「春子さんと何かあったのですか」
女将は他人の心を射抜くような視線を投げ掛けてきた。
「これといった原因は思い当たらないのですが・・・全ての責任は私に有ります」
「大体の事は聞いていましたけど、多分間違って飲んだのだろうと思いますよ」
「そうでしょうか」
「あの子は自殺するタイプではないわ、この商売をしていると分かるんです、思いつめて危ない人は・・・ただ」
「ただ、気になるところもある?」
「よく一緒に温泉に浸かりながら世間話をするんですけれど、話の途切れた時、遠くを見ているか想っている表情は浮世離れしていて、達観している姿が印象的でした」
「寂しそうではなかったのですか」
「いいえ、ここが段々好きになってきたのを感じていました」
「私にも、雪国の女らしくなってきたと話していました」
「あの子はいい娘です、自分を粗末にする真似はしないでしょう、もしおかしな行動をとったとしたなら、それは・・・そう言えば、健康面の問題を話し合っていた時、病気になった事があると、確か一度だけ聞いたのを思い出しました」
「病気ですか」
「ええ、寺井さんには話しませんでした?」
「何も聞いていませんが」
「今はもう問題ないと言っていましたから、大丈夫なのでしょう」
暫くして番頭がやって来たので女将は昨晩の様子を聞いたが、春子は夜中の1時にタクシーで帰ってきてすぐ寺井の部屋に入ったそうである。とすれば寝たのは2時近くになっていたに違いない。
1時間半過ぎて漸く医者が出てきた。幸い、春子が薬を貰いに行ったのと同じ病院だった為、適切な処置がされ大事には至らなかった。
よかった、寺井はお祈りをしていた。春子さえ無事ならなんでもいい、自分のせいなのだから、血液でもなんでも足りなければすぐに提供しよう、その位の役目しか務まらない男なのだから、と自らを蔑んでいた。
女将は他人の心を射抜くような視線を投げ掛けてきた。
「これといった原因は思い当たらないのですが・・・全ての責任は私に有ります」
「大体の事は聞いていましたけど、多分間違って飲んだのだろうと思いますよ」
「そうでしょうか」
「あの子は自殺するタイプではないわ、この商売をしていると分かるんです、思いつめて危ない人は・・・ただ」
「ただ、気になるところもある?」
「よく一緒に温泉に浸かりながら世間話をするんですけれど、話の途切れた時、遠くを見ているか想っている表情は浮世離れしていて、達観している姿が印象的でした」
「寂しそうではなかったのですか」
「いいえ、ここが段々好きになってきたのを感じていました」
「私にも、雪国の女らしくなってきたと話していました」
「あの子はいい娘です、自分を粗末にする真似はしないでしょう、もしおかしな行動をとったとしたなら、それは・・・そう言えば、健康面の問題を話し合っていた時、病気になった事があると、確か一度だけ聞いたのを思い出しました」
「病気ですか」
「ええ、寺井さんには話しませんでした?」
「何も聞いていませんが」
「今はもう問題ないと言っていましたから、大丈夫なのでしょう」
暫くして番頭がやって来たので女将は昨晩の様子を聞いたが、春子は夜中の1時にタクシーで帰ってきてすぐ寺井の部屋に入ったそうである。とすれば寝たのは2時近くになっていたに違いない。
1時間半過ぎて漸く医者が出てきた。幸い、春子が薬を貰いに行ったのと同じ病院だった為、適切な処置がされ大事には至らなかった。
よかった、寺井はお祈りをしていた。春子さえ無事ならなんでもいい、自分のせいなのだから、血液でもなんでも足りなければすぐに提供しよう、その位の役目しか務まらない男なのだから、と自らを蔑んでいた。