問題提起:軟弱地盤だから予定通りにできないと安心して、いいのだろうか?!
「オスプレイ等プチ飛行場計画」への変更を憂慮する
山本英夫(フォト・ジャーナリスト/名護市在住)
(Ⅰ)この問題を考えた経緯
①コロナ禍の中で
沖縄は2020年2月からコロナ禍に置かれ、私たちの暮らしぶりも激変した。辺野古テント村(浜テント)は、ほぼ休業状態となり、おかげで私は、久しぶりに基地ウォッチヤーになることができた。キャンプ・シュワブ(名護市等)、キャンプ・ハンセン(金武町等)、ブルービーチ(金武町)、普天間基地(宜野湾市)、嘉手納基地(嘉手納町等)、ホワイトビーチ(うるま市)、那覇軍港(那覇市)、那覇空港(那覇市)などの一端を私のブログにあげてきた。
私は、2021年7月末日をもって、辺野古テント村のボランティア・スタッフを辞めた。こうした中で、新たに見えてきたことがある。
②これは「何を今更の情報」なのだろうか?
2021年11月25日、玉城デニー沖縄県知事は、防衛省による大浦湾側の「変更承認申請」に「不承認」処分で答えた。やっと重い腰を上げたのだ。今私が注目していることは、いささか別の問題・視点にある。
11月28日10時過ぎ、私は東京で電車に乗っていた。そこへ、お二人から立て続けに同じ記事のことが伝えられた。ひとりは、ご自身の地元紙が沖縄のことを載せているのは珍しいと、「2015年から軟弱地盤だと国は知っていた」とあるよと。そしてジャーナリストの先輩からは、同様の記事が沖縄タイムスに出ているが、「間の抜けた記事だ」と伝えられた。
下車後、私は、東京新聞を買い、お二人の情報を確認した。これは、もしかして…。今だからこそ 改めて、読み直すべきではないかと、私は直感した。
③欺され続けてきた私たち
思えば、普天間基地の「返還」が日米政府で合意されたのは1996年12月のSACO合意。あれから25年が経過した。しかし普天間基地は、25年経った今でも全く揺らいでいない。「負担軽減」とは名ばかりだ。日米政府は、「普天間移設」を唱え、これが「唯一の解決策」だと主張し続けている。全国各地の新聞も同様の報道しかしていない。沖縄では「新基地建設」であり、沖縄の民意は反対だと書いている(八重山日報を除く)。
今、私が主張したいことは、この「普天間・新基地」問題に収斂させてはならないということだ。時は25年を経て、沖縄・琉球諸島が〈対中軍事戦略〉の最前線におし上げられてしまった。米国海軍基地佐世保と沖縄は離れているから、沖縄に米軍基地が集中している合理性はないなどと論陣を張る人がいる。しかし、そうした意見は、米中が張り合う時代の波に乗り越えられ、論拠を崩されてしまったのではないか。
米国は2006年の「グアム再編」(以降)で沖縄の米国海兵隊をグアム・ハワイ・オーストラリアなどに下げ、日本軍(「自衛隊」)を前に出したがっていた。今や、再び米国・米軍が台湾有事まで想定し、中国と事を構える軍事戦略・軍事態勢を組もうとしている。
私は一連の現実を直視したい。沖縄の私たちは、欺され続けてきたのではないか。「軟弱地盤だから予定通りできないと安心して、いいのだろうか?!」 そのカラクリを考えたい。
(Ⅱ)米国・米軍は新基地建設の当事者だ
①2つの文書から
玉城知事が「不承認処分」を出した。私もこれを支持し歓迎している。一方で、新基地建設を巡る行政的な進行は、国と沖縄県の対立が前面に立っている。私たちは問題の本質がどこにあるのかを、はぐらかされてきたのではあるまいか。
私が示した先の記事「軟弱地盤15年に把握」(共同通信の配信記事)は、事情を知る人から見ると、確かに、何を今更だ。沖縄の市民運動が情報公開請求し、主張し続けてきた周知の事実。それでも私は今回の報道の意義を次の点にあると考える。
(a)当事者である防衛省が認めたことの重さ。これを裏返すと、国は何故19年1月まで認めなかったのかという問題が浮上してくる。18年12月14日、防衛省は辺野古側の海に護岸建設をすすめ、閉じた壁に土砂投入を始めた。先ずは辺野古側の工事強行だと、工事を進めてきた。そして工事強行を既成事実に、自然を壊すばかりか、沖縄の自治権を侵し続けている。
米日安保政治に引きつけて考えよう。2015年4月27日、米日軍事指針を改定し、同年9月19日安保法制を強行採決。日本政府は、こうした反対運動を抑えこみ、沖縄を分断し、日本国(日本国民)の米国への従属を一層推し進めてきた。
(b)15年4月に関する報道と、2020年4月21日付け「埋立地用途変更/設計概要変更承認申請書」(沖縄防衛局)の中から見えてきたこと。私はこの申請書(全文19頁)を読んでいた。沖縄防衛局は、変更申請の根拠(軟弱地盤の具体性)を示さず、改善策も曖昧だ。こんな申請書で「承認しろ」という方が、無理強いであり、そもそもおかしい。沖縄県を見下した文書だ。
私は、この中に記載されている次の字句に注目した。「米軍の要望を踏まえ、斜路(引用者註:海から水陸両用装甲車等が基地に上がり下りする道)の向き等が変更になった」(p2、p15)とある。新たな米軍飛行場等の建設であり、防衛省が米軍の要望を取入れることは、そうだろう。しかし沖縄防衛局(防衛省)が提出した公文書に「米軍の要望」が出た事が重大な意味をもつ。
ここで考えるべき事は、「15年4月」に軟弱地盤を知った防衛省は、米軍にこのことを報告しただろう。日米関係の主導権を常に握っているのは米国だ。日本政府が米国政府に隠し事ができるとは考えられない。この衝撃は、在沖米軍・在日米軍どころか、米国政府国防省・国務省にも伝えられただろう。当然、彼等自身も軟弱地盤について詳細に検討したはずだ。このへんの事実関係は全く隠されている。防衛省が検討し、様々な「米軍の要望」をまとめた「滓(カス)」が先の承認申請書だろう。結果、変更申請を沖縄県に提出するのに5年もかかった。もちろん防衛省としても、詭計を巡らせてきただろう。日本政府は、この一連の工事の当事者たる米軍を後景に隠し、深いベールを被せてきたのではないだろうか。
②米日地位協定と「日米合同委員会合意事案概要」から考える
私が「日米関係」なる言葉を使うことは限定的だ。普段「米日関係」「米日同盟」と言っている。誠に遺憾ながら、米国が決定権を握っているからだ。安保・軍事関係については露骨にそうだ。
ここで、日本国憲法の上に立つ米日安保・米日地位協定のことを考えたい。同協定は米国への基地の提供と管理権(全ての管理権を米軍に保障)、軍人/軍属に対する特権的扱いを定め、刑事裁判権・民事裁判権の特例を定め、経費の分担等を定めた、全文28条からなる協定だ。大問題が2つある。実は条文(文面)にない裏密約が多く、実態が闇に隠されている。安保も政治であるが、国会の議論を経ないまま米国の軍事優先がまかり通っており、国民主権を壊してきた。
具体的な運用は第25条「合同委員会」が非公開のまま、議論した結果を定めている。具体的なことがらが隠され続けている。私は、吉田敏浩著「『日米合同委員会』の研究―謎の権力構造に迫る」(創元社 2016年刊)を読んだ。同書は首都圏の空に広がる「横田空域」の秘密に迫るなど、具体的で興味深い。これを読み、「日米合同委員会合意事案概要」を防衛省のHPから検索し(2013年1月から2021年12月分まで)、沖縄の基地に係わる事項を中心にプリントアウト(300枚余)した。
そこに公開されているのは「議題と概要」だけだが、実に興味深い。どこそこの基地・演習場で、いつ共同演習をやる、○○の施設・区域の提供と返還、などなど。それだけだが、私たちが現場を継続的に追えば、案外リアルに見えてくるはずだ。
③辺野古・大浦湾の新基地建設に関することがらを整理する
(a)シュワブ関連の合意事項から
キャンプ・シュワブ関連の合意事項だけでも膨大だ。ここではいくつかを紹介する。第一に取り上げたいのは、2014年6月20日の「FAC6009キャンプ・シュワブの水域の使用条件の変更および一部水域の共同使用について」だ。これが2014年7月1日の「臨時立ち入り制限区域」の閣議決定に至る米日合意だ。これは、新基地建設予定地の周囲に広がる約5618000㎡におよぶ公の海を「臨時立ち入り制限区域」とし、反対・抗議行動等を排除するものだ。この決定に米軍も関与しているということだ。また、同日付で「普天間飛行場代替施設建設事業の実施に伴い、キャンプ・シュワブ内の作業ヤードを整備するために必要な下記の工事を実施することについて、日米合同委員会の承認を得た」とある。そこにある建物を解体する合意。この時点で、辺野古川両岸に予定されていた作業ヤードの設置はなくなったのだ。去年4月に沖縄防衛局が提出した「変更承認申請書」は、この件を過大に取り上げていた。
この米日の合意は重たい。基地建設の利便のために、立ち入り禁止区域を大幅に拡大するということは、その内側に、いかなるモノを造るのかを合意しているからできるのだ。使用者である米国政府・米軍が、内側の基地建設の構造に関知しない訳がない。
沖縄防衛局は、2013年3月に沖縄県に公有水面埋立法に基づく承認申請書をだしたのであり、それに先立ち、日米合同委員会(施設分科委員会、施設調整部会等を含む)で協議されたはずだ。その文書が見当たらないのは、誠に奇妙なことだ。
また、大浦湾側の辺野古弾薬庫前に造られたK―9護岸の一部は2017年4月11日に米日合同委員会で承認されている。概要には「一部」とあるだけで、長さや工法の説明は秘されている。2017年9月1日、K-1からK-3護岸とN-5護岸の建設が承認されている。そして2018年7月20日、「埋立の一部(辺野古側)」を承認。この土砂投入の工事は同年12月14日から始まった。また、関連工事である様々な工事がいつ、どのように承認したかなどが逐一合意され、それぞれの工事の一端が「日米合同委員会合意事案概要」に記されている。
そして、2021年8月5日、「埋立の一部(辺野古側)(海水面から4m~10m)」が承認されている。辺野古側の嵩上げ工事を行い、飛行場予定地にある施設群を再配置すれば、オスプレイとヘリが運用できる小規模飛行場が建設可能だ。米軍は、辺野古側だけでも造ることを了解していなければ、この先の工事に、yesと言わないだろう。自分たちが使う飛行場であり、使用に耐えない代物では日本政府に了解するはずがない。米日合同使用になるとしても同様だ。
(b)高圧線の地中化問題の衝撃
私は先に、「国は15年4月から軟弱地盤だと知っていた」報道と、変更承認申請書に着目したと書いた。その背景に、私は辺野古変電所の大規模改修工事が始まり、さらに高圧線の地中化工事も始まっていることを現場で確かめていたことがあったのだ(2021年10月1日)。
高圧線の地中化は、米軍の飛行場設置規定にある「高さ制限」に起因する問題だ。おかしなことに高圧線(鉄塔)と滑走路前の携帯局のアンテナ以外のすべての制限を超える物件を無視するという暴挙が何を意味しているのだろうか。それは米軍の安全第一であり、住民の安全は無視するという暴挙だ。
この変電所と周辺の送電線は、基本全てが米軍キャンプ・シュワブへの電力供給のための施設だ。その施設がオスプレイ等の飛行で破損したら、打撃を受けるのは米軍だ。また、米軍は、ここが飛行場となった暁に、活用したいのが地続きのキャンプ・シュワブ演習場だろう。現行のように高圧線があれば、縦横無尽な飛び方は許されない。米軍が地中化を望んだに違いない。防衛省がそれを促したのかも知れないが。
私はこれらの工事がいつから動き出したのかを確かめた。この日付に私は仰天した。経済産業省のgBizINFO(/index.html)によれば、沖縄電力株式会社の「法人活動情報」に、こうある。2016年2月5日に「キャンプ・シュワブ及びその周辺における鉄塔移設に係わる基本設計」を防衛省との間で20145346円で契約を交わし、次々と工事を進めてきたとあったのだ。
これは防衛省と沖縄電力との契約だが、2015年4月に軟弱地盤があり、計画通りいかないかもしれないと把握して、10ヶ月でゴーサインを出したのだ。15年4月から16年1月末の間に米日政府は日米合同委員会も含めて、再検討したはずだ。この時期に、予定通りいかない場合、どうするかの裏密約を交わしたに違いない。
因みに2016年といえば、2013年12月の安倍政権下の防衛計画大綱で「統合防衛力構想」を打ち出し、琉球諸島を戦場とする「島嶼防衛」を掲げていた時代だ。「緊張の度合いが高まっている」としながら、基地の抗たん性を顧みないことなど、ありえまい。
(Ⅲ)米日両国は、「軟弱地盤」を理解しているからこそ、工事を強行している
①マスタープランがある
米日政府は、2013年4月、「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」をまとめた。これは、2006年の「米軍再編実施のためのロードマップ」後の進行具合などを勘案した13年4月段階の「統合計画」だ。これに96年SACO合意以来の再編計画が集大成されている(ネットで検索可能)。そこにキャンプ・ハンセンやキャンプ・シュワブのマスタープランが作成されると記載されている。ハンセンのマスタープランは、2018年5月11日の合同委員会で承認されている。「建物:倉庫施設、整備工場、宿舎等約100棟/工作物:門、道路等」が図示されている。
シュワブについては見当たらなかった。シュワブの再編は現在進行形で進む既設の施設群の大規模な再配置を前提としており、また、海域をかかえており、マスタープランの確定版は未完成だとしても、暫定案であれ、なければ工事に支障を来たしてしまうだろう。
②このままでは普天間基地は返還されない
ところで「普天間飛行場代替施設」と謳われてきた辺野古だが、これはそもそも嘘だらけだ。手短に話そう。普天間基地は海兵隊の航空基地だ。滑走路は2800m。大型機も離発着できる。海兵隊の飛行場だが、嘉手納基地を補完する役割も担っている。米軍は、沖縄島に、嘉手納に2本、普天間に1本、伊江島に2本の滑走路をもつ。この嘉手納代替機能は辺野古の規格ではそもそも不可能だ。当初計画でも1800m(実質1600m)だから長さが足りない。その上、不均等沈降がおきる、震度1でも崩壊するとも指摘されている。また沖縄を最前線にする事態に陥れば、沖縄にある飛行場・基地は攻撃される可能性が生じる。脆い地盤は格好のターゲットとなる。抗たん性が脆弱な飛行場の建設であれば、米国・米軍が普天間基地を日本国に返す余地はないだろう。これを「普天間代替」と言い張るのは、明らかに「詐欺」だ。これは国家犯罪・米日同盟犯罪だと、私は考える。
現に普天間基地は滑走路が補修されたばかりか、以下の補修工事が行われてきた。2014年以降の工事を列挙する。2017年3月10日の合同委員会で、教育施設と工場、各一件の補修を承認、18年2月9日、格納庫一件の補修を承認、18年4月4日、汚水排水施設と独身将校用隊舎の改修の提供、19年1月18日格納庫一件の補修、提供。19年3月15日先に示した教育施設、工場、汚水排水施設の各一件の補修、提供、19年4月17日、雨水排水施設一件の補修、提供。20年8月28日、隊舎の一件の補修の承認。20年12月17日、格納庫用駐車場、保安施設各一件の承認。
現時点で私は、それぞれの金額を調べていないが、「米軍が返す」と言いながらも使い続けている施設を日本政府が税金から支払い、補修していることを私は異常だと思う。米軍は返すつもりがないからこそ、補修させており、日本政府は、それを承知の上で米軍の便宜を図っているようだ。
③軟弱地盤判明後の工事の現段階
そしてご存じの通り、辺野古側の埋め立て工事は進んでいる。さらに2021年夏以降、新基地建設工事は、新段階を迎えている。私が考えているメルクマールは以下の3点だ。
(a)沖縄電力辺野古変電所の新基地建設に対応した大改修・増強工事が始まっている。続いて高圧線の地中化工事も始まった。その意味するところは前述のとおりだ。
(b)沖縄防衛局から申請された辺野古美謝川の付け替え工事が名護市の「関知せず」の判断で、その準備が始まっている。これができない限り、大浦湾側の埋立は宙に浮く。そのまま河口を埋立れば、溢水してしまうからだ。
(c)N2護岸(約250m)の工事も始まった。大浦湾側のN2護岸は変更承認対象外だと工事を強行している。
工事は明らかに新たな段階に入っているようだ。防衛省は大浦湾側に着手していると断じて間違いない。
④軟弱地盤で建設不可―辺野古側+大浦湾の一部で可能な「オスプレイ等プチ飛行場計画」に変更か
軟弱地盤が広がる大浦湾側の工事は、一部が不可能であり、広範に地盤沈下が予想される。飛行場として機能する施設建設は難しい。できたとしても時間がかかる。抗たん性も怪しい。だとすればやめるか、予定変更を考えるだろう。にもかかわらず、防衛省は、猪突猛進。無知蒙昧なのか。
私は以下の通り考えている。そこで辺野古側の埋立造成地の長さを考えよう。辺野古側のK―4護岸とK―6護岸の長さを足すと1230mになる(辺野古崎まで)。さらに大浦湾側にN-1、N-2護岸分、それぞれ約200mできれば、1430m(単純計算だが)となる。ヘリとオスプレイ、C-130、MC-130、KC-130の輸送機、F-35B戦闘機などは、1000m滑走路で離発着可能だ。
普天間基地のオスプレイとヘリの運用を見ていれば、滑走路の長さは1000mあれば十分だろう。格納庫と駐機場をどうするかが問題となろうが、工夫の余地はあるだろう。
普天間基地は、ヘリとオスプレイが居なくなれば、嘉手納の補完機能の強化が図られるだろう。外来機の運用も俄然増えるだろう。
米軍・米国海兵隊は、使える飛行場ならば、欲しいに決まっている。シュワブの水陸両用部隊をオスプレイで駆けつけた部隊がサポートするなど、また、逆もあり得る。中国への小規模・分散・同時多発的な攻撃態勢も実行可能となる。
岸田政権は実質改憲をバリバリ進めている。沖縄に対して「基地の島」・「戦場となる島」を受け入れる政治に切り替えようと本腰を入れている。「プチ飛行場」へ転換すると、いつ言い出すのか分からないが、沖縄が抵抗したからだと言い訳し、開き直るのではないか。もしも2022年9月の県知事選で、私たちの知事候補が負けたなら、その後がそのタイミングとなるだろう。私は、そう睨んでいる。
(Ⅳ)見通しと今後にむけて
改めて私なりの見通しと今後について、まとめたい。
①玉城知事の「不承認」処分を巡って
玉城知事は、対話を求めながらも、またもや裁判闘争に押し込まれるだろう。国は、またまた行政不服審査法(審査請求)を沖縄県に押しつけてきた。「私人の権利救済」が、「国家権力の盾」に何故ねじ曲げられるのか。私が思うに、公有水面埋立法では、安保特例法的な強権発動は想定されていないだろう。しかし沖縄防衛局は、沖縄県の『不承認』処分を行政不服審査請求の「不服」を上級庁である国土交通大臣に申し立て、同大臣が沖縄県知事の『不承認』を取り消す裁決を求めるのだろう。こうなると、公有水面埋立法第4条が定める自治体の長の権限をほぼ自動的に奪われてしまう。こうした事態は、自治権を認めない戦前回帰となるやり方であり、安保特例法的な強制力の発動だともいえるだろう。
問題は、具体的な新基地建設の是非ばかりか、あの侵略戦争/敗戦から漸く地方自治が日本国憲法に掲げられたが、「復帰50年」の中で再びズタズタにされていくのだろうか。再生を勝ち取れるだろうか。
②今という時代の中で
やはり私が思うに、改めて米国とは何なのかを考えたい。「米日同盟」だと嬉々とする日本政府と「日本人」を問うことが重要ではないか。私も「日本人」だから、慚愧に耐えないのだが。
来る1月23日はキャンプ・シュワブをかかえる現地名護市の市長選だ。現職渡久地武豊と岸本洋平の一騎打ちだ。しかし妙に穏やかだ。火花を散らす様がまだ見えてこない。私たちは、多くのことを考えなければならないが、嘘で塗りかためられた新基地建設に対して、どれだけの反撃ができるのだろうか。名護市にとって、この問題は具体的な問題であると同時に、自治と人権、民主主義を如何に考えるかの問題でもある。
また米国が進め、日本政府が付き従っている中国との戦争について、私たちはどれだけリアルに感じているだろうか。この問題は、与那国島・石垣島・宮古島の問題のみならず、本丸は沖縄島だ。その一端がうるま市の勝連半島への対艦ミサイル部隊の配備だ。反応が鈍い。戦争の軍事ネットワークは北海道から九州まで、馬毛島・種子島、奄美大島から続く琉球諸島を戦場にしていく動きなのに、余にも鈍感すぎる。
③議論できる関係を作りだそう。
沖縄でも全国各地でも、どうにも議論できる関係が弱いのではないか。この国は安保を「公共財」だと主張し、新基地建設を「公共事業」だと称している。私は「公共」という以上、そこに主権者・私たちの存在と意識を外されてはならないと考える。国などの行政(自治体も)は関連する情報を公開し議論できる場を拓かない限り、私たちはそれらを「公共事業」だと認めてはならぬ。そもそも殺すための「公共事業」があっていいのだろうか。闊達な議論を作り出していこう。
議論することは難しい。相手の意見、自分の意見、第三者の意見を受け止めながら、前に進める手法と関係性を生み出していきたい。こうした基本を避けている限り、私がここで提起したことを議論することは難しいだろう。
④歴史的に空間的に、はたまた軍事的に考える
私たちが生きているのは、この時間であり、この空間だ。歴史に「もしも」はないが、今からのことを考えるためには、「もしも」と考えることは有効だろう。
現代の軍事技術は電子でつながっている。軍事網なのだ。素早く地球上を駆け巡る。この意味で76年前の時代とは全く異なっている。待ったなしだ。それだけに平時の、日頃から考えておかなければ、どうにもならない。私たちがどうにもかなわぬと思ったら、その時点で負けだ。(2021年12月23日)
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