クリス・ホイがロベール・シャーパンティエール(フランス)以来、72年ぶり(1936年のベルリン)に同一五輪大会自転車競技の三冠を達成。
http://en.beijing2008.cn/news/sports/headlines/cyclingtrack/n214564036.shtml
さらにいえば、トラックレースだけの三冠記録というのは、今は公式記録から除外されている、1906年のアテネ大会(中間大会)のフランチェスコ・ヴェッリ(イタリア)以来、102年ぶりの快挙を達成。この他、同一大会における自転車競技三冠王は、1896年(アテネ)にポール・マソン(フランス)が達成している他、1904年のセントルイスでは、マーカス・ハーリー(アメリカ)が何と四冠を達成している。
ケイリンは間違いなく勝てる可能性があった。スプリントも、今年の世界選手権の戦績から見て、金の可能性は十分にあった。問題はチームスプリントだった。
イギリスチームは、ここ数年、世界選手権のチームスプリントでは、ホイ、クレイグ・マクリーン、ロス・エドガーのスコットランドトリオ及び、ジェミー・スタッフが時折加わる形で挑んできたが、フランスにはどうしても勝てなかった。
そこで今回、マクリーンを代表から外し、エドガーはケイリンに専念させ、チームスプリントのスペシャリストともいえるスタッフを第1走に、そして、ジュニア世界選手権で三冠王に輝いたことがある若手の有望株、ジェイソン・ケニーを第2走者に据え、ホイがアンカーを務める策に出た。
すると、何と現在35歳のスタッフが予選で、17秒198という、いまだかつて誰もマークしたことがないタイムを出した。対してフランスの1走、グレゴリー・ボジェは17秒419に止まった。その後イギリスは、42秒950という、驚愕のタイムをマークし、2位フランスに0.591秒の「大差」をつけた。つまり、この時点においてイギリスの優勝はほぼ確定したようなもの。
ケイリンでは予選道中から危なげのない戦いぶりだったし、スプリントでも予選タイムはトップだった上に、オールストレート勝ちを収める圧勝で三冠。
ホイはもともとは1kmタイムトライアルのスペシャリストだった。2004年のアテネでは同種目で金メダルを獲得したが、翌年の世界選手権の同種目ではテオ・ボスに完敗。さらに1kmTTがオリンピックから除外されるという話となり、一時は引退の話まで出たほどだったが、1kmTT除外の話を契機に、まずはケイリンへ本格的に取り組むようになり、2007年の世界選手権ではボスらを一蹴。さらにホイはスプリントにも取り組むようになるが、当初は駆け引きの面が拙い面もうかがえた。
ところが今年の世界選手権において、連覇中のボスに逆転勝ちしてから勢いに乗ってしまった。何とスプリントでも優勝。そして北京での三冠に繋がったといっても過言ではない。
そういえば、つい昨年までは驚愕の強さを誇っていたテオ様ことボスは、ホイにことごとく敗退するようになって以降、全く精彩がなくなってしまった。それは、ホイにどうやって勝てるか、ということを考えあぐねているといった様子がうかがえた。結果、ボスは北京ではメダル獲得ゼロという、信じられない惨敗を喫してしまった。
その他の選手といえば、ホイには勝てないが、何とかその2番手には入ろうといった様相を見せる選手ばかり。となれば、ホイにかなう敵はいなかったということになる。
4年後はロンドンか。そのロンドンでは36歳となるホイだが、恐らく現役はそこまでやるのではないか。ま、4年後に今以上の上積みが期待できるとは思えないが、少なくとも自転車短距離界は、いかにしてホイを破るかという一点に今は絞られているのではなかろうか。