幹的な軍事構想にすれば、「専守防衛」などおよびでなくなるのは、必然だ。こうして2013年の防衛計画大綱に描かれた新たな部隊が、「水陸機動団」と「機動師団・機動旅団」だ。2018年に水陸機動団が佐世保などに編成され、3個機動師団と4個機動旅団の編成が進んでいる訳だ。
 また、この年、「陸上総隊」が編成された。従来の「専守防衛」時代の地域割りの各方面隊を改め全国・一体的に指揮監督できる態勢が整備されている。これで航空総隊、自衛艦隊と併せ、陸海空の3軍の統合態勢ができたことになる。
 因にこうした事実を顧みず「明文改憲を阻んでいる」と力説したところで無意味だと、私は考えている。 
 それでは具体的にみていこう。水陸機動団は、佐世保の相浦駐屯地等と、日出生台駐屯地に2018年に編成された(2連隊)。水陸両用装甲車やオスプレイで殴り込みをかける部隊だ。移動手段は海自の輸送艦であり、今後、揚陸艦を持つと言い出すだろう。第3の連隊の位置が、辺野古のはずだったが、工事が遅れに遅れており、北海道の浜大樹だとの情報が入ってきている。  
 機動師団・機動旅団は、2013年当時の計画では、九州(西部方面隊)の北熊本駐屯地の第8師団、四国(中部方面隊)の善通寺駐屯地の第14旅団、群馬(東部方面隊)の相馬が原駐屯地の第12旅団、東北方面隊の第6機動師団、北海道(北部方面隊)の旭川駐屯地の第2機動師団、東千歳駐屯地の第7機甲師団、真駒内駐屯地の第11機動旅団、帯広駐屯地の第5機動旅団だ。
 尚、師団と旅団の区別だが、基本構成は一緒。師団の部隊は約9000名であり、旅団は約4500名であり、規模の違いとみて良いはずだ。無論、規模が違えば戦力が違ってくることはいうまでもない。

【改編の進捗状況等について】
 機動師団・機動旅団の中核部隊が即応機動連隊だ。これまでに編成されたのが、2018年3月に第14旅団の善通寺駐屯地内にある第15即応連隊であり、九州熊本の第8師団傘下の北熊本駐屯地の第42即応機動連隊である。2019年3月に北海道の第11旅団の滝川駐屯地の第10即応連機動連隊が、宮城県の第6師団の多賀城駐屯地にある第22即応機動連隊が編成された。第2師団と第5旅団、第12旅団の改編は今後となっている。
 即応機動連隊の特徴は、その名の通り、有事の事態に即応できる訓練を行い装備をもち、機動力をもつはずだ。その地域での防衛戦にあらず、「島嶼防衛」のための「島嶼奪還作戦」を担うとされている。こうした侵攻力を強化していけば、海外への侵攻も可能となるだろう。
 このため、普通科=歩兵部隊を超えた装備を有している。それが「機動戦闘車」だ。これは装輪装甲車だが、人員を運ぶのではない。105ミリ施線砲をもち、装甲戦闘車を撃破できる破壊力をもつ。この車両は約26トンだそうで、航空自衛隊の輸送機C-2で運べるのだ。もっとも1機で1両しか運べないから、1個連隊の機動戦闘車を運ぶためには20機、30機(のべ)の輸送機が必要となる。この他に96式装輪装甲車、中距離多目的誘導弾システム(車両搭載)、93式近距離地対空誘導弾(車両搭載)などもあり、艦船での輸送が避けられない。
 人員は第15即応機動連隊の場合、約800名との資料もあるが、詳細不明。


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