デパートに商品を展開する場合、自社から店員を派遣しないと、競争に打ち勝っていくのは大変だが、ゆりこ達の会社の規模ではまだ余力がなく、当面田口とゆりこが交代、もしくは一緒に各売り場を日参してフォローするしかなかった。
吉祥寺から八王子までのデパート、小売店が担当になっている。
ゆりこの専門知識、田口の営業力だが、田口は仕事になると得意先の女性に平気でお世辞を言っている。
「よくあれだけ喋れるわね、どこが不器用なのよ」
途中、お昼を一緒に食べながら、ゆりこは呆れ顔で彼を見ていた。
「仕事って割り切っているからですよ、自分が出たらそうはいかない」
「口説くのも仕事、にすれば」
「そんな、無理ですよ、僕は要領が悪いんです」
「よく分からない人ね」
「そうかなあ、単純なんだけど」
「名前は田口良太、お金持ちの多いS大学を卒業、実家は四谷にある」
「なんでそんなに知っているんですか、まいったな」
「本社総務に同期がいるのよ、テニス部にいたお坊ちゃんなのね」
「控えで終わってしまいましたけど」
「外車なんかに乗ってるんでしょう」
「以前の事ですよ、家は兄貴に任せているので、僕は気ままな一人暮らしなんです」
「苦労知らずなのね」
「いまは苦労していますよ、はみ出し者だから」
「悪いことして追い出されたの?」
「できが悪いんです、勉強は嫌いだったし」
「でも、そんな馬鹿には見えないわよ、ルックスはいい方じゃない」
「誉められてるのか、けなされてるのか、どっちなんだろう」
「両方よ」
「ひどいですよ、それじゃ」
「あはは、言い過ぎたかしら」
「僕だって傷つくんですよ」
「これ位で、それも坊ちゃんのひ弱さかしら」
「沢田ゆりこさん、はもっと違う人だと思っていました」
「あら、私の名前も調べていたの」
「とても興味があったのです」
吉祥寺から八王子までのデパート、小売店が担当になっている。
ゆりこの専門知識、田口の営業力だが、田口は仕事になると得意先の女性に平気でお世辞を言っている。
「よくあれだけ喋れるわね、どこが不器用なのよ」
途中、お昼を一緒に食べながら、ゆりこは呆れ顔で彼を見ていた。
「仕事って割り切っているからですよ、自分が出たらそうはいかない」
「口説くのも仕事、にすれば」
「そんな、無理ですよ、僕は要領が悪いんです」
「よく分からない人ね」
「そうかなあ、単純なんだけど」
「名前は田口良太、お金持ちの多いS大学を卒業、実家は四谷にある」
「なんでそんなに知っているんですか、まいったな」
「本社総務に同期がいるのよ、テニス部にいたお坊ちゃんなのね」
「控えで終わってしまいましたけど」
「外車なんかに乗ってるんでしょう」
「以前の事ですよ、家は兄貴に任せているので、僕は気ままな一人暮らしなんです」
「苦労知らずなのね」
「いまは苦労していますよ、はみ出し者だから」
「悪いことして追い出されたの?」
「できが悪いんです、勉強は嫌いだったし」
「でも、そんな馬鹿には見えないわよ、ルックスはいい方じゃない」
「誉められてるのか、けなされてるのか、どっちなんだろう」
「両方よ」
「ひどいですよ、それじゃ」
「あはは、言い過ぎたかしら」
「僕だって傷つくんですよ」
「これ位で、それも坊ちゃんのひ弱さかしら」
「沢田ゆりこさん、はもっと違う人だと思っていました」
「あら、私の名前も調べていたの」
「とても興味があったのです」