「自宅のこと?」
「あの椿の女将さんがらみなんですけど」
「何か頼まれたの」
「いま結構大変らしくて、父に共同経営しないかって持ちかけてたらしいの」
「借金問題か」
「まあそうね・・それで父は自宅を抵当に銀行からお金を借りたんですって」
「もう渡したの?」
「まだだって、迷ってるみたい」
「それはもう止めさせなければね」
「私の言うことなんか聞かないのよ」
「今度偶然会うようにして、椿に行ってみない?」
「でも行っても無駄じゃないの」
「いや、行くべきだよ」
珍しく誠二が強い口調になってきたので、ゆりこは従うことにした。
その話をして1週間が過ぎた頃、ゆりこ宛に知らない人物からの封筒が届いた。
内容は、あなたの父親の事でお会いしたいと書いてあった。
ゆりこは母の連れ子で、いまの父は実の親ではないが、どちらの話なのだろうか。
裏返してみると、根元正光と記している。まったく知らない名前だ。
いたずらかもしれないが気になるので、しまっておくことにした。
それから1週間が過ぎて、また同じ内容の封筒が届けられた。
ゆりこはいったん迷ったが、返事を出そうと思った。
文章は控えめながら、強い意志が感じられたからである。
2週間後の土曜日、ゆりこは根元と椿で会う約束の手紙を出しておいた。
あの店なら父と鉢合わせしても、仕事関係だといえば済む。
誠二と一緒に会いたくはなかった。
当日の昼下がり、久しぶりに大國魂神社にお参りした。
1900年の歴史があり、武蔵国の守り神だった面影が巨大な欅を見てもよくわかる。
ここの並木道はいつも故郷の落ち着きを与えてくれる気がして好きだ。
夕方まで何の予定もなく、誠二に会いたくなったが我慢した。
18時30分の約束時間丁度に着くと、客は1人で、一見50才位の男がゆりこに視線を向けていた。
「あの椿の女将さんがらみなんですけど」
「何か頼まれたの」
「いま結構大変らしくて、父に共同経営しないかって持ちかけてたらしいの」
「借金問題か」
「まあそうね・・それで父は自宅を抵当に銀行からお金を借りたんですって」
「もう渡したの?」
「まだだって、迷ってるみたい」
「それはもう止めさせなければね」
「私の言うことなんか聞かないのよ」
「今度偶然会うようにして、椿に行ってみない?」
「でも行っても無駄じゃないの」
「いや、行くべきだよ」
珍しく誠二が強い口調になってきたので、ゆりこは従うことにした。
その話をして1週間が過ぎた頃、ゆりこ宛に知らない人物からの封筒が届いた。
内容は、あなたの父親の事でお会いしたいと書いてあった。
ゆりこは母の連れ子で、いまの父は実の親ではないが、どちらの話なのだろうか。
裏返してみると、根元正光と記している。まったく知らない名前だ。
いたずらかもしれないが気になるので、しまっておくことにした。
それから1週間が過ぎて、また同じ内容の封筒が届けられた。
ゆりこはいったん迷ったが、返事を出そうと思った。
文章は控えめながら、強い意志が感じられたからである。
2週間後の土曜日、ゆりこは根元と椿で会う約束の手紙を出しておいた。
あの店なら父と鉢合わせしても、仕事関係だといえば済む。
誠二と一緒に会いたくはなかった。
当日の昼下がり、久しぶりに大國魂神社にお参りした。
1900年の歴史があり、武蔵国の守り神だった面影が巨大な欅を見てもよくわかる。
ここの並木道はいつも故郷の落ち着きを与えてくれる気がして好きだ。
夕方まで何の予定もなく、誠二に会いたくなったが我慢した。
18時30分の約束時間丁度に着くと、客は1人で、一見50才位の男がゆりこに視線を向けていた。