夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

人生に唄えば

2016年01月13日 | 映画


インドは不思議な国だ
知的レベルが高くて貧富の差が激しい、映画作りが盛んで必ずと言っていいほど踊るシーンが出てくる

将棋やチェスの発祥の地であり西洋に渡ったのがチェス、中国に渡ったのが将棋
日本の将棋は相手から取った駒を再び自陣で使えるので、戦後進駐軍は日本の将棋を禁止しようとした

将棋盤をひっくり返すと中央に切れ込み細工があり、これを「血溜め」という
対戦中にああでもない、こうでもないと言う輩の首を刀ではねて血を溜める、つまり余計なことを言うなということだ

「バルフィ!人生に唄えば」という映画、画面と三人の登場人物が美しいと思いながら見ていたらインド発だった
耳が聞こえず話せないという主人公のハンディは、全体にまるでサイレント映画のような透明感を与えてくれる

美しい人妻に恋してしまった彼が素直にプロポーズする光景が爽やかで見る者の眼を集める
渇きを覚えるような日常生活にうんざりしていた彼女はやがて純粋無垢な彼に惹かれていく

一方で子犬の兄妹のように育ってきたもう一人の彼女へ向ける愛情も隠せない主人公
一人の男を巡る二人の女性の嫉妬や猜疑心が無いわけではないのだが、ドロドロしない

それどころかキスシーンすら出てこないような爽やかさと、どきっとするような恋の鞘当てが新鮮だ
ありきたりの性描写でなく、この人と一緒に暮らしたい、という素直な気持ちが通じるからだろう

日本や欧米の映画作りもややマンネリ化してきた様な印象もあるなかで、気取らず難しく考えない、いい映画だ
フランスのポップスの様に挿入される音楽もいい、押し付けがましくなく小鳥がさえづるよう

人生ってこういうふうに生きたい
と、思ってしまう天真爛漫さ、、男の勝手か









映画『バルフィ! 人生に唄えば』予告編


Barfi 2012 Making | Ranbir Kapoor | Priyanka Chopra

『下町ロケット』の魅力

2015年11月11日 | 映画



ドラマ「下町ロケット」が面白い
面白さのポイントは人それぞれ、事業経営にかかわる人間模様と現実、追いかける夢に向けての展開が気になる

泉谷氏が「時代劇だ!」と評したのもうなづける
メインテーマが「勧善懲悪」だとしたら日本人ならDNAに刻まれているから

探査機「はやぶさ」の帰還によって、ロケットファン始めメイドインジャパンの信奉者は狂喜した
何年がかりで小惑星を探査してわずかな試料を持ち帰った「探査機」を擬人化してまるで日本代表が帰ってきたかのような喜びを与えてくれた

そこには下町で培われてきた小規模工場における技術力が組み込まれ、ドラマがあった
日本の製造業は、下請構造によって成長してきた

そこには親企業によるリーダーシップが優先し、大企業となればいやらしいほどのいじめが行われる場合もある
下請零細企業は景気の変動の緩衝材とされ、簡単に淘汰されたり、かろうじて生き延びたりする

バブル期の日本経済を知る人なら国の金融政策と銀行の豹変を身を以て体験してきた
散々貸し出しておいて或る日突然返せと言う「貸し剥がし」という造語ができたのもあの時代だった

弁護士の存在もかなりリアルに描かれていて知る人も知らない人も興味をそそられる
法律の専門家は法律の限界を知っていてなお、世の中が法律だけで出来上がっていないことも熟知しているから

主役の好演もさることながらキャストがユニークだ
落語家やお笑い界、ミュージシャンなど、演技キャリアに関わらずむしろ「リアリティ」や「パーソナリティ」が出る

この原作によるドラマ化は前にもあったようだ
大企業による不祥事が続いたこの時期に放映されたのは偶然なのだろうか

大企業に入ってエリートコースを歩きたいというスタンダード
小企業だからこそ好きな仕事をやってプライドを持ち続けたい

とどのつまり、誰もが自身の望むところを実現したい
それが手柄なのか、立身出世なのか、金なのか、人を貶めたい欲望なのか

事業経営は大変ながらも人の夢を育むことを振り返る
人は移ろい易い生き物だ


日曜劇場『下町ロケット』第4話ダイジェスト&第5話予告映像【TBS】

小惑星探査機「はやぶさ」帰還編

ヴァイオリン

2015年08月24日 | 映画



映画の演奏シーン、役者が本当に弾いているだろうか、は気になるところ。
楽器をやる人は指先をみて「ああ、やっぱり当て振りか」と、妙なチェックをして納得する。

ピアノなどはちょうど手元が隠れるのだが、弦楽器は両手が気になる。
いや、楽器を持って歩く姿で、持ち方で弾ける人かどうかわかってしまう。

配役が決まってから準備をする、映画俳優は大変だ。
ピアニストを演じるには何ヶ月も特訓をして演技に取り組む例も多いだろう。

さてWOWOWシネマで放送された「パガニーニ愛と狂気のヴァイオリニスト」を見ていて演奏シーンになった。
あれ、ものすごく正確なタッチで運指しているのを見ながら出ている音と弓の動きに引き込まれる。

ピチカートどころか、アルペジオみたいな奏法まで出てくるし、この人は何者だろう。
何より音楽が素晴らしいことと、それを主役がコントロールしている。

指が長いことで知られているパガニーニは数奇な人生を送ったようだ。
国際コンクールが毎年開催されるほどヴァイオリンの世界では難易度の高い奏者として有名だ。

さて演じたのはデイヴィッド・ギャレット、幼い頃からヴァイオリンに親しんだジュリアード音楽院出の音楽家だった。
なんでも5億円のストラディバリを使っているとか、久しぶりにヴァイオリンの可能性をこれでもかと聴かされた感がある。

史実では博打にのめり込んだとか、ガルネリを譲ってもらったとか、ギターも弾いたとか。
もともと病弱な上に水銀など当時の薬投与によって57歳で病没したようだ。

1800年代に現れた天才が英国に出かけてファンたちからもみくちゃにされる。
英国からビートルズが現れて世界中にツアーを行いファンたちからもみくちゃにされる。

「音楽に生きる」ってことは必ずしも幸せな一生を保証されるわけではない。
映画では画家と画商のようなパートナーとの確執がテーマになっていた。

様々な人とのお付き合いの中で要領よく生きてゆくことも必要か。





映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』予告編

David Garrett- La Campanella (Paganini)

David Garrett - Caprice No. 24

魂とグルーヴ

2015年07月14日 | 映画


病気療養中の Sくんからのお便りに映画の紹介があった。
映画館に行けるようになったのなら良かった、快復基調にあるのだろう。

Sくんが我々のバンドの前に現れたのは、何年前のことになるのだろう。
いやあまりにも様々な人たちが現れたし全員にお会いしているわけでもないが、数え切れないくらいの人たちが現れたものだ。

当初はハワイのトラディショナル&コンテンポラリーをやっていることから興味を持った人たちが集まってきた。
Webはもちろん携帯電話もない頃、人づてに知り合った人たちが音楽を通じて友となる。

知り合う場所はもっぱらレコード店だった、それもハワイもののレコードを置いてあるお店で。
「君、それ好きなの?」てな感じで話しかけ、会話が始まる。

練習と称して毎週集まっていたバンドに本当に様々な人が来たものだ。
なかでも当時高校生だったPちゃんはユニークだった。

高校生なのにレコードを何万枚も持っているというし、どうやらお宅にはお手伝いさんがいるらしい。
彼の紹介で当時早稲田にあった「John Boy's Restaulant」に出かけることになった。

なんの予備知識もなく向かった木造アパートの一階を改装したお店は快適だった。
バターコーンをおつまみにバーボンをいただく、なんとなくカントリー風のお店には音楽にこだわりを持った人たちが集う。

そうした人間模様がお店の雰囲気を形成していたし、経営するご夫妻と子供さんがアットホームだった。
そして何よりダカインサウンドを追求していたバンドの演奏を聴きに来た常連さんとの「音楽による会話」が心地よかった。

いやその前からハワイアンらしき音楽はやっていたのだが、音楽を通じて心が通い合うなんていう経験はなかった。
打算や鬱陶しい主張がない空間は、純粋に音楽を楽しもうという者にとって必要不可欠な条件かもしれない。

そこにちょっとした音楽する心と、心を揺さぶるグルーヴがあればいい。
少々音程が悪かろうが、技術的に未熟だろうがそんなことは二の次だ。

人はそのために高いチケットを買い求めたり、果てしなく情報を探し求める。
そうして巡り会えたリスナーとミュージシャン、恋愛を思わせるようなドラマが始まる。

そう、音楽はドラマだ。

誰のために咲いているわけではない向日葵がひたすら太陽を目指して成長する姿は神々しい。

だから向日葵は好きだし、そうありたいと願う。








白熱の演奏シーン!映画『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』「CALDONIA」演奏シーン

映画『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』スペシャル映像

PAVAROTTI con JAMES BROWN, ERIC CLAPTON y ELTON JOHN.wmv

戦艦バウンティ号の叛乱

2015年04月13日 | 映画



男は、海洋ロマンに憧れる。
戦時中白い軍服に憧れて海軍に入った男がいて、海軍の若者に惹かれた女性がいた。

戦艦バウンティ号は、小説を読んで以来タヒチのイメージとともに心に残っている。
「月と六ペンス」のゴーギャンに圧倒されていた頃だった。

バウンティ号に関する映画は過去に何回か制作された。
1935年の「戦艦バウンティ号の叛乱」
1962年の「戦艦バウンティ」
1985年の「バウンティ/愛と叛乱の航海」

史実は1789年、英国から「パンの木」を求めてタヒチに向かい西インド諸島に移植する命を受けた戦艦バウンティ号の話。
出航したもののブライ艦長の横暴に堪忍袋の尾が切れた乗組員たちが絞首刑を覚悟で叛乱を起こし艦長をボートで下船させる。

1935年制作の映画はモノクロ、クラーク・ゲーブルが乗組員から信望されて最終的に叛乱の首謀者となる役を演じる。

モノクロ映画は、明暗と濃淡だけで眼に映る全てを表現するわけだから撮影は大変だったろう。
サイレントからトーキーへ、モノクロからカラーへと変遷する映画の歴史は技術と経済の変遷の歴史でもある。

マーロン・ブランド、メル・ギブソンの作品がこれに続く。

興味深いのは、マーロン・ブランドがタヒチの島を購入して私有したこと。

少年の頃から反逆的だったという彼が映画界に入って成功した。
若い頃から人種差別にも反抗的で先生に睨まれていたという。

出演作品を選ぶ、高額なギャラを要求する、セリフを覚えない、共演者に手を出すうえに信条を曲げないところは正に「ロッカー」の生き様だ。
エリア・カザンの「エデンの東」の主役を蹴ったのは、カザンが当時のレッドパージ・ムーブメントに屈服したからだという。
結果、ブロンドを敬愛するジェームス・ディーンが抜擢されたという。

古い映画の商品価値は時代とともに下がっていくが、撮影された映像には興味深い歴史が刻まれている。
モノクロ時代のタヒチの首長はどう見ても白人だし、恋人役も白人だ。
しかし現地の映像やスタジオセットのデザインは、撮影当時の状況を推測するうえで興味深い。

現代に近づけば、時代考証もしっかりしてくるし、メイクでごまかした白人が現地のネイティブを演じることもない。
ただ日本の光景なのに「銅鑼」が鳴ったりするいい加減さはまだ完全に是正されてはいないようだが。

「叛乱」はどこの国でも許されないこと。
主君の仇を討つという「忠臣蔵」はまた論理の異なる話だが、人の心をつかむ意味で似ている。

映画館に足を運ぶような映画ファンではない者にとっても、時代時代で制作された映画の中に垣間見るメッセージには関心がある。

キューバのカストロ議長とアメリカのオバマ大統領の会談の報道を見ながら、白人でありながら人種差別との壁に立ち向かった大物俳優がアメリカにいたことを再認識した。

キューバと米国の国交回復は、近年のビッグニュースだ。






Mutiny on the Bounty - Dance scene on Tahiti

The Bounty Love Story, Brando and Tarita 1962 Bronislaw Kaper

The Brando on Tetiaroa.mp4

Marlon Brando "Welcome to my island Tetiaroa"