2022-0716-man4424
万葉短歌4424 色深く4096
色深く 背なが衣は 染めましを
御坂給らば まさやかに見む 物部刀自売
4096 万葉短歌4424 ShuJ587 2022-0716-man4424
□いろぶかく せながころもは そめましを
みさかたばらば まさやかにみむ
○物部刀自売(ものべの とじめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第132首。左注に、「右一首妻〔(藤原部等母麻呂の妻の)〕物部刀自売」、左注第二に、「二月廿九日武蔵国部領防人使(さきもりの ことりづかひ)掾(じょう)正六位上安曇宿祢三国(あずみのすくね みくに)進(たてまつる)歌数廿首 但拙劣歌者不取載之」(進歌二十首のうち12首を取り載せる)。
【訓注】色深く(いろぶかく=伊呂夫可久)。給らば(たばらば=多婆良婆)[「<給(たば)る>は<給(たま)はる>の約」]。
2022-0715-man4423
万葉短歌4423 足柄の4095
足柄の 御坂に立して 袖振らば
家なる妹は さやに見もかも 藤原部等母麻呂
4095 万葉短歌4423 ShuJ587 2022-0715-man4423
□あしがらの みさかにたして そでふらば
いはなるいもは さやにみもかも
○藤原部等母麻呂(ふじはらべの ともまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第131首。左注に、「右一首埼玉郡(さきたまのこほりの〔(埼玉県の東端部を占める地域)〕)上丁藤原部等母麻呂」。
【訓注】足柄の 御坂(あしがらの みさか=安之我良乃 美佐可)[2019-0926-man3371「万葉短歌3371 足柄の3116」注参照]。立して(たして=多志弖)、家(いは=伊波)、見もかも(みもかも=美毛可母)[立ちて(たちて)、家(いへ)、見むかも(みむかも)、の訛り・東国形]。
2022-0714-man4422
万葉短歌4422 我が背なを4094
我が背なを 筑紫へ遣りて 愛しみ
帯は解かなな あやにかも寝も 服部呰女
4094 万葉短歌4422 ShuJ586 2022-0714-man4422
□わがせなを つくしへやりて うつくしみ
おびはとかなな あやにかもねも
○服部呰女(はとりべの あざめ)=左注参照。下記注。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第130首。左注に、「右一首妻(めの〔(服部於由の妻)〕)服部呰女」。
【訓注】筑紫(つくし=都久之)。愛しみ(うちくしみ=宇都久之美)[「4413の<ま愛(かな)しきなどと>同様、女から男に対していった珍しい例」]。なな(奈々)[「打消の助動詞」]。寝も(ねも=祢毛)[「<寝む>の東国形」]。
【編者注-呰】画数=8、9。音読み=セキ・セイ・ジ・シャク・シ・サ、訓読み=そしる・きず。中文=zi(3)。(「モジナビ」「漢典」)
2022-0713-man4421
万葉短歌4421 我が行きの4093
我が行きの 息づくしかば 足柄の
峰延ほ雲を 見とと偲はね 服部於由
4093 万葉短歌4421 ShuJ586 2022-0713-man4421
□わがゆきの いきづくしかば あしがらの
みねはほくもを みととしのはね
○服部於由(はとりべの おゆ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第129首。左注に、「右一首都筑郡(つつくのこほりの〔(横浜市の北部。保土ヶ谷区・旭・緑区のあたり。1994年以後の都筑(つづき)区も)〕)上丁服部於由」。
【訓注】行き(ゆき=由伎)[「名詞形。旅」。01-0020武良前野逝 標野行(むらさきのゆき しめのゆき)、以下、多数]。息づくしかば(いきづくしかば=伊伎都久之可婆)[「<息(いき)づかしけば>の東国形。…溜息が出るほど苦しい…」]。足柄(あしがら=安之我良)。延ほ(はほ=波保)、見とと(みとと=美等登)[それぞれ、延ふ(はふ)、見つつ(みつつ)、の東国形]。
2022-0712-man4420
万葉短歌4420 草枕4092
草枕 旅の丸寝の 紐絶えば
我が手と付けろ これの針持し 椋椅部弟女
4092 万葉短歌4420 ShuJ586 2022-0712-man4420
□くさまくら たびのまるねの ひもたえば
あがてとつけろ これのはるもし
○椋椅部弟女(くらはしべの おとめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第128首。左注に、「右一首妻(めの〔前歌、物部真根の妻の〕)椋椅部弟女」。
【訓注】草枕(くさまくら=久佐麻久良)。丸寝(まるね=麻流祢)。我が手(あがて=安我弖)。針持し(はるもし=波流母志)[「<針持ち(はりもち)>の訛り」]。
2022-0711-man4419
万葉短歌4419 家ろには4091
家ろには 葦火焚けども 住みよけを
筑紫に至りて 恋しけ思はも 物部真根
4091 万葉短歌4419 ShuJ586 2022-0711-man4419
□いはろには あしふたけども すみよけを
つくしにいたりて こふしけもはも
○物部真根(もののべの まね)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第127首。左注に、「右一首橘樹郡(たちばなのこほりの〔(神奈川県川崎市と横浜市北部)〕)上丁物部真根」。
【訓注】家(いは=伊波)、葦火(あしふ=安之布)、住みよけ(すみよけ=須美与気)、恋しけ思はも(こふしけもはも=古布志気毛波母)、はそれぞれ、家(いへ)、葦火(あしひ)、住みよき(すみよき)、恋しく思はむ(こひしくもはむ)、の訛り・東国形。
2022-0710-man4418
万葉短歌4418 我が門の4090
我が門の 片山椿 まこと汝れ
わが手触れなな 地に落ちもかも 物部広足
4090 万葉短歌4418 ShuJ586 2022-0710-man4418
□わがかどの かたやまつばき まことなれ
わがてふれなな つちにおちもかも
○物部広足(もののべの ひろたり)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第126首。左注に、「右一首荏原郡上丁物部広足」。
【訓注】我が門の片山椿(わがかどの かたやまつばき=和我可度乃 可多夜麻都婆伎)[「いつも心の中にある女の譬え」]。なな(奈々)[「打消の助動詞<な>に願望の助動詞<な>が接した形…。…東国の歌だけに見られる…」。14-3408祢尓波都可奈那(ねにはつかなな)、-3514伎美尓都吉奈那(きみにつきなな)、など」]。地に落ちもかも(つちにおちもかも=都知尓於知母加毛)[「<地に落つ>は他の男に身を任せることの譬え。<もかも>は<むかも>の東国形」]。
2022-0709-man4417
万葉短歌4417 赤駒を4089
赤駒を 山野にはかし 取りかにて
多摩の横山 徒歩ゆか遣らむ 宇遅部黒女
4089 万葉短歌4417 ShuJ586 2022-0709-man4417
□あかごまを やまのにはかし とりかにて
たまのよこやま かしゆかやらむ
○宇遅部黒女(うぢべの くろめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第125首。左注に、「右一首豊島郡(としまのこほりの〔(東京都豊島区を中心に、文京・荒川・北・板橋区のあたり)〕)上丁椋椅部荒虫之妻(くらはしべの あらむしが めの)宇遅部黒女」。
【訓注】はかし、かにて、徒歩(はかし、かにて、かし=波賀志、加尓弖、加志)[「<はなち、かねて、徒歩(かち)>の訛り」。11-2425歩(かちより)、13-3314(長歌)歩従(かちより)、など]。
2022-0708-man4416
万葉短歌4416 草枕4088
草枕 旅行く背なが 丸寝せば
家なる我れは 紐解かず寝む 椋椅部刀自売
4088 万葉短歌4416 ShuJ586 2022-0708-man4416
□くさまくら たびゆくせなが まるねせば
いはなるわれは ひもとかずねむ
○椋椅部刀自売(くらはしべの とじめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第124首。左注に、「右一首妻〔(前歌4415歳徳の)めの〕椋椅部刀自売」。
【訓注】丸寝(まるね=麻流祢)[「<丸寝(まろね)>の訛り」]。家(いは=伊波)[「<家(いへ)>の訛り」。夫は<いへ=伊弊>。「…仮名違い…夫婦の歌においてイヘ・イハの両形に分かれることなど…家持が尊重した…」]。
2022-0707-man4415
万葉短歌4415 白玉を4087
白玉を 手に取り持して 見るのすも
家なる妹を また見てももや 物部歳徳
4087 万葉短歌4415 ShuJ586 2022-0707-man4415
□しらたまを てにとりもして みるのすも
いへなるいもを またみてももや
○物部歳徳(もののべの としとこ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第123首。左注に、「右一首主帳荏原郡〔(えばらのこほりの;東京都大田・品川・目黒・世田谷区のあたり)〕物部歳徳」。
【訓注】白玉(しらたま=志良多麻)[「真珠」]。持して、のす(もして=母之弖、のす=乃須)[「<持ちて>、<なす(=~のごとく)>の訛り」]。ても(弖毛)[「<てむ(…)>の東国形」]。もや(母也)[「詠嘆の終助詞であろう。ただし類例を見ない」]。
2022-0706-man4414
万葉短歌4414 大君の4086
大君の 命畏み 愛しけ
真子が手離り 島伝ひ行く 大伴部小歳
4086 万葉短歌4414 ShuJ585 2022-0706-man4414
□おほきみの みことかしこみ うつくしけ
まこがてはなり しまづたひゆく
○大伴部小歳(おほともべの をとし)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第122首。左注に、「右一首助丁秩父郡(ちちぶのこほりの〔(埼玉県秩父郡および秩父市)〕)大伴部小歳」。
【訓注】大君(おほきみ=於保伎美)。愛しけ(うつくしけ=宇都久之気)[「<愛しき>の東国形。いじらしい、かわいい」。<うつくし>訓の出現は16か所、<~き>は2か所、<~け>はここだけ]。離り(はなり=波奈利)[「<離れ>の東国形」]。
2022-0705-man4413
万葉短歌4413 枕大刀4085
枕大刀 腰に取り佩き ま愛しき
背ろが罷き来む 月の知らなく 大伴部真足女
4085 万葉短歌4413 ShuJ585 2022-0705-man4413
□まくらたし こしにとりはき まかなしき
せろがまきこむ つくのしらなく
○大伴部真足女(おほともべの またりめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第121首。左注に、「右一首上丁那珂郡(なかのこほりの〔(埼玉県児玉郡および本庄市の一部)〕)桧前舎人(ひのくまのとねり)石前之妻(いはさきがめの)大伴部真足女」。下記注。
【訓注】大刀(たし=多之)[「<大刀(たち)>の訛り」]。月(つく=都久)[「<月(つき)>の訛り」]。
【依拠本注-夫妻姓】この夫婦、夫と妻との姓(せい)が違っているけれども、これは、当時子女は父の姓を名告るのが習いであったことによる(…)。下の4421と4422の作者(夫婦)が姓を等しうするのは、むしろ珍しい。
2022-0704-man4412
万葉短歌4412 島陰に4084
島陰に 我が船泊てて 告げ遣らむ
使をなみや 恋ひつつ行かむ 大伴家持
4084 万葉短歌4412 ShuJ576 2022-0704-man4412
□しまかげに わがふねはてて つげやらむ
つかひをなみや こひつつゆかむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第120首。短歌四首の第4首。左注に、「二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持」。
【訓注】島陰(しまかげ=之麻可気)。我が船泊てて(わがふねはてて=和我布祢波弖氐)。
2022-0703-man4411
万葉短歌4411 家づとに4083
家づとに 貝ぞ拾へる 浜波は
いやしくしくに 高く寄すれど 大伴家持
4083 万葉短歌4411 ShuJ576 2022-0703-man4411
□いへづとに かひぞひろへる はまなみは
いやしくしくに たかくよすれど
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第119首。短歌四首の第3首。
【訓注】家づと(いへづと=伊弊都刀)。貝(かひ=可比)。いやしくしくに(伊也之久々々二)。
2022-0702-man4410
万葉短歌4410 み空行く4082
2022-0702-man4410
万葉短歌4410 み空行く4082
み空行く 雲も使と 人は言へど
家づと遣らむ たづき知らずも 大伴家持
4082 万葉短歌4410 ShuJ576 2022-0702-man4410
□みそらゆく くももつかひと ひとはいへど
いへづとやらむ たづきしらずも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第118首。短歌四首の第2首。
【訓注】み空(みそら=美蘇良)。家づと(いへづと=伊弊頭刀)。たづき(多豆伎)。