宇宙航空研究開発機構と三菱重工が2023年2月17日に種子島で打ち上げようとしていたH3ロケットのことだ。固体ロケットブースターへの着火信号が出ず、打ち上げできなかったようだ。
打ち上げの責任者岡田JAXAプロジェクトマネージャーは、設計通り安全に留まっており「失敗だと考えていない」と強弁しているらしい。ロケットが打ち上がらなかったのだから、失敗だろうに。「地球観察衛星」はまさか地上勤務ではあるまいぞ。 冗談はともかく、主エンジンが着火したって、固体ロケットブースターが機能しなければ、ロケットは大気圏を越えられない。これは明らかな失敗だ。
岡田氏が科学者だとしたらやるべきことは、原因究明が第一であり、詭弁を使って失敗を糊塗しないことだ。これではまるで政治家みたいだ。失敗を認めないあり方では、科学の深化はありえない。思えば福島第一原発の事故・爆発の大失態について、あれから12年経っても解決のめどは立たず、原因究明もできないままだ。そのまま、原発再稼働、新たな原発をなどという劣化した政治のレベルに、「宇宙科学」も陥っているのだろう。私は原発と宇宙ロケット・衛星に同じ匂いを感じる。政治の匂い。軍事化した政治の匂いだ。
目的が政治力によって先行すれば、無理を通すことになる。核の「平和利用」という政治の詭弁・無理が今日の原発政策に全面化しているのだろう。宇宙開発も所詮、宇宙戦争のおまけみたいなものだろう。宇宙のことを知りたかったからがゼロだとは言わないが、結果的に宇宙戦争にしか使えないのではないか。費用対効果の埒外ならば、民間の利用はとても無理だろう。
科学も政治も人間がやることだ。怪しげな人間がやるのであれば、どんどん歪んでいく。政治に対しては民主主義で規制できるはずだが、科学の場合、「科学」の暴走を何で止めるのか? 軍事を至上命題とする「安保3文書」が出された今、私たちは新たな時代に生きているのだ。
撤退を「転戦」と言って嘘をつき、大きな犠牲を出した過去を、私たちは「昔のことだ」と放置してきたツケがまわってきたのだろう。悪貨は良貨を駆逐するとは教訓であって、今こそ私たちが想起すべきことだ。