ゆりこが近づいていくと、男は立ちあがって会釈した。
「根本です、ご足労かけてすいません」
「いえ、確か井坂さんとは知り合いだとお聞きしましたが」
「そうなんです、それも仕事の関係で偶然会いましてね、10年ぶりかな」
井坂とは遠い親戚にあたるそうだ。大柄で肥っていて、井坂とは全然似ていない。
「井坂君にこの店を調べてくれ、と頼まれましてね」
根本は不動産と探偵の仕事をしているという。
実家は貸ビルを持っていて遊んで暮らせる身分だ、と井坂は笑って話していた。
「それで早速調べてみたのですが、店の売り上げは悪くないのですが、売る話も聞こえてきましてね、店は私も知っている不動産会社の持ち物なんですけど」
今日は女将の姿は見あたらず、アルバイト風の女性二人が接客している。
「その会社の経営問題なのでしょうか?」
「そうだと思います、いい噂は入って来ないんですよ」
ゆりこは早く帰って父に話たくなり、丁重に礼を言って店を出た。
家に戻ってみると部屋の明かりはついていたが、父はいなかった。
体の調子がまだよくないので、椿以外の店には行きそうもないから、気掛かりだった。
探しに行こうか迷っていた時、メールが届いたので開いてみると誠二からで、黒木が行方不明になったらしいと連絡してきた。
誠二は黒木の娘佳子から聞いたのだが、関係を持ってしまった彼女の事は後悔しても、また中途半端な状態を作ってしまった。
ゆりこは詳しく聞きたくて、聖蹟桜ヶ丘のカフェで会う約束をし無線タクシーを頼んだ。
店に入ると誠二は来ていて、ゆりこが近づくと一方的に話し出した。
「中国で行方不明になっているんだ、不動産の商売も向こうはかなり悪いそうだよ」
「家族はいるの?」
「娘が東京にいるけど、実は仕事の関係で彼女と知り合いになって、それですぐに分かったんだ」
ゆりこは誠二が都合の悪い時、必ず下向きに話すのをよく見ていた。
「根本です、ご足労かけてすいません」
「いえ、確か井坂さんとは知り合いだとお聞きしましたが」
「そうなんです、それも仕事の関係で偶然会いましてね、10年ぶりかな」
井坂とは遠い親戚にあたるそうだ。大柄で肥っていて、井坂とは全然似ていない。
「井坂君にこの店を調べてくれ、と頼まれましてね」
根本は不動産と探偵の仕事をしているという。
実家は貸ビルを持っていて遊んで暮らせる身分だ、と井坂は笑って話していた。
「それで早速調べてみたのですが、店の売り上げは悪くないのですが、売る話も聞こえてきましてね、店は私も知っている不動産会社の持ち物なんですけど」
今日は女将の姿は見あたらず、アルバイト風の女性二人が接客している。
「その会社の経営問題なのでしょうか?」
「そうだと思います、いい噂は入って来ないんですよ」
ゆりこは早く帰って父に話たくなり、丁重に礼を言って店を出た。
家に戻ってみると部屋の明かりはついていたが、父はいなかった。
体の調子がまだよくないので、椿以外の店には行きそうもないから、気掛かりだった。
探しに行こうか迷っていた時、メールが届いたので開いてみると誠二からで、黒木が行方不明になったらしいと連絡してきた。
誠二は黒木の娘佳子から聞いたのだが、関係を持ってしまった彼女の事は後悔しても、また中途半端な状態を作ってしまった。
ゆりこは詳しく聞きたくて、聖蹟桜ヶ丘のカフェで会う約束をし無線タクシーを頼んだ。
店に入ると誠二は来ていて、ゆりこが近づくと一方的に話し出した。
「中国で行方不明になっているんだ、不動産の商売も向こうはかなり悪いそうだよ」
「家族はいるの?」
「娘が東京にいるけど、実は仕事の関係で彼女と知り合いになって、それですぐに分かったんだ」
ゆりこは誠二が都合の悪い時、必ず下向きに話すのをよく見ていた。