広島から帰宅後、新聞の切り抜きをやり、ようやく12月29日の琉球新報を確認。「那覇地検、宮城さん在宅起訴」とある。サブタイトルに「威力業務妨害 米軍廃棄物、ゲート前に」とあり、検察(国)に「違法」とされた場面が浮かぶ。だが、本件には2つのカラクリがある。①沖縄県警から書類送検された廃棄物処理法は何故不問に付されたのか?、②そもそも日米地位協定のありかたが完全に無視され、正当化されており、起訴は米日関係の歪んだ姿を隠すものだ。
2021年12月28日、那覇地検に起訴され、被告とされた宮城秋乃さんは、そもそも蝶類研究者。やんばるの森などで蝶類の研究にあたってきた。その中で、2016年12月北部訓練場3987ヘクタールが返還されたことや、やんばるの森が大きな傷を押しつけられたことを肌身で感じてきただろう。6カ所の新たなヘリパッドが住民・県民の反対の声を押しつぶしながら造られたのだ。現存の北部訓練場は3658ヘクタール。ところが返還した跡地に米軍が廃棄した弾丸・薬莢、砲弾、残飯等等が残されたままだ。この地域の大半は国有林(林野庁が管理)だ。
宮城さんは、このままでは自然生態系に害を及ぼし続ける、日米地位協定がどうであれ、後始末を行えと、演習場跡地から拾い出してきた物をゲート前に並べても来た。検察は、威力業務妨害だというが、宮城さんによって、自らの非行を正されている米軍を全面的に守るための起訴なのだ。
本筋は②にある。だがその前に、検察が廃棄物処理法に基づく送検を何故不起訴にしたのだろうかが、私には興味深い。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第1条は「この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、ならびに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」とある。
米軍の所業は、この法の趣旨を遵守しているだろうか。跡地の惨状を見れば、とうてい遵守しているとは言えまい。もしも遵守していれば、宮城さんの手を何度も何度も煩わせることなど起きなかっただろう。
同法第2条に「廃棄物」の定義があり、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられている。米軍はあきらかに「事業活動」に伴う産業廃棄物を出しており、米軍の(北部訓練場から排出された)廃棄物には「爆発性、毒性、感染性」等の「特別管理産業廃棄物」も含んでいる。
また同法第11条に「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」とあるのだ。これを補完する形で「地方公共団体の処理」が規定されている。
米軍は、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の廃棄処分を自ら適切に行っておらず、放置してきたから、返還時に累積していた堆積物が見過ごされてきたのだろう。だからこそ、地検がこの罪状で宮城さんを起訴してしまうと、やぶ蛇となる。米軍が同法などの国内法の取り扱いを完全に無視していることを天下にさらしてしまうことになりかねない。同時にこの国の姿も浮き上がる。沖縄防衛局が廃棄物の処分よりも、もみ消しに加担しているが故に、跡地の総合的な処理を怠ってきたのだ。処理にかかった費用が5億5千万円だそうだが、まだまだ何倍もの金額を支出しなければならないことに、疑問を感じていないようだ。
そして②の問題。地位協定第4条「基地の返還時の原状回復・補償」の1項にこうある。「合衆国は、この協定の終了の際またはその前に日本国に基地を返還するに当たって、当該基地をそれらが合衆国軍隊に提供されたときの状態に回復し、またはその回復の代わりに日本国に補償する義務を負わない」とあるのだ。
この協定によれば、米軍のやらずぼったくりを認めていることが明らかだ。米軍のご都合次第で、なんでもありだと公然と認めているわけだ。
宮城さんの闘いは、極めて微々たる要求であり、願いにすぎない。しかしこうしたことは、沖縄県民が日々負わされていることでもあり、私たちは、見過ごしてはならない。また、こうしたことは日本国民全体が負うべき課題だろう。税の使用の問題であり、何も言えない日本国という屈従の姿を直視すべきだろう。この自覚をもてなければ、一歩も進まない。
被告側弁護団は、表現の自由に対する弾圧だとも言っている。基地が、基地を守る地位協定が私たちの人権を常に侵害しているのだと、私たちは如何にしたら気づくのだろうか? 私も、宮城秋乃さんを孤立させず、前を向く。