「この絵を頂けるのですか?」
「あなたに貰ってほしいのです」
「でも、いいんですか、あの、お値段は」
「趣味で描いたものですから、お金はいりません」
「そうですか、嬉しいのですけど、ただ貰うというのも・・」
「それではお返しに、ゆりこさんの暇な時で結構ですから、たまに会ってくれませんか」
「はあ、そうですね、それでよろしければ」
「よかった、約束しましたよ」
井坂は無邪気な笑顔で喜んでいた。
「すぐ近くに、広くはないのですが緑地がありますので行ってみましょう」
家を出て10分も歩くと、姿見の池と書かれた案内板の先に緑地が見えてきた。
鎌倉時代、宿場町として栄えた恋ヶ窪、奈良・平安時代は今の府中市と前橋市を結ぶ要路だった、と説明書きに記されている。
「古い時代が伝わってきますね」
「僕はここの出身ではないんですけど、いまは故郷だと思っています」
「樹齢を重ねた老木が民家の脇に当たり前の様に根を下ろしている、これが武蔵野なんですね」
「樹が歴史を語っています」
ゆりこは自分の住んでいるニュータウンと対比しての面白さを感じていた。どちらも魅力があって好きだなと思っている。
井坂が途中まで送っていくといってきかないので、武蔵野線で府中本町駅まで行き、京王線の府中駅まで歩くことにした。
「大國魂神社までのけやき通りも見応えがありますから、見ていかれた方が得ですよ」
府中駅近くから少し戻りながらけやき並木を神社まで歩いていく。ビルや建物も並木の中を歩くことで自然の境界線になって落ち着き、神社の前に出ると両側に巨木がそびえ立って周りを圧倒している。
境内に入ると更に空気に深みが増し、お参りに訪れた人々の表情も穏やかに見える。
「大化の改新で、武蔵国の国府が置かれたのですね」
「江戸時代は甲州街道の宿場町としても栄えました」
「あなたに貰ってほしいのです」
「でも、いいんですか、あの、お値段は」
「趣味で描いたものですから、お金はいりません」
「そうですか、嬉しいのですけど、ただ貰うというのも・・」
「それではお返しに、ゆりこさんの暇な時で結構ですから、たまに会ってくれませんか」
「はあ、そうですね、それでよろしければ」
「よかった、約束しましたよ」
井坂は無邪気な笑顔で喜んでいた。
「すぐ近くに、広くはないのですが緑地がありますので行ってみましょう」
家を出て10分も歩くと、姿見の池と書かれた案内板の先に緑地が見えてきた。
鎌倉時代、宿場町として栄えた恋ヶ窪、奈良・平安時代は今の府中市と前橋市を結ぶ要路だった、と説明書きに記されている。
「古い時代が伝わってきますね」
「僕はここの出身ではないんですけど、いまは故郷だと思っています」
「樹齢を重ねた老木が民家の脇に当たり前の様に根を下ろしている、これが武蔵野なんですね」
「樹が歴史を語っています」
ゆりこは自分の住んでいるニュータウンと対比しての面白さを感じていた。どちらも魅力があって好きだなと思っている。
井坂が途中まで送っていくといってきかないので、武蔵野線で府中本町駅まで行き、京王線の府中駅まで歩くことにした。
「大國魂神社までのけやき通りも見応えがありますから、見ていかれた方が得ですよ」
府中駅近くから少し戻りながらけやき並木を神社まで歩いていく。ビルや建物も並木の中を歩くことで自然の境界線になって落ち着き、神社の前に出ると両側に巨木がそびえ立って周りを圧倒している。
境内に入ると更に空気に深みが増し、お参りに訪れた人々の表情も穏やかに見える。
「大化の改新で、武蔵国の国府が置かれたのですね」
「江戸時代は甲州街道の宿場町としても栄えました」