夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

あぶくみたいなもの

2017年07月05日 | 日記・エッセイ・コラム


「あたしたちの生活って、普通じゃないよね。なんていうかさあ、あぶくみたいな、、、」
「そうさなあ、風呂の屁みたいなもんで、背中に回って二つに割れて、、あぶくみたいなもんだな」

  若い頃世話になってたある企業のことを話題にした翌日、同期のNくんから何年ぶりかで電話があった
  以心伝心というのか、こうした説明のつかないようなことって案外あるものだ

そしてTVで映画「男はつらいよ」シリーズの放送があり、寅さんとリリーの絡みが見たくなった
北海道へ向かう寅さんが夜汽車で見かけたリリーは港でレコードを売る寅さんと出会う

ドサ回りの売れない歌手とテキ屋の寅さんは実にスムーズな会話で波長が合う
「ところで兄さん、名前なんていうの?」「日本のどこかでまた会おう!」

登場するマドンナの中でリリーが特別なのは、相思相愛だからだろう
リリーの初恋、惚れるってことは素晴らしい、一生に一度の恋がしたい

  今度はKくんから電話があった、若い頃から世界を駆け巡ってビジネスをしてきた敬愛する猛者だ
  テレックスを打つために飲み会を中座して海外に通信した時代だった

そして鶴瓶さんの番組に浅丘ルリ子さんが登場していた
渥美清という人はさておいて、キャメラが回る瞬間寅さんになりきる役者は後にも先にも、、と

「リリー、俺と所帯を持つか?」
堅気の人たちを勘違いさせてはいけないと言い続けたんじゃ、こちとら涙を誘われるではないか

最終作品の撮影で寅さんとリリーを結婚させてくださいと浅丘さんが監督に進言したというエピソードがある
そう、リリーが寅さんに恋したんであって、それは寅さんもよくわかっていた

物語という仮想の世界でヒロインがヒーローに恋する
わかりきった話を何回も見てしまうのは、真夏の猛暑のせいだろうか




車寅次郎らしさ 第11作 男はつらいよ 寅次郎忘れな草

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 HDリマスター版(第49作)

眠れ、悪い子たちよ

2017年04月22日 | 日記・エッセイ・コラム


声は、その人となりを表現する大きな要素だ
見た目はもちろんだが、声を聴きながらその人の内面を想像する

音楽漬けの生活だった独身の頃、今でいえばTVを見るようにFM放送を聴いていた
TVは見なかったし、そもそも持っていなかったか

携帯電話はなかったし、インターネットもなかったあの時代
音楽情報をラジオで仕入れて、中古レコードショップへ探しに行く

片岡義男さんと安田南さんの「気まぐれ飛行船」は愛聴する深夜のFM放送であった
レコードをかけながら世界中を巡る片岡さんの話とお相手の南さんのやりとりがいい

静寂を邪魔しないような低い男声にお茶の間で相槌を打つような南さんの清楚な声
ジェットストリームの後の2時間番組、音楽をかけながら知的な世界が安らぎを与えてくれた

片岡さんはハワイ音楽を、それも当時としてはかなりマニアックな選曲で放送していた
一年がかりでLPレコードを録音していた私は片岡さんに手紙を書いた

レコーディング中の数曲をカセットテープに落としてこんなことをやっています、と
そして番組で私の手紙を読んでくださった

当時高校生だった志茂さんがこの放送を聴いていたそうだ
大学を卒業し渡米してギタービルダーとなった彼にお会いしたのはずっと後のことになる


一年後、メンバーと出来上がったレコードを持ってスタジオに向かった
バイクでやって来た片岡さんと小柄な南さんにそこで初めてお会いした

それから随分時間が経ち、南さんが替わられやがて番組が聴かれなくなった
南さんのジャズボーカルに触れたのは最近のこと、ライブを見にゆけばよかった

エンディングテーマに乗せて語られる南さんのおまじないを聴いて眠りについた諸君は多かったはず

「眠れ、悪い子たちよ」



AKATONBO / Fly me to The Moon Yasuda Minami 1975

私のたった一つの

2016年11月24日 | 日記・エッセイ・コラム


京都に立ち寄った折、俗に「縁切り寺」と言われる寺があって参拝客が絶えないという
遠方からやってきて願をかける、世の中にはそれだけ縁を切りたい人間がいるということだろう

先般来報道番組を賑わせている元女優の方を見て、縁戚だというおばあちゃまのことを思い出した
引っ越して間もない頃、犬を飼い始めて近隣の公園に出かけてはギターを弾いたりして休日を過ごすことがあった

待たされている犬は迷惑だったかもしれないが、大きな樹木に囲まれてポロポロ爪弾く下手なギターは自分にとって一服の清涼剤
そこへお品のいいおばあちゃまがやってきて雑談に興じる

ハワイの音楽やギター奏法の話やら、やがて郷里の話になった
女優の彼女はおばあちゃまの姪にあたるらしく、訳あって私の郷里で育ったという

姪っ子を自慢するのでなくて決して幸せな生い立ちでなかった彼女を不憫に思う情が伝わった
家に帰ってからその彼女とは、ハワイの素潜りで知られた人であることを知った

人気TVドラマの小料理屋の女将で出ていた頃は、個性を押し殺したような雰囲気がぴったりだったように思っていた
そう、おじさん達はいつも小さな店で話を聞いてくれるもの静かな女性を求めているのだ

おばあちゃまはフラを楽しんでいるらしくて当地で演奏をやってほしいと言われた
もう愛犬は亡くなったし、あれから随分時間が経った

女優さんには会ったこともないし番組や報道、著書でしか存じ上げない
ただ何か断ち切りたい過去とのしがらみがあるような気がしてならない

あの時のあばあちゃまの顔に写った憂鬱は何だったろうか



MFSB - My One And Only Love

くよくよするなよ

2016年11月10日 | 日記・エッセイ・コラム


アメリカの決断は、英国のストレスを思い出させる
確か先住民を除けば移民の子孫たちの国が、移民を拒んだり自由主義貿易を保護主義的なメッセージをぶちあげたりと、世界中に戸惑いを与えている

黒人初の大統領オバマさんが登場した時は感動した、ましてや彼がハワイ出身と聞いて更に親しみを持ったものだ
何より格調高いスピーチはアメリカを代表するインテリジェンシーを感じさせてくれた

しかし黒人を差別する白人警官の行動や時代の流れに彷徨う経済、産業の停滞などを見れば、相当不満がくすぶっているのだろう
そうしたガス抜きというプロセスが、残念ながら人間社会には必要なのかもしれない

先の大戦で日本やドイツが犯した誤りは、国内世論の中にきっと鬱積した何かがあって起こったに違いない
群衆はいつでも「そうだ!そうだ!」と言わせてくれる誰かを期待して待っている、、、だからこそ今回の大統領選は心配したのだ

軍の撤退やキューバとの国交回復などオバマ政権の功績は大きい
アングロサクソンが支配するアメリカの白人社会でよくぞ舵取りをやってくれたと遥か彼方から思う

ただアメリカがリードしてきた自由主義経済産業界の流れは明らかに転換期を迎えていてなお、方向性が定まらない
日本がたどった復興の道を中国以下アジアの国々がトレースしている今、親方たちがどうしたものかと困惑している

飛ぶ鳥を落とす勢いであったはずの日本の企業がアジアなど外国資本に吸収されたりと、おかしな現象が続いているではないか
経営に失敗した企業には必ず保守的な企業体質やガンとなる悪弊があるもの

今回のアメリカの決断は、蜜月時代はとうの昔に終わったと受け止めて、島国をどう自力で守るかを考えるべきだ
他力本願の時代は終わった


E.Clapton - B.Dylan - Don't Think Twice, It's All Right - LIVE

Moon River - Clapton & Beck

クルマ作りと経済効果

2016年10月11日 | 日記・エッセイ・コラム



東京駅八重洲口で待ち合わせをしようとしたらスポーツカーの展示スペースがあった
道行く人が立ち止まっては写真撮影をするそのクルマはホンダのNSXだった

チェーン駆動のS600に憧れた少年時代のあの頃からすれば隔世の感だ
四輪車を作り始めた頃のホンダ車は確か数十万円だったはずだが、目の前のスポーツカーは三千万円近い価格が設定されている

ディーラーにこの話をしたらすでに複数台売れているというではないか
欲しい人がいるのだよ、この世の中には

財政出動と金利政策だけの経済政策に批判の声が上がっている
円安誘導は輸出関連産業の元気を取り戻したかに見えたが、先行き不透明感と何より不況で安いものしか売れないし店じまいが多い

クルマ作りはデザインの占める比重が大きいと思うが、何より設計のコンセプトが重要だ
大枚をはたいて耐久消費財を購入する未来が描けないのと、生活を楽しくさせるような製品が出てこない

マイナーチェンジの繰り返しと価格の高騰では、必要に迫られなければ買うわけにはいかない
またメーカーは性能の向上だけでは不十分だと思うのだ

ライフスタイルの提案まで考慮しないことには経済の行く末は何ともはやお先真っ暗だ
これを産業界に求めるのか、経済界か、はたまた政治にか



Far Away, Rev. Dennis Kamakahi

Dennis Kamakahi - Far Away (HiSessions.com Acoustic Live!)