Ⅰ:諏訪湖上空をオスプレイが飛んだとの情報がもたらされた(12月17日夕刻)
2020年12月17日夕刻、私の電話が鳴った。長野の友人からだった。彼の目撃談に依れば、12月17日15:48、北側から進入してきたオスプレイが諏訪湖上空を飛び、南西に飛び去ったとの情報だった。このオスプレイは、①米国空軍橫田基地のCV-22の可能性が高いだろう(諏訪湖から橫田基地まで約120km)。イヤ待てよ、確か、②陸自第12旅団と米国海兵隊との共同演習が行われているはずだ。この二つの可能性を私は彼に説明した。
そこで防衛省のHPを見た。そこにこうあった。「令和2年度国内に於ける米海兵隊との実動訓練(フォレストライト/東部方面隊)の概要について」。期間は2020年12月7日~18日。場所は関山演習場、相馬原演習場及び同駐屯地。関山は新潟県上越市、妙高山の北東約8kmの地点であり、相馬原は群馬県榛東村だ。何れも私も若干とはいえ土地勘のあるところだ。
共同演習の部隊は、米海兵隊から第3海兵師団第4海兵連隊(第3-8大隊基幹)と第1海兵航空団第36海兵航空群第265飛行隊(MV-22)である。前者はキャンプ・シュワブの部隊であり、後者は普天間基地の部隊だ。
対する陸自は第12旅団第30普通科連隊とある。新潟県新発田市にある部隊だ。このプレスリリースに記載されていないが、当然CH-47のヘリ部隊が参加する。第12ヘリコプター隊だ。防衛省発の別紙(2020年11月13日)にこうあった。CH-47が4機とUH-60が2機、AH-1が2機参加すると。AH-1はロケット弾等を積んでいる対地攻撃ヘリだ。
今回の演習は、「空中機動性を高めた旅団である第12旅団と米海兵隊が空中機動作戦により、日米共同での島嶼部に対する攻撃への対応を重視した訓練の実施」とあり「平成28年9月の日米合同委員会合意に基づく、MVー22の訓練移転に係わる事業として実施」とある。
冗談じゃない。与那国・石垣・宮古などを戦場に想定する演習など百害あって一利なしだ。訓練移転といえば聞こえは良いが、より広いところで堂々と殲滅作戦を繰り広げるのだ。沖縄でやらず、群馬や新潟の山間部でやれば、実態が知られずに済むとの思惑もあるだろう(訓練移転費用は日本持ち)。
そしてコロナ対策の記載もある。「本訓練に参加する隊員について、自衛隊員は防衛省・自衛隊が定める方針に基づき必要な感染症対策を充分に講じています。在日米海兵隊関係者は、米海兵隊が定める基準等に基づき、自衛隊と同様に必要な感染症対策を徹底しています。併せて、公共交通機関の使用を控えることや、酒場及び社交場への立ち入りを禁止することといった必要な感染症対策を講じることとしています」とある。全く抽象的で訳が分からない対策だ。
Ⅱ:知ったからには調べてみよう
防衛省発のプレスリリースでは要領をえない。そこで地元の自治体にどのように説明しているのか、確認した。ネットは便利なツールだ。
そこで関山演習場がある上越市のHPを見た。12月17日付けだ(本日20日に再度見た)。「関山演習場における日米共同訓練」が載っていた。そこに「新型コロナウイルス感染者の情報」がでているではないか。「●相馬原演習場に於いて日米共同訓練に参加する自衛隊員7名(新発田駐屯地隊員)が新型コロナウイルスに感染したことが確認されました。●当該隊員及び当該隊員との濃厚接触者が疑われる自衛隊員は、相馬原演習場内の施設で隔離しています。●いずれの隊員も関山演習場での訓練に参加していません」とあったのだ。
次に榛東村のHPを見た。「日米共同訓練について」が時系列で書かれている。これを遡りながら読む。「12月10日ー‣本日、相馬原演習場において日米共同訓練に参加する自衛隊員1名が、新型コロナウイルスに感染したことが確認されました。‣当該隊員は新発田駐屯地所属の30代男性です。‣当該隊員及び当該隊員の濃厚接触が疑われる自衛隊員は相馬原演習場内の施設で隔離しています。‣前橋市内のホテルを利用する航空部隊所属の米軍人約100名に当該隊員の濃厚接触者はおりません」。ほんとうかよ?
「12月11日ー本日2名が感染」(以下同文)、「12月12日ー本日4名が感染」(以下同文)の計7名が感染していたと、北関東防衛局は発表していたのだ。
ここで疑問が3つある。①10日、11日、12日と五月雨的に確認されている。検査は前日行われたのか不詳だが、濃厚接触者を如何様に把握したのだろうか。②12月7日から今回の訓練が始まっており、新発田の部隊はいつ・いかなる形で榛東村の演習場に結集を図ったのか。それによっては関山でなしとするのは早計ではないか。③米軍に関して、航空部隊の人員のことしか触れていないが、キャンプ・シュュワブの隊員について記載がないのは何故か? 濃厚接触の可能性はかれらこそあるだろう。
Ⅲ:謎が多い案件だが、陸自隊員から米兵が感染していないと誰が断言できるのか?
榛東村が公表している経過に依れば、
●米兵は11月24日約10名が相馬が原に到着。
●11月30日、約20名が相馬原に、約30名が関山に到着。
●12月Ⅰ日、約50名が相馬原に到着。
●12月3日、約40名が相馬原に到着。
●12月4日、約180名が相馬原に到着。関山に約170名が到着。
計相馬原に約300名。
計関山に約200名。総計約500名となる。移動ルートは不詳だが、米軍機を使ったのだろう。橫田からトラック等或いはヘリでの移動だろう。相馬原であれば、C-130で普天間から相馬原まで、ひとっ飛びもあり得るだろう。
他方、自衛隊員の移動と人数は全く分からない。米軍が約500名だとしたら、ほぼ同様なのだろうか。また、オスプレイは相馬原から関山に、関山から相馬原に何往復もしているのだから、新型ウイルスを運んでないとは言い切れまい。否、この可能性は自衛隊のCH-47や、UH-60ヘリの移動に依る可能性がはるかに高いだろう。強襲訓練であり、何十人かを乗せて下ろすの繰り返しをやったはずだ。隔離は10日、11日、12日なのだから、当該自衛隊員7名の移動ルートに沿って、チェックし、特に訓練が始まった7日以降の部隊での移動が明らかにされなければ、「濃厚接触の可能性なし」の当局発表は信用ならない。共同訓練である以上、訓練に先立つ打ち合わせや訓練後の飲食も皆無とは考えがたい。
今回のように自衛官発のコロナだと米軍とオスプレイ中心の公表では、殆ど意味をなしていないのだ。
19日、20日から米兵は帰ってきている。キャンプシュワブで、普天間基地でのコロナ禍の報告、新発田駐屯地、相馬原駐屯地でのコロナ禍の報告に私は引き続き注目していきたい。