
石破首相 高額療養費制度 負担上限額 8月の引き上げ見送り表明 NHK 2025年3月7日 21時11分
医療費が高額になった患者の自己負担を抑える高額療養費制度について、石破総理大臣は、患者が不安なまま見直しを行うのは望ましくないなどとして、ことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
高額療養費制度をめぐり、石破総理大臣は7日夜、総理大臣官邸で、がんや難病の患者団体と面会し、要望を聞いたあと、福岡厚生労働大臣と加藤財務大臣、それに自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長らと相次いで会談しました。
このあと石破総理大臣は記者団に対し「これまでも指摘を真摯に受け止め『多数回該当』の方の負担の据え置きや、令和8年度以降の所得区分の細分化の再検討などを行い、その点については、一定の評価をもらったが、ことしの分の定率改定を含め、今回の見直しについては、なお理解を得るには至っていない」と述べました。
その上で「患者団体に理解をいただけない理由の1つとして検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘をいただいており、政府として重く受け止めなければならない。患者の皆さまに不安を与えたまま、見直しを実施することは望ましいことではない」と述べました。
そして国会審議の中で立憲民主党や日本維新の会に加え、与党からも意見が出たことに触れ「ことし8月に予定されている見直し全体について実施を見合わせることを決断した」と述べ、高額療養費制度のことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
さらに「患者の皆さまにとって大切な制度であるからこそ、丁寧なプロセスを積み重ねることで、持続可能なものとして、次の世代に引き継がれるように心から願い、努力をしていきたい」と強調しました。
また「新年度予算案が衆議院を通過したのちにこのようなことを申し上げるのは大変申し訳ないことだと思っているが、引き続き年度内成立に向けて努力していく。
極めて厳しい決断であることを理解いただきたい」と述べました。そして引き上げの見送りを踏まえつつ予算案の年度内成立を図るため必要な手続きをとるよう、与党に指示したことを明らかにしました。
「所要の手続き検討するよう指示」
「先ほど自民党の森山幹事長と小野寺政務調査会長に所要の手続きについて検討するよう指示し、公明党の西田幹事長と岡本政務調査会長にも協力をお願いした」と述べました。
その上で「新年度予算案が衆議院を通過したのちにこのようなことを申し上げるのは大変申し訳ないことだと思っているが、引き続き、予算案の年度内成立に向けて努力していく。極めて厳しい決断であることを理解いただきたい」と述べました。
「立憲、維新、公明、自民からも意見ちょうだいした」
石破総理大臣は、「審議の過程で立憲民主党の野田代表、委員会で質問をいただいた日本維新の会、公明党、衆参の自民党からもそれぞれご意見をちょうだいした」と述べました。
「持続可能なものとして引き継がれるよう努力」
石破総理大臣は、「高額療養費制度が患者の皆さまにとって大切な制度であるからこそ、丁寧なプロセスを積み重ねることで、持続可能なものとして、次の世代に引き継がれるように心から願い、努力をしていきたい」と述べました。
「予算案を再修正か早急に結論」
石破総理大臣は、記者団から新年度予算案を再び修正することになるか問われたのに対し「いま方針を決定し、自民・公明両党の幹事長と政務調査会長に指示し、協力をお願いしたところだ。手法については今後、検討し、早急に結論を得たい」と述べました。
予算修正された場合 衆議院に戻す「回付」手続き
衆議院で可決された予算案や法案が、参議院で修正された場合、衆議院に戻す「回付」と呼ばれる手続きがとられます。
この場合、衆議院で改めて修正に「同意」するかどうか採決が行われます。
衆議院の規則によりますと、回付された予算案や法案は委員会には付託せず、本会議での審議の対象となります。
衆議院事務局によりますと、今回、参議院で修正された予算案が、衆議院に戻されて成立すれば、今の憲法のもとでは初めてになるということです。
一方、予算案が参議院から回付された例は、衆参で多数が異なる「ねじれ国会」のもと、麻生内閣で2009年1月に成立した補正予算があります。
この時参議院では、多数を持つ当時の民主党など野党が提出した修正案が可決され、衆議院に回付されましたが、与党が多数を占める衆議院本会議でこれを不同意としました。
そして、衆参の両院協議会が開かれましたが、意見が一致せず、予算について「衆議院の優越」を認めている憲法の規定に基づき、衆議院で可決された政府の予算案が成立しました。
患者団体「決断には感謝 今後の議論には患者も」
高額療養費制度について、石破総理大臣がことし8月の負担上限額の引き上げを見送る方針を示したことについて、「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は7日夜、会見し、「決断には感謝したい。ただ、秋までに改めて制度のあり方を検討するということだが、そのプロセスについては言及がなかった。今回は短時間の審議で引き上げ案が示されたことが一番の問題だったと思っている。再び不十分な検討の中で同様の引き上げ案が出てくることを懸念している。今後の議論には患者も関わらせてもらいたい」と話しています。
また、「日本難病・疾病団体協議会」の辻邦夫常務理事は「石破総理大臣の決断は大変評価したいが、ここまで結論を先延ばしにしてきたことには問題があったと思う。今回は患者だけではなく、学会や地方自治体などからも反対の声が上がったが、今後は拙速に結論を出さないことを期待したい」と話しています。
なぜ方針転換?政治部 佐々木記者の解説
Q1.石破総理はことしの引き上げは予定通り行う考えを強調していた。なぜ方針を転換?
A1.やはり与党内から厳しい声が相次いだことが大きかったと思います。衆議院通過を受けて、参議院での予算審議はおととい始まったばかりですが、与党側からさらなる対応を強く求められました。
夏に選挙を控えているという参議院の事情もあってか、ある与党幹部は「地元や地方をまわっていると、多くの怒りの声が聞かれる」と話していました。
このため、石破総理は周辺に「与党議員の強い声に対応せざるを得ないかもしれない」と打ち明けていたということなんです。
一方、自民党の閣僚経験者からは、「朝令暮改と映りかねない」といった懸念も出ています。石破総理にとっては少数与党で厳しい政権運営が続く中、立憲民主党など野党側の要求に加え、身内からの突き上げで方針転換を余儀なくされたと言えるかも知れません。
Q2.予算案の審議は今後どうなる?
A2.政府・与党にとって、最大の目標が年度内成立ということは変わりません。今回の引き上げの見送りで新年度予算案をどう取り扱うかが懸案となったわけですが、与党幹部への事前の根回しは十分とは言えない状態でした。
このためきょうも一時、政府・与党の調整が滞る場面があったほどです。なんとしても予算案を年度内に成立させたい石破総理にとっては正念場が続くことになります。
石破首相 患者団体と面会
石破総理大臣は7日午後7時前からおよそ20分間、総理大臣官邸でがんや難病の患者団体の代表者らと面会しました。
冒頭、石破総理大臣は高額療養費制度をめぐり「皆さまのアンケートを受け取る機会を設けさせていただいた。直接お話を伺う機会をいただき厚くお礼を申し上げる」と述べました。
これに対し全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は「負担に苦しむ患者や家族の声を聞いていただき、いったん全面凍結、立ち止まって命のために再検討をお願いしたい」と求めました。
政府はこれまで、物価や賃金の上昇を踏まえ、8月の負担上限額の引き上げは予定どおり行うとしていましたが、立憲民主党などの野党やがん患者らが凍結を強く求めたことに加え、与党の参議院側を中心にさらなる見直しを求める意見が出ていたことから政府内で対応を協議していました。
石破総理大臣は7日の参議院予算委員会で「きちんと患者団体の人たちの話も聴いて政府として判断する。今日に至るまでの審議の過程や見直しの意義、これから先の展開を視野に入れながら決まるものだ」と述べていました。
石破総理大臣は患者団体との面会を踏まえて引き上げの見送りを最終的に判断し、今後の対応を記者団に説明する見通しです。
全国がん患者団体連合会 天野理事長「真摯に聴いてもらった」
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は面会のあと記者団に対し「いったん全面凍結し、命のために立ち止まってほしいということを、重ねてお願いした。石破総理大臣からは『皆さんの意見を承った。早急に対応を検討したい』という答えをもらった」と述べました。
その上で「石破総理大臣自身も親族をがんで亡くしたという話があり、少なくとも受け答えの中では真摯に聴いてもらったのは間違いない。今後の具体的なことは『早急に検討する』というのみだったので、見守りたい」と述べました。
日本難病・疾病団体協議会 辻常務理事「対応内容 見極める」
日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は、面会のあと記者団に対し「アンケートに込められた思いに加え、今回の決定プロセスや引き上げの幅など、具体的に疑問を持っている点を述べさせてもらった。石破総理大臣からは対応内容について具体的にはなかったので、しっかりと見極めて私たちとしても対応を考えたい」と述べました。
轟理事「治療を諦めることがないよう」
全国がん患者団体連合会の轟浩美理事は面会のあと記者団に対し「私たちもやみくもに反対しているのではなく、制度を維持していきたいとの思いは同じだ。ただ、命のために治療を諦めることがないよう、いったん立ち止まってもらいたいと伝え続ける。よりよい方向に向かっていくことを、心から願っている」と述べました。
専門家「患者目線大切にしながら引き続き議論必要」
政府が高額療養費制度の負担上限額の引き上げを見送る方針を固めたことについて、医療経済に詳しい中央大学大学院戦略経営研究科の真野俊樹教授は「命に関わる病気になった人を助け、金銭的に困らないようにするというのが保険制度の本質だ。重症の患者が数多く利用している高額療養費制度を従来通り維持することは評価できる」としています。
一方で真野教授は、公的な医療保険制度を今後も維持していく対策を考えなければならないと指摘した上で「財政が厳しくなる中では、重要な部分は守りつつも医療費の無駄遣いを無くしていく努力も求められる。患者の目線も大切にしながら国が引き続き議論していく必要がある」などと話しています。
医療費が高額になった患者の自己負担を抑える高額療養費制度について、石破総理大臣は、患者が不安なまま見直しを行うのは望ましくないなどとして、ことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
高額療養費制度をめぐり、石破総理大臣は7日夜、総理大臣官邸で、がんや難病の患者団体と面会し、要望を聞いたあと、福岡厚生労働大臣と加藤財務大臣、それに自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長らと相次いで会談しました。
このあと石破総理大臣は記者団に対し「これまでも指摘を真摯に受け止め『多数回該当』の方の負担の据え置きや、令和8年度以降の所得区分の細分化の再検討などを行い、その点については、一定の評価をもらったが、ことしの分の定率改定を含め、今回の見直しについては、なお理解を得るには至っていない」と述べました。
その上で「患者団体に理解をいただけない理由の1つとして検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘をいただいており、政府として重く受け止めなければならない。患者の皆さまに不安を与えたまま、見直しを実施することは望ましいことではない」と述べました。
そして国会審議の中で立憲民主党や日本維新の会に加え、与党からも意見が出たことに触れ「ことし8月に予定されている見直し全体について実施を見合わせることを決断した」と述べ、高額療養費制度のことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
さらに「患者の皆さまにとって大切な制度であるからこそ、丁寧なプロセスを積み重ねることで、持続可能なものとして、次の世代に引き継がれるように心から願い、努力をしていきたい」と強調しました。
また「新年度予算案が衆議院を通過したのちにこのようなことを申し上げるのは大変申し訳ないことだと思っているが、引き続き年度内成立に向けて努力していく。
極めて厳しい決断であることを理解いただきたい」と述べました。そして引き上げの見送りを踏まえつつ予算案の年度内成立を図るため必要な手続きをとるよう、与党に指示したことを明らかにしました。
「所要の手続き検討するよう指示」
「先ほど自民党の森山幹事長と小野寺政務調査会長に所要の手続きについて検討するよう指示し、公明党の西田幹事長と岡本政務調査会長にも協力をお願いした」と述べました。
その上で「新年度予算案が衆議院を通過したのちにこのようなことを申し上げるのは大変申し訳ないことだと思っているが、引き続き、予算案の年度内成立に向けて努力していく。極めて厳しい決断であることを理解いただきたい」と述べました。
「立憲、維新、公明、自民からも意見ちょうだいした」
石破総理大臣は、「審議の過程で立憲民主党の野田代表、委員会で質問をいただいた日本維新の会、公明党、衆参の自民党からもそれぞれご意見をちょうだいした」と述べました。
「持続可能なものとして引き継がれるよう努力」
石破総理大臣は、「高額療養費制度が患者の皆さまにとって大切な制度であるからこそ、丁寧なプロセスを積み重ねることで、持続可能なものとして、次の世代に引き継がれるように心から願い、努力をしていきたい」と述べました。
「予算案を再修正か早急に結論」
石破総理大臣は、記者団から新年度予算案を再び修正することになるか問われたのに対し「いま方針を決定し、自民・公明両党の幹事長と政務調査会長に指示し、協力をお願いしたところだ。手法については今後、検討し、早急に結論を得たい」と述べました。
予算修正された場合 衆議院に戻す「回付」手続き
衆議院で可決された予算案や法案が、参議院で修正された場合、衆議院に戻す「回付」と呼ばれる手続きがとられます。
この場合、衆議院で改めて修正に「同意」するかどうか採決が行われます。
衆議院の規則によりますと、回付された予算案や法案は委員会には付託せず、本会議での審議の対象となります。
衆議院事務局によりますと、今回、参議院で修正された予算案が、衆議院に戻されて成立すれば、今の憲法のもとでは初めてになるということです。
一方、予算案が参議院から回付された例は、衆参で多数が異なる「ねじれ国会」のもと、麻生内閣で2009年1月に成立した補正予算があります。
この時参議院では、多数を持つ当時の民主党など野党が提出した修正案が可決され、衆議院に回付されましたが、与党が多数を占める衆議院本会議でこれを不同意としました。
そして、衆参の両院協議会が開かれましたが、意見が一致せず、予算について「衆議院の優越」を認めている憲法の規定に基づき、衆議院で可決された政府の予算案が成立しました。
患者団体「決断には感謝 今後の議論には患者も」
高額療養費制度について、石破総理大臣がことし8月の負担上限額の引き上げを見送る方針を示したことについて、「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は7日夜、会見し、「決断には感謝したい。ただ、秋までに改めて制度のあり方を検討するということだが、そのプロセスについては言及がなかった。今回は短時間の審議で引き上げ案が示されたことが一番の問題だったと思っている。再び不十分な検討の中で同様の引き上げ案が出てくることを懸念している。今後の議論には患者も関わらせてもらいたい」と話しています。
また、「日本難病・疾病団体協議会」の辻邦夫常務理事は「石破総理大臣の決断は大変評価したいが、ここまで結論を先延ばしにしてきたことには問題があったと思う。今回は患者だけではなく、学会や地方自治体などからも反対の声が上がったが、今後は拙速に結論を出さないことを期待したい」と話しています。
なぜ方針転換?政治部 佐々木記者の解説
Q1.石破総理はことしの引き上げは予定通り行う考えを強調していた。なぜ方針を転換?
A1.やはり与党内から厳しい声が相次いだことが大きかったと思います。衆議院通過を受けて、参議院での予算審議はおととい始まったばかりですが、与党側からさらなる対応を強く求められました。
夏に選挙を控えているという参議院の事情もあってか、ある与党幹部は「地元や地方をまわっていると、多くの怒りの声が聞かれる」と話していました。
このため、石破総理は周辺に「与党議員の強い声に対応せざるを得ないかもしれない」と打ち明けていたということなんです。
一方、自民党の閣僚経験者からは、「朝令暮改と映りかねない」といった懸念も出ています。石破総理にとっては少数与党で厳しい政権運営が続く中、立憲民主党など野党側の要求に加え、身内からの突き上げで方針転換を余儀なくされたと言えるかも知れません。
Q2.予算案の審議は今後どうなる?
A2.政府・与党にとって、最大の目標が年度内成立ということは変わりません。今回の引き上げの見送りで新年度予算案をどう取り扱うかが懸案となったわけですが、与党幹部への事前の根回しは十分とは言えない状態でした。
このためきょうも一時、政府・与党の調整が滞る場面があったほどです。なんとしても予算案を年度内に成立させたい石破総理にとっては正念場が続くことになります。
石破首相 患者団体と面会
石破総理大臣は7日午後7時前からおよそ20分間、総理大臣官邸でがんや難病の患者団体の代表者らと面会しました。
冒頭、石破総理大臣は高額療養費制度をめぐり「皆さまのアンケートを受け取る機会を設けさせていただいた。直接お話を伺う機会をいただき厚くお礼を申し上げる」と述べました。
これに対し全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は「負担に苦しむ患者や家族の声を聞いていただき、いったん全面凍結、立ち止まって命のために再検討をお願いしたい」と求めました。
政府はこれまで、物価や賃金の上昇を踏まえ、8月の負担上限額の引き上げは予定どおり行うとしていましたが、立憲民主党などの野党やがん患者らが凍結を強く求めたことに加え、与党の参議院側を中心にさらなる見直しを求める意見が出ていたことから政府内で対応を協議していました。
石破総理大臣は7日の参議院予算委員会で「きちんと患者団体の人たちの話も聴いて政府として判断する。今日に至るまでの審議の過程や見直しの意義、これから先の展開を視野に入れながら決まるものだ」と述べていました。
石破総理大臣は患者団体との面会を踏まえて引き上げの見送りを最終的に判断し、今後の対応を記者団に説明する見通しです。
全国がん患者団体連合会 天野理事長「真摯に聴いてもらった」
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は面会のあと記者団に対し「いったん全面凍結し、命のために立ち止まってほしいということを、重ねてお願いした。石破総理大臣からは『皆さんの意見を承った。早急に対応を検討したい』という答えをもらった」と述べました。
その上で「石破総理大臣自身も親族をがんで亡くしたという話があり、少なくとも受け答えの中では真摯に聴いてもらったのは間違いない。今後の具体的なことは『早急に検討する』というのみだったので、見守りたい」と述べました。
日本難病・疾病団体協議会 辻常務理事「対応内容 見極める」
日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は、面会のあと記者団に対し「アンケートに込められた思いに加え、今回の決定プロセスや引き上げの幅など、具体的に疑問を持っている点を述べさせてもらった。石破総理大臣からは対応内容について具体的にはなかったので、しっかりと見極めて私たちとしても対応を考えたい」と述べました。
轟理事「治療を諦めることがないよう」
全国がん患者団体連合会の轟浩美理事は面会のあと記者団に対し「私たちもやみくもに反対しているのではなく、制度を維持していきたいとの思いは同じだ。ただ、命のために治療を諦めることがないよう、いったん立ち止まってもらいたいと伝え続ける。よりよい方向に向かっていくことを、心から願っている」と述べました。
専門家「患者目線大切にしながら引き続き議論必要」
政府が高額療養費制度の負担上限額の引き上げを見送る方針を固めたことについて、医療経済に詳しい中央大学大学院戦略経営研究科の真野俊樹教授は「命に関わる病気になった人を助け、金銭的に困らないようにするというのが保険制度の本質だ。重症の患者が数多く利用している高額療養費制度を従来通り維持することは評価できる」としています。
一方で真野教授は、公的な医療保険制度を今後も維持していく対策を考えなければならないと指摘した上で「財政が厳しくなる中では、重要な部分は守りつつも医療費の無駄遣いを無くしていく努力も求められる。患者の目線も大切にしながら国が引き続き議論していく必要がある」などと話しています。