「琉球諸島で考える『日本』という国」
ー第2回ロシアとウクライナ侵略と「島嶼防衛」ー
◎「世田谷いち」の連載第2回目(2022年4月1日)に寄稿した文から転載
ロシアによるウクライナへの侵略戦争が止まらない。そこで予定を変更して書くことにした。皆さんはどう考えているのだろうか? 「ウクライナ支援」と言うが、プーチンがバツでゼレンスキーはマルなのか? 確かにプーチンは以前から極悪な男だが、ゼレンスキーも戦争当事国のボスだ。日本国憲法の非武装=平和主義の趣旨に反すると私は考える。私はウクライナに平和を求める。ロシアに人権と民主主義を求める。その国の独裁化は市民に従順であることを強いていくものだ。
ところで、岸信夫防衛大臣は、「ロシアによる一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがす蛮行に対して、国際社会と結束して毅然と行動しています」(2022年3月11日記者会見)と述べた。米軍大型輸送機を米国本国からお越し頂いて(横田基地へ)、防弾チョッキなどの軍事物資をウクライナ支援だと運んだ。敢えて米軍機を依頼したのだ。「米日同盟」であると、日本国の立場を誇示したいのだ。
そして「国際秩序の根幹を揺るがす蛮行」だと断罪するが、かって同様の侵略=蛮行を積みかさねてきたのが大日本帝国だった。我が事の反省のない言葉は空疎だ。
また、この戦争は領土問題でもある。日本は海に囲まれており、侵略されにくい。地続きの場所は、簡単に突破されかねない。この『日本』という国は、侵略戦争によって領土を奪い、拡張し、蛮行を繰り返してきた。戦後日本の再生は、そうした「領土」を返さざるをえないところから始まった(「請求権の放棄」)。
しかし沖縄はどうだったのだろうか。沖縄は米国・米軍に占領されたまま、米国の統治下に切り離された(1972年5月14日まで)。サンフランシスコ平和条約(1952年4月28日発効)も日本国憲法(1947年5月3日施行)も埒外におかれてきた。そしてこの国は沖縄が日本国に返還された72年5月15日以降も、益々米国に頭を下げ続け、従属国のままだ。
私たちが今のウクライナに心を寄せるためには、この「日本」の過去を想起しながら前を見なければ、岸田政権の思惑にひきずられてしまう。彼等は、このロシアの戦争を利用して、改憲(憲法第9条の廃止、緊急事態条項など)が必要だと、力んでいる。現に、中国をターゲットとした米日共同演習を繰り返している。
この基礎になったのが、2015年の安保法制であり、2011年から始まった「島嶼防衛」態勢の構築だ(現在進行形)。
ところで、ロシアとウクライナとの戦争は、下手をすると第3次世界大戦になりかねない。各国の武力での争いは、最強の武力である核兵器の所持に至り、核戦争となれば、一人一人の命ばかりか、人類の滅亡を結果するだろう。「島嶼防衛」が想定している米・日対中戦争も同様な結果をもたらしかねない。以下本題に入る。(続く)
石垣島大崎の電信所の碑解説(2022年2月24日山本英夫撮影)
1897年に日本の軍事有線網が北海道から台湾まで繋がった。1897年とは1894-95の日清戦争直後のこと。日本は、この戦争で、台湾を清から分割させ、植民地支配していく。海底ケーブルは、鹿児島県南大隅町大泊港ー種子島ー屋久島、種子島-奄美大島ー沖永良部島、奄美大島ー沖縄島ー西表島ー石垣島、西表島ー台湾(基隆)に繋がった。
そして125年が経った。今時は有線・無線・宇宙(偵察衛星による交信や位置情報)と3次元になっている。科学技術と戦争の相関関係は、深い、深い。「明治」の頃から始まったのだ(この写真解説は本稿で多少書き換えた)。