ピラカンサの実も随分と赤みが増してきた。
朝はもう真冬の寒さだが、昼間は散策に適した温度になり、紅葉の違いを観察しながら歩いていると、すぐ夕方になってしまう今の週末である。
聖ヶ丘橋に立ち、子供連れの家族が寛いでいる桜ヶ丘公園を見下ろしていると、自分にはいつこういう時代がくるのだろう、とゆりこは遠い気持ちで眺めていた。
父はこの頃夜遅くなる事が多くなった。残業はあまりない筈なので、帰りにどこか寄ってくるのだが、まだ何も話してはくれない。ゆりこが朝帰りをした後位からそうなったので、きっといい相手ができたと思って安心しているのだろう。
いつもの土曜日、お昼の用意をしていると、父はだるそうにテレビを見ている。
「お父さん、近頃ちょっと飲みすぎじゃないですか、そんなに強くないんですから」
「うん・・まあ、そうだね」
「なにか楽しいことでもあったのかしら?」
「ゆりこ程じゃないよ」
「な、なに言ってるんですか、私はいつも通りですよ」
「そうかい、まあいいじゃないか、何でも話してくれよ、いつでも聞くからさ」
「その節はよろしくお願いします、あら、このマッチ」
ゆりこは、父の手元に置いてあるマッチに気が付いた。小料理 椿 と入っている。
「お父さん、ここによく通ってるのね、足繁く」
「そんなでもないけど、最初は会社の後輩に連れていかれたんだよ」
「遠慮することないんですよ、お父さんがずっと私に気を使っているのを感じていましたから」
「そんなんじゃないよ」
「誰かと一緒に行くの、それともお店のひと?」
「いや、別に」
父の顔色は分かりやすく、ゆりこは良かった、と少し気分が楽になってきた。
もっと詳しく聞きたかったが、話してくれそうもないので、椿 の住所と電話番号を暗記しておいた。府中駅から近いらしい。いつか誠二と行ってみようと思っていた。
朝はもう真冬の寒さだが、昼間は散策に適した温度になり、紅葉の違いを観察しながら歩いていると、すぐ夕方になってしまう今の週末である。
聖ヶ丘橋に立ち、子供連れの家族が寛いでいる桜ヶ丘公園を見下ろしていると、自分にはいつこういう時代がくるのだろう、とゆりこは遠い気持ちで眺めていた。
父はこの頃夜遅くなる事が多くなった。残業はあまりない筈なので、帰りにどこか寄ってくるのだが、まだ何も話してはくれない。ゆりこが朝帰りをした後位からそうなったので、きっといい相手ができたと思って安心しているのだろう。
いつもの土曜日、お昼の用意をしていると、父はだるそうにテレビを見ている。
「お父さん、近頃ちょっと飲みすぎじゃないですか、そんなに強くないんですから」
「うん・・まあ、そうだね」
「なにか楽しいことでもあったのかしら?」
「ゆりこ程じゃないよ」
「な、なに言ってるんですか、私はいつも通りですよ」
「そうかい、まあいいじゃないか、何でも話してくれよ、いつでも聞くからさ」
「その節はよろしくお願いします、あら、このマッチ」
ゆりこは、父の手元に置いてあるマッチに気が付いた。小料理 椿 と入っている。
「お父さん、ここによく通ってるのね、足繁く」
「そんなでもないけど、最初は会社の後輩に連れていかれたんだよ」
「遠慮することないんですよ、お父さんがずっと私に気を使っているのを感じていましたから」
「そんなんじゃないよ」
「誰かと一緒に行くの、それともお店のひと?」
「いや、別に」
父の顔色は分かりやすく、ゆりこは良かった、と少し気分が楽になってきた。
もっと詳しく聞きたかったが、話してくれそうもないので、椿 の住所と電話番号を暗記しておいた。府中駅から近いらしい。いつか誠二と行ってみようと思っていた。