夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

陽はまた昇る

2015年01月07日 | 映画




「はてヘミングウェイかいな」と回したチャンネルの映画、見覚えのある俳優さんたちがたくさん出てくる。
どうやら日本ビクター社を舞台にした経営と開発と営業をモチーフにしたストーリーだ。

家庭用ビデオカセットレコーダーが普及する前夜、SONY社の進める「β方式」が先行して優位との報道があった。
しかし開発した日本ビクター社はじめ追随した他社メーカーとともに「VHS方式」が世の主流となったのはついこの間のことのようだ。

「規格統一」はもちろん消費者にとってありがたいことだが、企業は開発競争によって生き残りを図ってきたし、役人はこの間で仕事をしようとする。

経営難でリストラを命ずる経営トップに対し、製造と保守を預かる西田敏行部隊は、生き残るため製品開発を行い営業に出向く。
そこで得た、1時間ではなくて2時間であって欲しいという録画時間へのニーズがVHS方式開発成功のヒントになる。

規格の統一化を図りたい通産の官僚が「開発投資額を補償するからここは長いものに巻かれろ」とするくだりがある。
これを見て思い出したのは、ホンダの四輪生産参入時の役人たちの嫌がらせだ。


二輪から悲願の四輪生産への道を遮ったのは、「大手に任せろ」と規制しようとした魑魅魍魎の世界。
逆にこれがホンダの「F1参戦」への契機と原動力になり、四輪生産のための技術革新になっていくところが面白い。

映画がどこまで史実なのかわからないが、苦労して開発した技術を広く開示して「VHS方式」の普及に努めようという発想が新鮮だ。
「特許」とは独占するのが目的でなく広く技術を知って使ってもらおうとするのが本来の「特許」の姿だ。

自身に都合の良い論理を展開する近隣の大国には、きちんと特許料なり対価を払ってビジネスを行うことを教えてあげたい。
いづれ自国の資源を保護しようとして悩むことは自明の理だし、輩出した賢人達の教えには己の都合だけを主張する思想はなかったはずだ。

しかし技術者たちの敵はライバルメーカーだけではなく、自社の中に、自身の中にいることも象徴的な話だ。

どんな企業にも成長期、飛躍の時にとてつもないハードルが横たわりドラマが始まる。
そのドラマを誰が演じているのかわからないまま時間が過ぎてゆく。

「しめしめうまくやった」とほくそ笑む御仁がいる反面、実直に史実を生きてきた人間がいることも忘れてはならない。
彼は真実を知っているのだから。

当時の松下幸之助に直訴するシーンも感動的だ。
神様に「いいモノづくり」を掲げて理解を得る。


ところで日本ビクターのモデルとなった方は愛知県の生まれで静岡大学工学部ご出身とか。
日本で初めて映ったTV画像で有名な高柳健次郎さんが同大からビクターに引っ張られ副社長を務められた歴史がある。
本田宗一郎はエンジン開発の金属の研究のために同大の夜間に通ったことも有名な話だ。

初夢は「世の中のためになること」かしら。



陽はまた昇る(予告編)

プロジェクトX 挑戦者たち 第154回「地上最強のマシーン F1への激闘」2004 10 05